傘寿の真保守宣言

素人の政治、スポーツ、社会評論です。
写真、ゴルフを楽しみながら地域社会に溶け込む一応元気な傘寿越えの爺さんです。

小沢裁判の無罪判決を聞いての”やるせなさ”

2012-04-29 17:29:29 | 日記
         小沢裁判の無罪判決を聞いての“やるせなさ”
 小沢裁判は無罪だった。検察が起訴できなかった資料で検察審査会が起訴したのだから証拠不十分で無罪という大方の予想だったがその通りの結論になった。もともとこの裁判は小沢氏身辺に噂されているカネの疑惑に関する裁判でなく政治資金に関する秘書の事務処理疑惑についての裁判だから、例えば4億円の出所への疑惑、何故その口座名を何度も変更する必要があったのか、大金の処理に際しては振り込めばすむのに何故記録の残らない現金運搬をしたのかなど市民には不可解な行動については一切触れられていない。秘書が4億円の処理についての書類への記載に嘘をついたことに小沢氏がどう関与したかというスケールの小さい内容に過ぎなかった。メディアが派手に宣伝しすぎたために大騒ぎになった感がある。
 さて無罪判決だったが、判決内容を見ると秘書のやりとりについて予想以上に踏み込んで市民の疑問を解消させた。小沢氏は一貫して「秘書を信頼して任せた」「秘書と相談をしたことはない」「知らない」「記憶にない」を繰り返したが、裁判官は「4億円の処理は秘書の裁量を越える」「必ず小沢氏と秘書は相談し小沢氏は内容を承認したはずだ。」と小沢氏の供述を全面的に否定し、「彼の法廷での供述は信頼できない」とまで切り捨てた。政治家として甚だ不名誉な言われ方をされたのだった。彼にはほろ苦い無罪だった筈だ。
 でも、何故無罪なのか。検事役の弁護士も「これで何故無罪なのか」と不満を漏らしていたが、もともとこの裁判に関係する政治資金規正法は会計責任者を取り締まる法律でまだ公職選挙法のように連座制になっていない。従って秘書が法を犯しても政治家の指示とか立ち入った相談をした証拠がない場合は政治家を処罰できない。別の表現として「小沢氏がやったことに対して法違反があると認識してなかったから無罪になった」、言い換えると「悪いことと知らなかったから無罪」になったと報じた記事もあった。「知らなかったで済む」ならどんな悪事も出来てしまう。市民としては不満なオカシナ屁理屈にも感じる。とにかく共謀の確証はないので「疑わしきは罰せず」の精神から無罪判決となったということだ。従って決してシロでなく限りなく黒に近い証拠不十分による無罪といえる。
 この裁判は彼の政治的、道義的な欠陥をあらためて暴露したが、無罪は無罪だ。「試合に負けて勝負に勝ったようなもの」で彼の取り巻きはただただ無罪に大喜びで反野田の攻勢に勢いを増しているが、御本人をはじめ取り巻き連中は「限りなくクロに近い」と批判するメディアや市民には何も弁明しない。彼自身が記者会見や議会で弁明すべきだがその考えはなさそうさだし小沢派の重鎮である輿石幹事長は議会の証人喚問を不要と嘯いている。弁明すればボロがでると考えているのかと勘ぐりたくなる
 小沢氏は嘗て自著で「政治資金規正法にも連座制を」と唱えていた。政治家は本来は疑いをかけられただけでも身を退くくらいの潔白さがあってしかるべきだが、自分自身の3人の秘書が一審で有罪になっていることに全く責任を感じてない様子だしに取り巻き連中にもその考えはない。話にならない。
 又この裁判は連座制のない政治資金規正法のザル法たる実態と特捜部の捜査のあり方にも警鐘を鳴らした意義はあった。ザル法の連座制導入を早めて欲しいが議員として自分の首を絞めたくないのでなかなか進まない。何とかならないか。
当面民主党内の権力闘争は激化するし野党も野田政権の窮地を機会に政局に走る気配だ。ますます政治は停滞するばかり。国民は永田町が正気に戻って消費税やTPPなど重要政策の審議推進を望んでいるのに困ったものだ。
 小沢派の増税反対攻勢もおかしいと感じている。誰も税金が増えるのはイヤだ。しかし国の借金は1000兆円あって先進国ワーストの財政危機。世界の福祉国家は全て消費税は20%-25%だが日本は5%。小沢派を含め、どの政治家もこの借金を抱え、将来福祉政策を進めるならいずれは増税は必要という。その場合、反野田派は一つには景気が良くなってから上げればよいというが米国、ヨーロッパ、中国の景気は全ておかしいから日本だけは景気を早急に上げることは極めて困難だろう。景気回復を待てば借金(国債)が漸増しそのうちに年金も払えなくなると多くの識者は警鐘を鳴らす。わが国の消費税アップの余力をみて国債価格が保たれているが、増税案が頓挫すれば国際市場は日本を見放して国債価格の低下と利率上昇をきたすと危惧する専門家が多い。それは金融機関の含み資産の減少となってまたまた金融不安を起こして更なる景気低迷になる恐れがある。
 もう一つは増税前に経費削減というやる事があるという。それは当然増税ありなしに関係なく実施されなければならないが、限界があるし既にそれではすまない莫大な借金になっている。そこそこの経費削減では今話題になっている程度の増税では計画中の社会福祉政策の継続は無理なので数年後には更なる増税が必要との予測も出されているくらいだ。要するに既に待ったなしの状況になっていることと思う。反対派のかたがたは増税なしでどんどん赤字国債を発行して孫子に付けを回せというのだろうか。こういうことを政治家たちは真剣に討議する時なのに権力闘争と解散、選挙ばかり考えているようで困ったものだ。
 小沢氏は「民主党はマニフェストで消費税を否定したのだからその原点に戻るべきだ。消費増税は反対は党として当然。」という。しかし同じマニフェストでは約17兆円を経費削減するから消費増税不要といったのにその17兆円は出てこなかった経緯がある。消費増税なしでどこからカネを持ってくるのかには全く触れない。新しい財源を同時に説明しなければ政策にならないがそちらについて触れない。市民を惑わす戯言に過ぎないといえる。どういう考えなのだろうか。
 消費増税は党として昨年の代表選挙と12月の党議員総会の2回党議決定しているのに小沢派はその党議決定そのものを否定している。何のための党としての会議だったのだろう。そこまで言うことは党としては民主主義の原則が通らない烏合の衆としかいえない。小沢派の重鎮輿石幹事長は解散を嫌う党員を配慮して今も党内融和を叫んでいるが、野田派と反野田派間の亀裂は既に融和を図るには深すぎる状態になっている。この際は分裂してそれぞれの別の党として纏まった方が市民には分りやすい。野田首相は消費税に政治生命をかけるなら小沢派を切り捨てて自民党と妥協してでも法案を成立させ解散するしかないと考える。野田さんの決断にかかる。



大相撲・頭デッカチな番付に違和感

2012-04-24 15:45:41 | 日記
             大相撲・頭でっかちな番付に違和感
 大相撲五月場所が近づいた。史上初めて六人の大関となる。大関候補が更に何人かいるから現在の昇進規則を続ける限り更に大関が増えるだろう。一方、大関から陥落する規則が甘いからなかなか陥落せずに結果として近い将来には更に頭でっかちな番付になりそうだ。
 昇進には三場所三十三勝という原則があるのだから、陥落にも今の二場所連続負け越しという規則を昇進規則に関連させて三場所三十勝未満と改めることを提案したい。いわゆるクンロク大関を許さなければ異常番付が是正されると思うからである。現在の二場所のどちらかで八勝すればセーフという規則は甘すぎるし昇進規則に比して合理性に乏しい。是非見直して欲しい。
 そして、二場所は不振でも三場所目に優勝か準優勝すれば大関に留めるという付則を設ければベターと思う。


原発再稼動は必要

2012-04-23 09:50:00 | 日記
              原発再稼動は必要
 最近政府は原発再稼動に舵を切ったようだが、やり方が余りにも唐突で不味かったと思う。野田政権発足後早々に、菅政権の脱原発の見直しを宣言し時間をかけて世論に訴えてきたなら話はわかるが、直近まで脱原発的だったし、脱原発言動を続けた枝野大臣の発言のブレと“再稼動要請”は一層再稼動を難しくしている。しかし、ここまで来た以上政府は全力をあげて世論に訴え関連自治体の説得に努力するしかなかろう。
1)はじめに
 原発再稼動の是非については学者でも賛否が分かれており何度討論しても恐らく物別れになるだろう。委員会を設置しても選出される委員の構成で議論の推移が決まるからだ。丁度地球温暖化についても化石燃料使用説を否定する学者が多くおられるのと似ていると考える。結論は数十年先の実績が示すだろうがそれまで政治と国民の生活は止められない。従って原発の再稼動には政治判断が必要と考える。
2)脱原発でなく縮原発を
 新技術の開発と活用に際しては絶対安全はない。人類は各種の新技術活用の過程で何回かの事故に遭いながらも挫折せずにその克服に努力を続けた。それが文明・文化の歴史だと思っている。そして原発も誕生してまだ半世紀、それに該当する新技術の一つと考える。
今、国内世論では脱原発論が強いようで殆どのメディアもその方向で報道していると感じている。しかし海外に目を向けると、先進国ではドイツは脱原発国として有名だが、ドイツでの原発なしは10年後の話でそれまでは稼動するわけだし、その後もフランスの原発由来の電力を輸入するのだからドイツはエセ脱原発国だ。格好よく脱原発と言うなら原発以外の電力を購入すべきではないか。米国は福島の事故後の昨年、34年ぶりに原発建設を再開した。中国・インドも既定方針の原発増設を変えない。 韓国も然りで年間80基の原発を輸出すると張り切っている。あのチェルノブイリ大災害を出したウクライナでさえ原発停止後ロシアとの石油輸入トラブルも絡んだのだろうが、経済が疲弊し国民生活に齟齬を来たしたため原発凍結7年後の1993年に原発再稼動に踏み切った。
 何故諸外国は原発稼動なのか。国民の文明・文化生活を考えるには安定的なエネルギー供給が必須で、環境とコストに加えて当然のことながら安全面をも総合的に考えて原発が優れると判断したからだと思うのだ。   
 わが国は地震国だから諸外国と違うという意見もあるだろう。しかし福島で原子炉はMG9の地震に耐えた実績を示したし、女川原発は大きなトラブルなしに住民の避難所になった。浜岡も既に静岡市街が壊滅しても壊れないで残ると予想される強度になっているという話もある。
 幸、わが国の原発技術は今でも世界的に一流として評価されており、東芝・日立・三菱の協力なければ新原発はできないといわれるくらいだ。先述した米国で建設される新原発は東芝の技術を使用するとのことだ。それは諸外国が日本の技術を使えばMG9の地震にも耐えると評価したからとも言われているのだ。ベトナムとかトルコでもわが国の原発技術は評価され建設についての話し合いが行われている。私は原発に取り組む若い技術者たちにエールを送り日本技術の発展に向けて頑張って欲しいと思っている。
 ただ、おざなりにされていた津波対策は大幅に改善されなければならない。それには防波堤の高さよりも冠水する条件でも如何にして緊急電源確保をするかだ。しかしこの点は現在水中で稼動する多くの機器、設備が実用されており既存技術で十分対応できると思う。先端技術は要らない。残念ながらこれまではこの点に着目しなかった原子ムラの体制に問題があったと思っている。私は、原子力ムラには原子核エンジニアが機器設備エンジニアを低く見る文化があったのではないかと思えてならない。
3)新エネルギーの実力
 各国とも現在、太陽光や風力という新エネルギーを扱っているが、あくまでもまだ補助のレベルに過ぎない。それらのエネルギーは現社会の巨大なシステム(大工場の稼動を含む)を主力電源として支えるにはまだ余りにも不安定で力不足。従って現在、原発代替になりうる安定エネルギーは実際問題としては火力しかない。しかしそれは地球環境を汚すしわが国にとっては多額の外貨を消費し電力コストアップに繋がる。企業のコスト削減努力を更に要求するにしても限界がある。電力単価の上昇は国内産業界の国際競争力の低下と企業の国外脱出を促進させて国民の生活に影響するだろう。世間に持て囃されている太陽光発電の実力を一例として示そう。200万kw時の出力の火力発電と同程度のスペースでは晴天の昼間だけ約1万kw時しか出せない。勿論夜間は発電0だし曇天でも効率は下がる。烏が物を落とせば修理しなければならない。発電コストは火力の3倍かかっている。今後、蓄電技術の開発なども進むだろうが現在はまだその程度なのだ。風力発電にしてもソーラー同様コスト問題のほかに騒音とか低周波音の公害を抱えている。
 現在は已むに已まれず正にその火力発電のフル稼働で何とか息をついているが中には休止していた老朽施設の稼動もあるので今の状態の継続はPM上大いに不安がある。「それなら新鋭火力発電所の建設だ」となると完成には数年かかる。
以上の状況を勘案すると、脱原発、そして再稼動凍結は放射能を恐れる市民に対してはアッピールするが責任ある国の政策としては問題ありだ。化石燃料もウランも数十年から100年程度で枯渇するから、いずれにしても安定供給可能な低コスト新エネルギーの開発は必要としてもそれには年月がかかるので、ここで再稼動を凍結するのは余りにも理想を追う無謀な政策に感じる。
 私は頼りになる新エネルギーシステムの完成までの期間は安全管理に叡智を働かせながら原発を稼動させるべきと考える。それには最低でも10年はかかると思っている。その意味で私は縮原発論者だ。原発の安全面の進歩は進む筈だからその時点で確認されればその後の稼動もありえよう。
4)バランス感覚
 世界で毎年130万人の事故死者を出しながら自動車社会は否定されない。 放置すれば死者は190万人に増加するといわれているので国際的に何らか対策をとるだろうし、その一環として業界も、より安全な車の開発に努力している。
 それにしても年間死者100万人まで減らすのは至難だろう。わが国でも一頃の3分の1に減少したといっても毎年約5000人の犠牲者が出ている。これは確か事故後3週間の死亡者でその後治療中に亡くなる人数を入れれば死亡者は更に多くなる。その他重傷者を入れれば被害者は毎年万単位になるだろう。要するに孫子の世代まで毎年自動車事故で膨大な死者や被害者は出続けるということだ。しかし世界は文明・文化生活とのバランス感覚でこの数字を容認しているのだ。放射能被害が孫子の世代に影響すると重大視する方々は膨大な事故死者発生を永続させる自動車社会とどう対比をされるのだろう。
 もう一つ、チェルノブイリ、スリーマイル、広島と長崎にしても放射能による死亡者数は一般に騒がれるほど多くないという情報もある。チェルノブイリ原発での死亡者は火災と誤認して現場に飛び込んだ消防士約30人だし、甲状腺がんでの死者も数十人に止まっているといわれている。
多量の放射能を受けて帰還した宇宙飛行士の健康も異常なしだし、女性宇宙飛行士も健康な子供を生んでいる。先日世田谷で床下にあった放射能を年間90-180ミリシーベルトを数十年浴びてきた老人も92歳だ。第5福竜丸で死亡した久保山さんの死因も放射能でなく肝炎とのことだ。
 何故かわが国では放射能被害が過大に報道されている感じがしてならない。放射能被害を決して軽視するわけではなく科学的に正確に捉えて市民に伝える必要を感じている。
5)おわりに
 脱原発論は一つの立派な見解と思う。しかし、世界の国が当面原発を稼動して自国の繁栄を図る競争の中で、原発なしで放射能被害はないかもしれないが経済的に競争力をなくす国になるマイナスと、万が一事故があった時(如何なる設備にも絶対安全はない)のマイナス(現在の安全管理を進めれば死亡者数よりも避難に関連する被害の方が重い感じがする)との比較を政治家が詳細に国民に伝え、国民がどう考えるかだと思う。
 福島原発事故後、国民は放射能被害についてはいやというほど見聞させられたが、原発なしで国が疲弊する可能性とその国民生活に対する影響については殆ど知らされていない。政府はせめて「チェルノブイリ大災害で被害を受けたウクライナで何故国民が一度否定した原発の再稼動を決断したか」だけでも国民に詳しく知らせるべきではないだろうか。
 私は、今後、経済発展を狙うには安定的な電力供給が不可欠で、それには節電は当然としても、火力と現在程度の新エネルギーに頼るだけでは問題があると思っている。新エネルギーの技術改善を進めながらも、当面は原発再稼動の必要を感じる一人だ。
 ただ、若し何らかの調査で「実際は原発なしで安定的な電力が供給できる」ということが客観的に証明されれば、この考えは変わるがその可能性は低いと信じている。



鳩山氏のイラン渡航で野田首相はまたまた失点

2012-04-10 20:46:59 | 日記
        鳩山氏のイラン渡航で野田首相はまたまた失点
 民主党は一体どうなっているのだろう。そもそも鳩山氏は海上自衛隊のインド洋での給油活動を打ち切り、米国抜きの東アジア共同体構想を打ち出し、普天間問題で大きなミスを犯して日米関係の信頼感を落とさせた張本人で米国からは無責任と馬鹿にされている元首相だ。彼を党の最高顧問(外交担当)に任命した野田首相の考えは全く理解できないが、外務大臣がいるのだから最高顧問(外交担当)は名誉職に過ぎないのかと思っていた。
 ところが政府や与党の懸念を無視してイランに出向きまたまた問題を起こした。官房長官や玄葉外相は行く前から「行ってほしくない」とコメントしたし自民党からは「全くいい結果は出ないから行かせるな」と叫ばれたのに首相はそれを止められなかった。党の代表で総理大臣が「行かせたくない」と考えるなら何故「止めろ」と指示できないのだろう。組織なら先輩OBに対しても指示命令をするのが当たり前でないか。民主党はそれが出来ない組織ということを再確認した。
 予想通り、イラン側から「鳩山氏が「IAEAはイランを含む特定の国に対し原子力管理について二重基準の対応しており扱いは不公平だ」とIAEAを批判した。」と報道された。イラン対策について日本と欧米間の足並みを乱す喧伝だ。イランはそういう行動をする国ということは国際的な常識だから与野党で懸念したいたのに「やっぱりやられた」ではないか。「外交担当の最高顧問」の役職名が泣いている。鳩山氏は「そんなことは言ってない。捏造だ。」と反論するが後の祭りだ。
 彼を外交顧問に任命したミス。この時機にイラン渡航を止めさせなかったミス。野田首相はまたまた自ら問題を抱えてしまった。首相を支える官房長官にも責任はある。何故強行に渡航阻止を進言しなかったのだろう。先ず最高顧問を退かせるか少なくとも外交担当から外すべきと思う。

消費増税はここまで来れば待ったなしだ(改訂版)

2012-04-06 19:29:30 | 日記
        ここ迄来れば消費増税は待ったなしだ(改定版)
1)消費増税閣議決定を一応評価
 消費増税案はやっと閣議決定にこぎつけた。そもそも民主党は昨年8月に増税論の野田氏を代表に選び、12月には党として増税の大綱を決定した。それなのに増税反対を叫んで跋扈する小沢氏のほか大勢の造反議員を統制できない民主党は政治集団の体をなしておらず呆れてものが言えない。彼らは「増税に反対ではない。その前にやることがある」という。確かに各種の歳出削減の実現を目指すのは当然だ。先ず公務員制度改革、議員削減など身を切る政策は真っ先に実現してほしい。ただ、17兆の歳出削減で財源確保を謳ったマニフェストは数分の一しか削減できなかったし一般会計の歳出削減は必要だが限界がある。埋蔵金はそのうちに底をつくし特別会計の残金の活用も一時しのぎで恒久的な財源にはならない。一方、所得税や法人税の大幅アップは経済の活力や勤労意欲を減殺する。社会保障費や医療費の増加は続くし膨大な借金の返済もある。高齢者を含む全員で広く薄く負担する消費増税が適切な解決策ということは欧米の先進福祉国家の歴史で証明されているではないか。
 増税反対議員対策として法案から将来の更なる増税に関する条文を削除したが、これは政府として始めからの作戦だっただろう。野田政権に対してはそこまでの約束を要求はしないが、政治家もメディアもこの辺りの情報をもっと具体的に国民に知らせるべきではないか。要するに今後益々財源は不足する傾向にあるのだ。現実問題として将来の社会保障費や医療費の増加を予測すれば仮に三%の経済成長があっても2020年の消費税はプラス3%の13%、妥当と予測される1%の成長の場合はプラ6六%の上積みで16%の消費税が必要といわれている。 
 更に2030年になれば消費税25%でも厳しいという学者もいる。こう考えるとここに至っても尚増税を遅らせる造反者は「国でなく自分の票稼ぎだけを考えるポピュリズムに迎合する無責任な政治家」としか思えない。
2)消費増税と国債価格
 ここまで財政危機にあってもわが国の国債価格が下落しないのは国際市場がまだ消費増税に余力があると考えているからで、ここで増税案が流れれば国際市場の信用が急落し国債価格の低下と金利の上昇をきたすと危惧する専門家が多い。それはローン利率の上昇という一面だけでなく多額の国債を抱える銀行の含み損の増大と利子支払額の増加から企業経営の圧迫に繋がる大問題なのだ。銀行は不良債権の防止に目を光らせて企業への融資をより厳しく選別することになり景気の回復に大きな障害となるだろう。言ってみれば金融危機の再来になる恐れがあると思う。既にメガバンクではこの情勢を懸念して協力して対応を検討し始めていると聞くが事態がそこまで深刻になっていることを殆どの国民は知らされていない。「市民が単に税金はゴメンだ」と反対するだけではすまなくなる可能性があると思うのだ。
 「ゆで蛙」の例え話をご存知ですか。「蛙を湯につけ急に温度を上げると驚いて鍋から飛び出すが、徐々に温度を上げたら蛙自身は驚かないで静かに体温が上昇して死に至る」という話だ。日本の財政を「ゆで蛙」論で心配する専門家もいるのだ。増税を好む国民はいない。しかし政府は消費増税の有無を単なる市民生活の家計への短期的な影響という視点でなく国の経済とか長期的な(十年先でもいい)市民生活という視点から分りやすく伝える必要があるが全くなされていない。怠慢ではないだろうか。
 現在国の予算の半分は借金で賄っている。消費税を原案通り上げても国の借金運営は暫く続けなければならないことは高校生でも数字を計算すれば直ぐ理解できる。財政再建は更なる増税政策や諸々の歳出削減を並行して実施しながら長期的に取り組まなければ達成できまい。
国の財政がこういう危機にあることについて増税反対者はどう考えているのだろうか。政府が怠慢ならそこを糾弾すべきメディアにも一言言いたい。増税反対議員と増税必要を訴える経済専門家の徹底的な紙上討論、TV討論を何故企画しないのだろうか。こちらも怠慢ではないかと不満に思っている。
3)国民新党と自民党に失望
 国民新党は一体何なのだろう。亀井代表は増税反対だが多くの幹部は郵政法改正を重視してか連立に残る意見で自見大臣は国民新党副代表として閣議で増税案に署名した。が、亀井代表は反対を曲げなかったから亀井代表退陣でなければ筋が通らないと思っていた。ようやく幹部が亀井静香代表・亀井亜紀子政調会長両氏を解任し自見大臣を代表と発表したが両亀井氏はそれを無効と嘯いている。どうやら党の規則が曖昧だから法的には両亀井氏の意見が成り立つようだが、これは党内のクーデターだから両亀井氏失脚と見るのが妥当で党は今後自見・下地ラインで運営されるのではなかろうか。与党かもしれないがこれまでこれまでは亀井静香氏をオーナーを頭とする一つの政治団体に過ぎなかったということを暴露したと思う。失礼だがもともと存在感の乏しい政党だったが党の信頼度は更に地に落ちたと見る。
 自民党も情けない。谷垣総裁はあくまでも政府案に反対し解散を叫ぶ。しかしかなりの議員はもともと10%消費税で選挙を闘った政党としてこの際は社会保障関連で然るべく修正を要求して妥協できれば政府案を成立させた後に解散に持ち込めという。待ったなしの時機だから一刻も早く増税を決定して国際市場の信用を保ち、政治を定常化するのが政権を狙う大人の野党ではなかろうか。その行動は徒に解散を叫ぶよりも国民に評価されよう。谷垣総裁の翻意を期待したい。
4)政府としての造反者処分を睨む
 民主党内の造反グループと政府は水と油で関係は修復不可能とみる。政府と党執行部は今回の一連のドタバタの後、今後このような無様な党内乱れを起こさないために造反組を党分裂覚悟で厳しく処罰すべきだ。 政界再編成の狼煙になり永田町は一時混乱するかもしれないが長い目で見れば政治の正常化と質の向上にプラスするのではなかろうか。しかし輿石幹事長をはじめ党の大方は分裂回避、寄せ集め政党の維持を画策しているようだ。それは造反劇の再演を予測させ国民はますます民主党から離れるだろう。