小沢前幹事長の代表選出馬に疑問
民主党代表選に小沢前幹事長が出馬することになった。鳩山前首相が党の分裂を恐れて挙党一致の旗印で菅・小沢の仲介に走ったが成功しなかったわけだ。しかしその挙党一致の具体案として小沢派を外した菅首相に対し反小沢の要である仙石官房長官や枝野幹事長の退任を要求したと言う。TVで仙石氏が「選挙前に党人事の談合はありえない」と話していたことはその要求の存在を示すものだろう。首相が拒否するのは当然で、OKすれば菅支持派の前原氏他からの反発は必死だしそれは菅氏の政治生命に関係する重大な事柄だからだ。拒否は密室政治を廃するという民主党の方針にも一致する。
最近菅首相(組織のトップ)が小沢さん(部下)に会いたいと言っても返事がなかったらしいし、一方、小沢氏のコメントには「菅さんは来てくれなかった」と言う一幕があった。トップが部下を呼び部下が訪問するのが常識と思うのだが民主党の組織としての上下関係の異常さも理解できない。尤も党というよりも小沢個人の異常さだろうがそれを許す組織にも疑問ありだ。
菅首相は鳩山氏の挙党一致案を何故拒否したと言われたとの問いに「挙党一致には勿論反対しません。」「私はすべて小沢さんの言うことでなければならないということはおかしいと言った」と放映された。菅発言は代表そして首相として正論というよりも常識的に思うがこれも党内における小沢氏の立場と言うか力を物語る一幕だ。
結果として選挙は菅・小沢の一騎打ちとなる。そもそも6月に鳩山前首相は普天間の迷走と自分自身と小沢氏のカネの疑惑のために小沢氏を道連れにして退任した。しかし小沢氏はまだ国民に疑惑について説明責任を果たしてないし今秋の検察審査会次第では強制起訴の可能性もある灰色の政治家だ。「立候補の大義・資格なし」とするのが大方の世論と思うが事実多くの調査では80%がそう思っている。その小沢氏が早くも復権を企てるし大勢の支持者が騒ぐ。80%に組する筆者としてはなんとも理解できない。
小沢派の議員は「カネについてはまだ黒と結論されてはいない。そもそもカネの疑惑よりも今は腕力で国民の生活を守ることの方が重要。この大仕事は菅氏ではできない。」と反論するが、政治家は起訴、不起訴でなくカネの疑惑でグレーとレッテルを貼られただけで本来は失格という天職だという厳しさについて余りにも認識が甘い。正に権力至上で国民不在の詭弁に感じる。
民主主義だから3ヶ月前に選挙があったからといって話し合いで代表を決めることはいわゆる密室人事で抵抗はあるが、不況で苦しむ緊急事態だから今回だけは例外として国民に理解されたかもしれない。しかし小沢氏は6月の前回の代表選挙時点で既に9月の選挙で再度勝負すると公言していたのだから今回の選挙は避けられなかった。
事実上の選挙戦が開始されたが党は厳しい国民生活をそっちのけ、小沢、反小沢の票読みだけが関心事のようで両派で文字通り権力闘争に血道をあげる様相ばかりが放映されウンザリだ。
どちらが勝っても選挙後党分裂から政界再編成そして総選挙への流れがみえる。遠からず経なければならないステップだが深刻な不況では時が悪すぎて国民は不幸だ。円高と株安、更なる不況への転落で特に中小企業は四苦八苦だ。しかし政府は円高対策について「慎重に市場を見守る」の繰り返しが示すように、対策が後手後手になって国民の苦労を余り感じない態度を示しているので政治不信は頂点に達している。せめて両者で景気対策や普天間基地問題を含めた安全保障、財政再建など国の将来像について真摯な論戦を闘わせてほしい。