シマノ、NEWアルテグラが発表になりましたね。
私は、カンパユーザなので、今は使うことはできませんが、昔はアルテグラを愛用していました。
さて、そのアルテグラ、どんな風に変わったのでしょう?
まず、注目は、ブレーキ。
形状は、デュラのそっくりさん。
もう、名前を書いてないと分からないぐらい、よく似ています。
ところが、価格は、デュラエースは32000円ぐらいなのに対し、アルテグラは13000円ぐらい。
似てる形状なのに、なんで、どこが、こんなに価格差を生む結果になったのでしょう??
ちょっと、勝手な推測をしてみました。
まず、概観。
デュラは、ご丁寧に塗り分けていますね。これが高い。
塗装か、表面処理か分かりませんが、どっちにしても、処理前に「マスキング」が必要になります。
私も、よく設計で、表面処理をしたくない箇所にマスキングする構想をしますが、見積もり価格を見ると、一気にその気が失せます。一声、数十円~百数十円から。
マスキングしてる部品は3個。売価は10倍換算と仮定して、これだけで、数千円。
とは言っても、デュラエース。まさか、見た目だけにお金を掛ける訳がありません。
インプレ記事(
こちら)では、「操作してみて感じたのは、わずかではあるがやはりデュラエースよりも操作の重さを感じるところ。それと、シフト操作するときに指先で感じるレバーの形状が少し違っているように思った。ブレーキの効き方は制動力の立ち上がりが、デュラエースよりガツンとしている」と書いてある。
ふーん、シフトワイヤーが同じなのに、「どこかにフリクションが高い部位がある」と言うことでしょうか。どこでしょう?
まず、これがデュラエースのブレーキの分解図。(シマノHPより)
・・・あんまり役に立たない。
デュラエースの説明文では、「ツインベアリングがピボットでの抵抗を軽減」と書いている。
このピボット部のベアリングが、デュラエースとアルテグラは違うのだと思います。
デュラエース7900の分解図では、このピボット部にφ6とφ7のベアリングを仕込んで、摩擦係数を下げていますね。↓
一方、アルテグラ6800のブレーキでは、ベアリングはφ7のみで、一個ケチられています。↓
つまり、多分(かなり推定)、アルテグラのブレーキでは、ベアリングはケチられて、滑り軸受けになっているのだと思います。
滑り軸受けと、ベアリングでは、摩擦係数は一桁(場合によっては二桁)違います。特に静摩擦係数が違います。
インプレでも、「アルテグラは僅かに抵抗が大きい」と書かれているのは、この滑り軸受けの抵抗なんだと思っています。
きっと、アルテグラのベアリングには、研磨は入っていません。コスト的にお金が掛かる研磨なんて、アルテグラでは、出来ないでしょう。
「じゃあ、やっぱりアルテグラのブレーキってダメなの?」ってういと、・・・少しばかりの、改善策はあります。
まず、ブレーキを分解し、軸受け部を徹底的に磨き倒します。できれば、軸受けに熱処理を入れて、硬度も上げてやると、より良いでしょう。
そうすれば、表面粗さが良くなった効果と、軸受け部の硬度が上がった効果で、摩擦係数が下がり、僅かばかりの改善は望めます。(と言っても、摩擦係数が0.12→0.07になる程度だが・・・。ベアリングは0.015だもんね。)
それでも、NEWアルテグラのブレーキがいいと思えるのは、やっぱり、構造なんです。
シマノのこの絵↓を見てください。
そもそも、ブレーキのピボット部に掛かる荷重が下がっているので、F=μN(←高校物理の公式)に則ると、N(荷重)が下がっているので、ブレーキ部での摩擦力は下がっているハズです。
まぁ、もっとも、「総摩擦力=コントロールレバー内の摩擦力+ワイヤーの摩擦力+ブレーキでの摩擦力」ですから、ブレーキのシステムで考えると、微々たる差かもしれません。
また、材質が違うとはいえ、デュラもアルテも、(基本的に)同じヤング率(ポアソン比も)の物性ですから、形状によるコントロール性は、デュラもアルテも同じハズです。
絶対的なブレーキ力(ストッピングパワー)は、主にパットが決めることですから、ここも、デュラとアルテの差はないハズです。
まとめましょう。
今回のデュラエースとアルテグラのブレーキの差は、以下です。
1. 主に、初期タッチにおいて、アルテグラの方が、僅かに摩擦力が大きい。
2. コントロール性、ブレーキ力は、デュラもアルテも同じ。
3. 見た目は、デュラの方が、お金が掛かっている。
「初期タッチ」と「見た目」の差で、デュラとアルテは、値段が1万9000円違う。
安いと思うか、高いと思うかは、きっと、ユーザーが置かれてる状況によって変わるんでしょうね。(レースの集団内では、微妙なブレーキが必要だし、カッコイイバイクにしたい人には、見た目は大事だし)
今日はここまで