MARU にひかれて ~ ある Violin 弾きの雑感

“まる” は、思い出をたくさん残してくれた駄犬の名です。

嫌われる飛躍

2013-06-19 00:00:00 | 私の室内楽仲間たち

06/19 私の音楽仲間 (500) ~ 私の室内楽仲間たち (473)



              嫌われる飛躍




         これまでの 『私の室内楽仲間たち』




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              重力と反発力で跳~ねる
                 Mozart の "混沌"
                 楽章を結ぶターン
               ハ長調のスポットライト
                運命の動機の動機?
                 滑らかな不協和音
                 Mozart の『五度』
                 ハ長調の安らぎ
                 不協和音の余波
                  牙を剥く脇役
                  嫌われる飛躍
                  作品か人間か
                  歩くメヌエット?
                   鋭い演奏者




 「ほうら、やっぱりからかい始めた…。」

 ソフト君、ボクは真面目に喋ってるよ。



 「嘘だもん。 中期の Beethoven だったら、展開のやり方は
違うだろう…って言っておいてさ、『ラズモーフスキィ』第3番と
似てる、それは Beethoven の中期の作品だ…なんて、矛盾
も甚だしいじゃないか…!」



 確かに、似てなくもないね…。 この不協和音とは。

 「…!! maru は狂ってるよ……。」




 【ハイドンの四重奏曲を、スコアで研究しようとした
者の中に、Beethoven がいました。】 …確か、ボク
がそう書いた記事、あったよね?

 「…うん…。 でも Mozart じゃないよ?」



 ソフト君、悪いけどその記事、検索してくれる?

 「はい。」

 え、もう出来たの!? 速いな…。



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 そこでも触れたけど、ハイドンの弦楽四重奏曲の自筆譜は、
どれも写譜が済むと散逸してしまい、残ってないんだ。 特に
“作曲の際” のものはね。

 「へえ。」

 Beethoven が研究した 変ホ長調 Op.20-1 ね、たとえ
出版譜にしても、パート譜から再構成したものに違いない。
でも彼にとっては、それでもきっと宝物に思えたろうね。

 「ふーん。」



 Mozart の『不協和音』は、6曲の “ハイドン・セット の中
にあるでしょ? これ、やはりハイドンの『太陽四重奏曲集』
に刺激を受けて出来た…、そう言われているよ。

 「へぇ、じゃ、Mozart も Beethoven も、ハイドンの同じ曲を
研究したわけか…。」



 そのとおり。 だとしたら、Beethoven が、Mozart のこの
作品に興味を持った…としても、不思議じゃないでしょ? 

 「なるほどね。」

 それも、かなり深く研究したんじゃないかと思うんだ。

 「うん。」




 この曲は第Ⅰ楽章の序奏が、まさに不協和音で始まるよね。

 「そうだね。」

 音階も、最初は半音階が目立つけど、やがて全音階が優位
になり、ハ長調の主部に入る。

 「はい、関連記事だよ。」 → Mozart の "混沌"







 ありがとう。 そこでも書いたけど、“3/4拍子の混沌”
が、“明快な 4/4拍子のハ長調” に移り変わっていく
この音楽は、その後の Beethoven の作品に与えた
影響が、とても大きかったろうと思うの。

 「なるほどね。 “Do Re Mi” と上がっていく、主部
のモティーフ “B” は、『ラズモーフスキィ』第3番でも
重要だ、…そう言いたいんでしょ?」

 うん。

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 「じゃあ、モティーフ “A” は? “Do Si Do”、“Sol La Sol” の
ように、上下に動く形のことだけど。」

 それがね、【序奏にちゃんと登場しているのに目立たない】…
点まで、二つの作品は似ているんだ。

 「ふーん…。」




 だからといって、Beethoven が “ただ真似をしただけ” じゃ
ないよね。 独創的な例を一つ挙げれば、“A+B” で主題を
作っちゃったことだよ。

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 このモティーフ “A” はね、『不協和音』の第Ⅰ楽章では、
第二テーマに関係してくるんだ。 でもね、そこではあまり
目立たず、頻繁に顔を出すのは、むしろその前なの。



 「主部へ入ってからの話ね?」

 そうだよ。 今回の[譜例]や音源は、第二主題の
直前の部分だけど、する形が多いでしょ?



 「濃い緑などで塗った音符は解るけど、青い枠
で囲ったのは、なあに?」

 音階に限らず、3度や4度で上下する形だよ。



 「あ! 似てる譜例が、この前もあったね。
そういう意味だったのか…。」

 うん。 再現部の同じ箇所だよ。

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 「演奏例の音源]は、[譜例]の8小節前から始まります。」




 ソフト君!?

 「なあに?」



 上の[譜例]だけどね、青い枠が途切れると、目立つのは何?

 「別の緑色だけど、薄いな…。」

 二段目になると、Violin に出て来るでしょ?

 「3度で動きながら、上がっていく形のことね。」



 これね、チェロにとっては、とても難しいんだ。
それを延々とやらせているでしょ?

 「堪ったものじゃないよ。」



 さらにこうなると、もっと大変なの、解るよね?

             





 「ギャァ! 何だ、これ…。」

 どんな名人にとっても、大変な難所なんだって。



 「これじゃ、チェロ虐めだね…。 曲は何?」

 『ラズモーフスキィ』第3番だよ。 この場でも
すでに登場した譜例なの。 別の話題で。

 「……!……」

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 『不協和音』と『ラズモーフスキィ』第3番。 ボクが言いたい
のは、“深い関係がある”…っていうことだけだったんだ。



 「Beethoven が足がかりにして、さらに飛躍したから?」

 うん。 でもこうして見ると、やっぱりよく似てるねぇ、この
二つの曲…。



 「……。」




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