傘寿の真保守宣言

素人の政治、スポーツ、社会評論です。
写真、ゴルフを楽しみながら地域社会に溶け込む一応元気な傘寿越えの爺さんです。

COP18に失望

2012-12-29 17:13:14 | 日記
              COP18に失望
 ドーハで開かれた第18回COPは12月8日に終わったが筆者はここのところ余り関心がなくなった。と言うのは先進国と発展途上国(中国はこちらサイドに立っている)の軋轢が一向に治まらず具体的な計画が決まらずに殆ど実質的な進展が見られないからだ。毎年中味のない形を作るだけにみえる結論で終わっている。これでは孫子の時代の地球環境はどうなるのだろうか。
 そもそも現在世界最大のCO2排出国の中国(2011年は世界の29%)と第2排出国の米国(2011年は16%)は排出量削減の義務を負っていないままコトが推移していることがおかしい。国際社会はこの矛盾を是正できないままにいるのだ。2011年にはその2国でCO2排出量の世界の45%を占める。因みに2009年の統計ではこの2国で42%(中国24%、米国18%)を占めその他の義務なしの国を除くと義務を持つ参加国の排出量は世界の26%に過ぎないのだ。この26%という数値内を議論しても重みがないことは明らかだ。
「今回やっと2020年以降にこの2国を含んで全ての国が参加すると言う取り決めとなったこと」を評価するという報道があったが、何故参加するだけに8年も準備がかかるのだろう。もう少し詳しく会議の経緯を示せば大変わかりにくいがいかにも進展の遅さを感じるのだ。即ち、昨2011年に、「2012年には2020年から世界全体で参加する計画を検討することにする第1年目と言うことで、2013年に調査し2014年に素案をつくり2015年に採択するということ」を決めた。いかにも遅い取り決めではないか。若し2015年に採択されるなら2016年から実施すればいいのにその後数年経ってから実施だから現在から実施までに8年もある。何故この鈍速なのだろう。その間に国際情勢も変わるだろう。これまでのCOPの流れから予測するとまだまだいざこざが起きてこの遅いスケジュールも果たして守られるかどうか疑問に思う。
 中国・インドなど先進国に近い国情になっている国は基本的に「地球環境問題は欧米日など先進国の責任で我々は先進国のレベルまで国民の生活レベルをアップするまではエネルギーをもっと使わせろ」と言う考えだから話は纏まらない。言い換えれば、それらの国は削減に消去的ということだ。そして世界をリードすべき立場にある米国も自国の産業への影響を懸念して消去的。これでは話が纏まらないのは当然だ。まだまだ地球環境悪化を甘く考えていると言うことになる。真に深刻に考えているのは温暖化で国が沈む恐れのある太平洋の赤道付近の島国だけではなかろうか。毎年のCOPの結論を見るたびにそう考えてしまうのだ。

 京都議定書は1997年に制定されたが既に省エネ行動を進めていた日本はそれまでの努力を配慮されずに厳しい削減目標を課せられた(ある意味では外交力が劣っていたとも言える)。以降毎回COPで国益を主張しこのままの延長に反対を主張してきたが今回は前回の宣言どおり議定書の延長が決まったので削減義務を負う国から脱退した。勿論自主的な削減活動は続ける。COP18で京都議定書は一応継続されたが今回から日本、ロシア、ニュージランドが下りたので削減義務を負う国の排出量は世界の15%程度にまで落ち込んだ。COPの重みが更に低下することとなったのだ。
 わが国は前述の通り義務から逃れたので議論をリードする立場には立てないし、先進国の代表格の米国もこれまで理由なく義務を回避してきたのだから威張れるはずはない。今回の会議は中国主導で進んだと報道されたが当然と思う。中国も本来は世界一の排出国だから威張れない筈だが強かさで論議をリードしたと言う。
 今回のCOP18では他の案件も上手く纏まらなかったという。発展途上国への資金援助も日本を含め先進国はやることになったが具体的な内容は盛り込めなかったし、CO2の影響と言うか地球の蒙る損害についての対応も直ぐ資金援助に繋がると言う理由で米国が抵抗して途上国と対立して纏まらなかった。
 尚、今回ではないが、2009年に鳩山元首相は日本はCO2を2020年までに1990年比25%削減すると宣言している。既に省エネをかなり進めて中で産業の発展をさせつつ25%削減とは大変なことと産業界は猛反対したが無視しての発言だった。パフォーマンスでしかない行動だった思う。勿論原発を50%にすると言う前提だった。
 民主党政権は原発ゼロを訴えながら何故か昨年のCOP17でもこの25%削減を否定せずノーコメントだった。どうする積もりだったのだろう。ありえないことだ。安倍政権は当然この点見直すことになるだろうと思っていたら28日茂木大臣が見直しを発表した。当然だ。
そもそもCOPは地球の平均温度上昇2度以下に保つ目標で議論を始めた。そこまでならば何とか人類の生活環境は保てると言う前提だ。しかし今の傾向が続けば世紀末には4度上昇と予測されている。それは地球環境として相当深刻で、恐らく赤道直下では水没する国も出るだろう。
 WWF(世界環境保護基金:世界の環境保全団体)は「2012年は北極海の海氷の減少が激しく、また世界の気候変動もの異常で危機感を持っている」と公表しているが、毎年のCOPの進展を見る限り世界の先進国(中国やインドを含め)はまだまだ甘い感覚を持っているとしか考えられない。
 わが国はこれまで省エネに努力してきており、それはGDP当たりのエネルギー消費量を比較すれば明らかだ。省エネで遅れている国には中国を含め技術供与する方針を明確にしているが、CO2削減については国際協調で進められるプロジェクトなのだから世界の排出の4%に過ぎないわが国だけがこれ以上先行して優等生になる政策はとらないようだ。国益を考えればやむを得まい。
 地球規模で考えれば中国と米国の削減を何としても軌道に乗せることが先決だが両国とも余り動かない。国際社会も促進できない。困ったものだ。



安倍新内閣に期待する

2012-12-27 17:12:17 | 日記
              安倍新内閣に期待する
 第2次安倍新政権が出発した。第1次の前回はお友達内閣と揶揄されたので今回はこの点に充分配慮したようだ。勿論最側近の菅氏を官房長とし麻生・甘利氏など首相と同じ思想を持つタカ派議員の登用が多い。その中で新藤総務相と稲田行政化企画相のタカ派的発言は有名で彼らの起用は首相の将来の目標である憲法問題などに布石を打ったとみる。稲田大臣は女性だが安全保障とか教育関係で多くの説得のある論説を出している。閣内でも張り切るだろう。
 しかし当面一番表舞台に出る外務・防衛両相には敢えて首相とやや意見を異にするどちらかと言うと地味な人物を配した。見方によってはこの両分野は官邸が仕切ると言う意見もあるが、岸田外相は古賀氏を継いで宏池会の会長でもあるし小野寺防衛相は外交・安保の専門家だ。自分に冷静さをアドバイスできる真面目な人材を選んだとみたい。先に党の副総裁に高村氏を任命したが、東アジア外交を睨んで「タカ派一辺倒ではない」という姿勢を示したかったのだろう。換言すればバランスをとっている。
 総裁選挙で対抗馬となった石破氏を幹事長に留任させたが、石原・林両氏には何故か超難題を抱える原発とTTPをそれぞれ担当させた。勿論実力を期待しての任命だろうが受けた方はどう感じただろう。ただ林氏は農林族ではない。農林族の場合はTTP参加を言い出しにくいがそうでなければ動きやすいと睨んだとすれば安倍さんはなかなかの策士ともいえる。首相もTTP参加を本音として決めているのではなかろうか。TTPは経済だけの課題でなく政治的・軍事的な思惑からアジア諸国で中国包囲網を構築すると言う意図があるのだから日本が参加しないわけには行かないと思う。いずれその時機が来ると見ている。その場合制限なしの自由貿易ではなく各国とも守る点は守るという仕組みになると思う。米国も砂糖を守るだろう。
党三役に女性二人を起用したのもサプライズ。来るべき来年の参院選挙を見据えた人事だろう。高石女子はタカ派としても有名だ。それからあの飯島勲氏を官邸の機能強化の一環として内閣参与に起用した点も特筆される。飯島氏は小泉政権の懐刀として活躍したことは有名だ。
万人に満点をつけられる人事はない。しかし第2次安倍内閣は民主党内閣時代の素人っぽさ、不安定さがなく重厚な布陣で合格点と思う。大いに期待できると思っている。 
 問題は今後内外の難題にどう対処するかだ。先ず景気回復が待ったなしだ。首相の言葉にでる金融緩和や日銀対策は、「日銀の独立性を損ねる。政府として実質的な為替介入と懸念されれば国際的な信頼を損ねる。」などなど専門家にも賛否がある。しかし、長年デフレ、円高で産業は疲弊している緊急事態だからわが国だけが国際舞台で“聖人“ぶることもなかろう。とにかくバランス感覚を持って対処し少しでも早く景気回復の実績を国民に実感させ国民の不安を除いて欲しい。既に先行して円安株高の流れになっているがこの傾向が参院選挙まで続かなければ内閣支持率は下がるだろう。非常に厳しい課題だが何としても解決の道筋に見通しをつけて欲しいものだ。
 選挙中の外交上の強行論はやや修正されつつある。例えば竹島の日を政府主催にするとか尖閣に公務員を常駐させるなどの政策について延期の方向と報じられている。「それは鳩山元首相の普天間発言と同じ」と言う厳しい不満もある。だがここは冷静に考えよう。安倍政権も新発足。中国も新政権が発足したばかりだし韓国も同じ条件。先ず民主党政権が壊した日米関係の修復を急ぎ、日米同盟機軸を再確認して国益を守る基本線を堅持する立場で中韓両国と首脳会談を開いてお互いの意見交換を再開するのが先ではなかろうか。決して焦らないことが重要と思う。

選挙民はバランス感覚で選択した

2012-12-21 20:26:30 | 日記
            選挙民は賢くバランス感覚で選択した
1)総括
 今回の総選挙での自民党の圧勝は民主党のオウンゴールが主因だと思う。とにかく3年余の民主政権の政治は内政外交とも余りにもレベルが低く、オマケに党内抗争の連続でトップの威信が保たれず、最後には大量の脱党劇まで演じたのだから当然の帰結だった。また視点を変えればこの選挙は脱原発、消費税反対、TPP反対の派手な激しいデモに参加する国民がいる一方で、静かにしながらも声なき声をこの一票に託した国民も大勢いたことを示した。多くの国民は原発の安全性に不安はあるが期限を切って(或いは即刻)ゼロにしたら国や自分の生活がどうなるかリスクを考えたし、消費税なしで孫子への借金を今のまま増やすのがどうなのかなど、いろいろ考えたのだと思う。言い換えればバランス感覚を働かせたのだ。「○○反対」こそが国民の声と言わんばかりの報道を続けたメディア(筆者にはそう感じられた)はこの数字を冷静に謙虚に検証すべきだろう。
 選挙後敗れた各党首の敗戦の弁を映像で見たが、小沢氏の映像は見なかった。未来党の陰のリーダーだが公式には一兵卒だから出る必要はないというのだろうか。未来党は小選挙区ではご本人一人しか当選できなかったし総数でも62名から8名に激減した。如何に選挙民に敬遠されたか同党幹部は悔いているだろう。いずれにしてもこれで小沢氏の政治生命は終わったとみるがどうだろう。
 民主党の多くの議員は野田首相の解散決断が敗因という。自分たちが首相を守らずに党内抗争に明け暮れたことが大きな敗因の一つの要因ということについて全く反省がない。これでは党の再興は難しかろう。何人かの新代表の候補者が辞退したから果たして誰になるか予想できない。
2)選挙制度の欠陥
 自民党の比例区の得票の少なさを「まだ国民から充分は信頼されてない証し」という見方があるが、二票持たされた選挙民として小選挙区で自民党に入れ、勝ち過ぎを嫌って比例区で他党に入れる人もいるから何ともいえないのではないか。要するに現在の選挙法の欠陥があらためて浮き彫りになったわけで何らかの制度改定をしない限り毎回この現象が出るだろう。もともと小選挙制度は2大政党時代を頭に描く制度だが、わが国の文化にはそぐわないのだろうか。筆者はこの状態ならば欠点はあっても昔の中選挙制度の方がベターと思う。
 しかしともかくも、お互いに所定の選挙法を前提として闘ったのだから民主党は「負けは負け」で猛反省すべきだし、勝った自民党は奢らずに来年の参院選挙を睨んで日米同盟を機軸に景気回復と凛とした外交を目指して欲しい。
3)選挙後のあれこれ
 ①安倍新政権は景気回復を第一に謳って選挙戦を闘った。これから政策が出てくるのだろうが、これまでの報道では防災関連公共投資しか具体案が見えてこない。それでは野田首相が「元に戻るのか」と叫んでいた批判のままになってしまう。早く具体的な話を聞きたいものだ。
 金融政策も円安を煽り経済界や兜町に喜ばれたがやり方を間違えると財政規律を乱して国際的な批判を受ける。財政規律を守るために支出の削減について社会保障や福祉関連の支払いの削減など国民に厳しさも訴えて実施しなければならないし、国民も耐えなければこの異常事態からは抜け出せない。また日銀へ過度の圧力をかけると国際的にも信頼がなくなる。勿論充分分っている筈だから適正なバランス感覚で対処してほしい。  
 対中国問題も安倍首相の難題だ。中国はタカ派の安倍首相に対し懸念を表明しているが、彼が言っている防衛論や集団的自衛権行使などは独立国として当然の内容で民主政権よりは右でも国際的に見れば中道ではなかろうか。アジアの諸国は中国の暴走を懸念しており大国日本が堂々と中国に対峙してモノを言ってくれることを期待しているという報道があるがよく分かる。
 これまで日米関係が緊密な時代には中国は余り出てこなかったが鳩山政権以来日米間の亀裂が明確になってからチョッカイをかけてくるようになってしまった。しかし、ここで日米関係が修復されても中国は直ぐ大人しくなるほど“純情”でない。当面態度は変わらないだけでなく場合によっては逆にエスカレートしてわが方の出方を伺うのではなかろうか。
 中国は武力衝突を恐れない国だ。領海侵犯には厳しく対応するのは当然だが、彼らの誘いに乗って余り強行に出て起きる衝突だけは避けたい。その意味で自衛隊の出動は出来るだけ避けたい。しかし彼らが上陸とか膨大な数で侵犯してきた場合には主権を守る対応をしなければなるまい。仕方がないと思う。そういう事態にならないように日本領土である歴史的な事実を国際社会に丁寧にPRし続け、中国に対し過度な侵犯は国際的に非難されると認識させるよう努力を続けるべきと思う。それには矢張り日米関係の修復の明確化が必要で来年早々安倍氏が訪米すると言うが当然と思う。
 安倍内閣の布陣が近く決まる。   官房長官が予定されている菅氏は派閥への配慮は100%ないというが実際はいろいろな動きがあるようだ。また、安倍、石破両氏の力比べも噂されている。政治集団としてある程度はやむをえないが、民主党の哀れな結果を見てきたばかりだから党としてウマク纏めると思っている。
 ②選挙戦が終われば勝利した党から首相を出すのが常識(あの村山首相は例外)。来るべき国会での首相指名に当たって橋下維新代表代行は「ここ迄自民党が国民の信を得たのだから60名足らずの我が党の代表でなく安倍総裁を指名する」と話した。早速石原代表から「それでは政党の体をなさない」と反対されて党としては石原代表を指名することとなった。筆者は橋下氏の意見が国民の気持ちとして正常と思う。石原氏だけでなく全野党の議員の考え、「100%負けるのが分っているのに自分の党のトップを首班に指名すること」が「政党の体をなす」ことなのか。それこそが古い永田町文化に毒されていると思うのだ。それは単なるセレモニに過ぎなく厳しく言えば茶番劇ではないか。石原代表もこの点は古い。橋下氏が安倍氏への投票を強行に頑張ればもっと誉めたいが意外に早く折れた。
 新政権がスタートする時点くらいは第1党から出る首相候補にエールを送って国のため国民のために頑張ろうという態度があっていいと思うのだが永田町には通用しない。
その維新の会でも石原・橋下の勢力争いがかなり公然となってきた。大阪の橋下派が数で圧倒しているので少しもめそうだ。
 ③みんなの党の渡辺代表が選挙後に「安倍内閣も参院選挙までにボロを出すから厳しく攻める」と言うニュアンスのコメントをしていた。野党としての気持ちは分かるが、国として非常事態にある。選挙が自民党大勝で終わったばかりで、それは国民の意思なのだ。「すぐ政治にボロが出る」と言うのは国民の意志を軽視する発言で不快でならない。 新政権がスタートする前からあの発言は共産党とか社民党的でいただけなかった。みんなの党には期待する面もあるのだから今後は是々非々で対応して欲しい。
4)まとめ
 安倍氏は豪華な顔ぶれ、実力者で内閣を組閣し公約していた景気回復を先ず軌道に乗せてほしい。当面は参院で与党が勝ってネジレをなくし政治の安定を図るのが重要。スタートで躓けばその参院選挙に影響する。あれこれ考えると参院の存在意義は何かと疑問を感じる。将来は一院制度でもいいと感じている。




総選挙を前にして

2012-12-13 19:04:54 | 日記
            総選挙を前にして
1)全体として感じること
 選挙を前に多くの新政党が設立された。野田首相の一声で解散となったが既成政党と合わせて前代未聞の12政党の選挙となった。議員が5人纏まれば党となり政党交付金対象になるのだろうが、党員なしもあるようでそれは政党でなく単なる政治団体ではなかろうか。
「日本維新の会」は候補者300人立てると豪語していたが準備不足で170名余しか候補者をそろえられなかった。また、石原氏と橋下・松井コンビの間の主張の相違が頻発し何となく双頭の鷲をイメージさせられるが寧ろ石原、平沼両氏の主張が主になっているようで合体後は橋下氏の評価が落ち目に感じる。
 小沢氏が嘉田知事を担いで「未来党」を作りソフトパワーで“稼ぐ”つもりだったようだかどうも小沢・嘉田両氏の勢力争いがあるのか比例候補の序列決定でゴタゴタがあったという噂も飛んだ。破綻した民主党の公約を叫んでいるがまだ党の体をなしていないように思えるしいずれ分裂もありそうだ。要するに選挙民に信頼されてないようだ。
みんなの党は「維新」や「未来」と合体しなかったことはプラスに作用していると思うが、実力として政界をうならせるレベルにはない。
 いやしくも政党として国政に参画するなら安全保障、憲法、景気回復などトータルを束ねた政策を掲げるべきなのに、多くの新政党とか小政党は単に原発、消費税、TPP反対だけを主張しているが果して国政を担う資格があるのか疑問に思う。そして何事も反対するだけでは国民生活はよくならない。それに新政党は殆ど「それではどう対策を立てるのか」殆ど具体的な説明がない。恐らく数値的な資料を準備していないのではなかろうか。
 国民は民主党の3年半の政治でマニフェスト違反の言わば政治的な詐欺行為に翻弄された怒りをぶちまける機会と意識しているのか直近の世論調査では民主党に厳しく、同党は惨敗しそうだし前記第3極も前述したマイナス面があるので自民党が漁夫の利で圧倒的に優勢のようだ。丁度3年前の選挙では、民主党が信頼されたのでなく自民党がだらしなかったので結果として政権交替となったが、今回も余りにも民主党に対する怒りが大と言うことと第3極の幼稚さが自民党を消去法的に浮かび上がらせているのだろう。ただ自民党も如何にして景気を回復させるのか公共投資以外の具体的な政策はあまり印象に残らない。「野党時代の反省があるので今度は」と期待しているがやや不安もある。
 そういう状況でも各党ともまだ、国民に厳しさを訴えることを避けて甘い宣伝を唱えている。国民は政治家たちの主張を充分吟味し、三年前に裏切られた怒りを再度経験しないよう賢くなる必要があろう。
2) 各党の主張に対する疑問点を挙げておく。
①自民党への疑問
 自民党が今になって消費増税に消極的な言い回しをしている。尤もデフレが改善されなければ上げないというのが3党合意ではあるが、一応ゴーサインを出したのだから「何とかして景気を回復させて計画通り上げられるように頑張る」と言うべきだ。大政党としてずるい。米倉経団連会長が筆者と同じような見解を表明して安倍総裁を批判し問題になったが当然の批判と思う。しかし結末は米倉氏が陳謝して終わったのもうなずけない。選挙直前に自民党と経団連の友好関係に傷がつけば票に影響すると言う苦渋の判断だったろうが割り切れない。
 また自民党はTPPについても「例外なき関税撤廃なら反対」といって交渉参加に消極的な言い回しをしている。TPPは経済だけでなく米国を中心にして総合的に中国への包囲網の構築と言う構想があるのだから日本が参加しないはずはない。不参加は責任放棄と思う。参加してお互いに国益を念頭に交渉するのが政治ではないか。みんなの党や新党改革の舛添氏の意見が正論と思う。米国も砂糖を守るだろう。それは既に例外を前提にしていることだ。参加すれば「無条件で100%関税撤廃、医療保険制度の崩壊」と反対する幾つかの政党があるが彼らは始めから交渉に自信のない負け犬根性なのだろうか。ただ自民党は時には「我が党は交渉力がある」といって参加する意向を示している。恐らくJAに配慮してスパッと参加するとはいえないのだろう。堂々と「参加して交渉の中で農業や医療制度など国益を守る」と言えない自民党に一抹の不安を感じる。
②脱原発論への疑問
 日本の原発技術は今でも世界中で評価が高い。原発の廃炉や廃棄物の最終処理については今後長期にわたって国際舞台で役割を果すことが国の責務と思うが、脱原発の環境では優秀な原発技術者は育たないからそれに齟齬を来たして国として世界の信頼を裏切るだろう。それは国益上深刻なマイナスだ。
 風力やソーラーは天候に左右されるし安定性など電力の質に弱点があるので巨大システム、精密製造や医療設備に不適なため膨大な火力のバックアップが必要。当面は補助電源にしかなりえない。更に過度な火力依存には化石資源供給トラブルという泣き所があるし地球温暖化を進める要因にもなる。鈴木宗雄氏はロシアから天然ガスのパイプを敷設すれば対策になると言うが、ロシアと言う国には過去何回も煮え湯を飲まされている。将来国情が代わって「パイプラインのコックを閉められて万事休す」という心配もしなければなるまい。相手はそういう国ではないか。それらのリスクに触れないでただ「危ないから脱原発」は無責任なポピュリズムに思える。   
 前にも書いたが、福島第1原発は最も古い型の原発だったが地震では自動停止したのだ。ただ津波対策がお粗末だったために致命的なダメージを受けたと思っている。隣の第2原発や東北電力の女川原発は同様の津波に襲われても生きている。今福井県の活断層上の原発の安全性が問われているがそこまで行けば再稼動は無理だろうが、普通の地盤に立てられた原発の安全性を保つ技術はあると思っている。更に新型原発はメルトダウンしないタイプになっていると聞いたこともある。自民党は一貫して再稼動しながら火力、水力、原子力、再生エネルギーのベストミックスをはかって時間をかけてエネルギー戦略を構築するといっている。妥当な主張と思う。
 脱原発の一つの根拠になっている放射能被害については国際放射線防護委員会(ICRP)の基準があり基本的に年100ミリシーベルト(ms)以下の健康に対する影響は疫学的に認められないと言う立場に立っているが安全性を加味して緊急事態からの復旧過程で基準を20ms以下とし出来るだけ早く1ms以下にすると定められている。政府は昨年4月にこの基準に従って計画的避難区域を年間20-100msとした。即ち20ms以下は避難不要だった。しかしその後の世論を配慮して1ms以上の場所を除染すると確約した。何故ICRPの基準を適応し続けなかったのだろう。生鮮食料品の規制値も国際標準の10倍以上厳しくしている。正にポピュリズムと思う。政府や技術者にこのポピュリズムを打破する理性と勇気が必要と思うが世の中はそうなっていない。
③国防軍論議
 国防軍については名前はどうでもいい。自衛隊は軍隊と言うことが明確に位置づけすればいい。戦闘機もミサイルそして潜水艦も持っているのだから誰が考えても軍隊ではないか。その意味で既に「軍隊を持たない」と言う憲法に違反しているのだ。政治家としてはそう言えないので公式には「軍隊ではない」と言っているだけだ。政府も外国に対しては事実上軍隊といい国内には軍隊でないという。国際的な軍備の統計には自衛隊は立派な軍隊と位置づけられている。
 このおかしな詭弁を解消することに反対する政治家たちは何を考えているのだろう。中学生たちに素朴に疑問を投げかけられたらどう答えるのだろう。軍隊と認めたら「直ぐ戦争にいく」という主張を真面目に口角泡を飛ばしているのだから余りにも馬鹿げていて話にならない。
 米国も経済的に苦しくなり軍備費を削減しているが、一方中国は毎年軍備の2桁増強を続けている。米国は世界での米中のバランスを維持するために日本の軍備費を上げることを要求してくることとなろう。日米同盟と言っても自分で自分の国を守る姿勢をとるのが大前提だし自由陣営の大国としてある程度それに応じる責務があると思う。自民党は選挙戦でそういう方向を示唆している。尖閣でここまで中国に威嚇されていてもまだ防衛費の増加に反対する政党は国防をどう考えているのか全く理解できない。
 これまでわが国はテロ対策についても憲法を楯にして安全な仕事しか引き受けなかった。カネだけで済まして世界から軽蔑されたこともあった。しかし国連に加盟している先進国としては何時までもこの対応で許されるとは思えない。近い将来には他国と同等の条件で参加することを要請されるのではなかろうか。厳しいことだがそれが先進国としての国際的な付き合いだと思う。
3)まとめ
 あと4日で国民の審判が下る。世論調査では自民党の圧勝となっているが、勝ち過ぎを嫌う選挙民感情で若干勢いを落とすにしても勝敗の傾向は変わるまい。自民党支持者の一人としては好ましいと思っているが、一つ安全保障については安倍首相には慎重に行動して欲しいと思っている。中国は武力衝突を恐れない国だから誘いにのることだけは避けて欲しい。当面辛抱して侵入を追い払い国際舞台でわが国の主張を効率的に宣伝し国際世論を味方につける戦略を進めることがポイントと思っている。
 国内の政治については自民党は仮に選挙に圧勝しても焦らずにコトを進め、来年の参院選を制してネジレを脱却してから本格的な改革にかかることを考えるべきだ。