永年フィルム撮影を行っていると、どうしても出てくるのが引き出しの隅や棚の奥から出てくるフィルムで、もう記憶にも残っていませんから、ある意味ミステリーじみたフィルムとして、パトローネから引っ張り出してそのまま廃棄してしまったりします。大抵は使おうとしたけれど、もったいないからそのまましまっておこうというフィルムですから、それで良いかという感じです。
しかし、それよりもミステリーじみたフィルムがある訳で、それは中古で購入したディロールの中にありました。LPLさんの最初期品と思われるディロールで、見付けてくれたなじみのカメラ屋さんには大感謝という感じだったのですが、カメラ屋さん曰く中にフィルムが残っていますという事でした。
確かに振ってみるとごそごそぶつかる音がして、少し重いですから間違いなくフィルムが中に残っています。もしかするとという感じなのですが、今では幻になってしまったネオパンSS位は入っているかもと思い、カメラ屋さんに聞いてみると、もう使えないかもという事を言われていたという感じです。
残念と思いながら新たに買ったバルクフィルムを詰め込んで、中に入っていたフィルムはそのまま缶に詰め込んで保管していました。先日長年使っていたフォマパン100が無くなってしまって、新たに詰めなおしたときに気が付いたわけで、もし使えるものならば使ってみようという気になった訳です。
最初に行ったのはそのまま定着処理を行う事で、銀塩粒子が生きていれば透明なフィルムになって仕上がってくるという事になります。現像液は潜像部分の銀塩粒子を還元した後で硫化することで、定着液で溶けない物質に変えてしまいます。すなわち定着液に浸せば銀塩粒子がみな溶けてしまいます。透明なフィルムになりましたので、このフィルムは生きているという事になります。
次に少しテスト撮影を行って現像処理を行ってみたところ、真っ黒とはいかないのですが灰色で撮影したコマがうっすら見えるネガが出来上がりました。光かぶりは光線の筋やパーフォレーションからじわじわ入り込むようになりますので、一面灰色の感光というとあまり経験がありません。もちろんパトローネから出ていた部分は真っ黒に感光しています。
おそらくですが、ディロールに装填しようとバルクフィルムを缶から出したときに、誤って床に落としたのではないかと思います。そしてうろたえて暗室のセーフ・ライトを点けたときに一気に感光してしまったのではないかと思います。印画紙には弱い光ですが、フィルムは感色域が赤色まで延びている事と感度が100倍近く高いですから、フィルム全部が感光してしまったと考えています。
もう使えないフィルムで廃棄という感じですが、フィルムローダーへの装填練習や定着液の疲労度チェックには使えるわけで、そのまま残しておくことにしました。写真部や学校内の暗室などではよく有ることで、私も印画紙を机の上に置いたままうっかり電灯をつけてしまって箱ごとボツにした経験があります。その頃はバルクフィルムのことをあまり知らなかったのですが、印画紙をボツにするとお財布的にも痛い訳で、以降は気をつけて作業するようになります。
という訳で、秋雨前線が通過中の時には外にも出られなかったのですが、南に下がってしまうと久しぶりに涼しい秋の陽気になりました。外に出かけても気持ちが良い訳で、久しぶりにいろいろな場所を回って撮影を楽しんだという所です。これだけ気温が下がってくるとフィルム現像も再開できるわけで、やっと秋になったことを実感できる1日になりました。
それでは先月下旬に撮影した写真から掲載します。
PENTAX K-5 SMC Pentax-D FA Macro 50mmF2.8
撮影データ:1/640sec F5.6 ISO100
河原に咲くきくいもの花を見ると、もう秋になったと思わせてくれます。少し暑さが引かないと咲きだしませんので、やっと暑さも収まったかという感じです。