10/29 私の音楽仲間 (110) ~ Mozart の 『不協和音』 (3)
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第Ⅰ楽章の序奏部を乗り切るのに、まる一日かかって
しまい、申しわけありません。 やっと Allegro、4/4拍子の
主部に差し掛かりました。
前回もご紹介した主題、"Do - - Do Re Mi | Sol - Fa"
が、Vn.Ⅰに登場します。 楽譜をお持ちでしたら、ちょうど
23小節目。 どの音源でも2分以内に始まるでしょう。
今回ここで注目したいのは、主題と同時に書かれている、
八分音符の粒です。 演奏しているのは Vn.Ⅱと Viola で、
「ポン ポン ポン ポン …」と、1小節にちょうど8回鳴っている
ことになります。 部分的にスラーがかかっていますが、大半
はスタカート気味で、切れて聞こえます。
これは伴奏音形の一種ですが、テンポを軽快に持続する
ための極めて重要な手段で、俗に "刻み" と呼ばれています。
その性格上、普通はメロディー・パート以外に現われます。
曲が先へ進むとチェロでも奏されます。 上記のテーマが
再現する際 (155小節目) や、途中の 91小節目、107小節目
などです。
「軽やか」と言いましたが、ニュアンスは場面によって様々
です。 "p" の場合もあれば、"f" のこともあります。 "短め"
がいいか、"長め" がいいかという問題もあります。 テンポ
が速いか遅いかも、これに関係してきます。
それらの度合いや組み合わせは、千差万別ということに
なりますね。 ここでは一応 "p" で "短め"、テンポは "速め"
と仮定しましょう。
なぜなら、それがもっとも頻繁に見られる形だからです。
"p の刻み" はアンサンブルにおける大変重要な技術で、
また問題も多く発生します。
ここで考えてみたいのは、「"ポン ポン …" と聞こえるように
するには、技術的にはどのように演奏すればいいか」という
問題なのです。 専門的になってしまい、申しわけありません。
「ポ― ポー ポ― ポ―」でも、「ズ― ズ― ズ― ズ―」でも、
ここでは駄目なのです。
結論から先に言うと、ここは "叩き" で演奏することをお勧め
したいと思います。
"叩き" とは、一体何でしょうか。 まさか太鼓のバチなどを
持ち出すわけではありません。 弓の "毛の部分" で叩いて
はどうかという意味です。
もちろん、弦を "真下に向かって" 叩くわけではありません。
"真横の振動" が弦の本来の目的なので、弓を左右に動かし
ながら叩きます。
技術的にはかなり難しいのですが、「幼いころから教わる」
ことは稀です。 「ソリストになるために必要だ」とは、あまり
考えられないからでしょう。 しかしアンサンブルには必須の
技術で、これには誰もが苦労します。
弦楽器を弾く方は、「スピカートのことを言ってるな…」
と、すぐお解りのことでしょう。
いわゆる "跳ばし弓" のことで、音符を一つ弾くごと
に、弓が弦から離れるような奏法のことです。 弦の上
に置いたままの "置き弓" では、テンポが速めの場合、
どうしても「ズ― ズ―」になりがちだからです。
これまで弦楽器の奏法に関心をお持ちでなかった方に
とっては、ここまで読んでいただいて、多少解りづらかった
と思います。 申しわけありません。
その反面、弦楽器奏者の中には、大きな疑問をお持ち
の方も、きっといらっしゃるでしょう。
「"スピカーレ (spiccare)" が "跳躍する" 意味だというの
はわかる。 だが弦を叩いたら、汚い音しか出ないのでは
ないか?」
「だから、一音一音、弓を弦に "腕で置いたり離したり"
する必要があるのでは? 自分はそう教わってきた…。」
(続く)
音源は前回と同じものです。
[Ⅰ] Adagio-Allegro
2009suko
Agutti Quartet
Alban Berg Quartet
Alban Berg Quartett
Calder Quartet live
Counterten0r
emilyplayscello
Frances Walton String Quartet
Lenny Supera
Leonie Bot; Erin Wang; Daniel Jang; Jennifer Diaz
pointe4anna
the Quartetto Italiano in 1952
Quator Capet
Quarteto Lyra rehearse
Samuel Santana-Violin I Usman Waseem-Violin II
Oliver Marté-Viola Yohenny Agramonte-Cello
Pt1 Pt2
Sforzando String Camp Chamber Group No. 2
violin: Tien-Hsuan Lee, Holly Jenkins,
viola: Daniel Hanul Lee, cello: Benjamin Lash
[Ⅱ] Andante cantabile
Alban Berg Quartet
Calder Quartet live
Counterten0r
Frances Walton String Quartet
[Ⅲ] Menuetto [Allegro]
Alban Berg Quartet
Calder Quartet live
Counterten0r
[Ⅳ] Allegro molto
Alban Berg Quartet
bYG7BF3M
Calder Quartet live
Counterten0r
Frances Walton String Quartet
Tulpen
[全楽章]
アマデウス弦楽四重奏団 1954年11月21~22日録音
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『身体の動きが音になる』
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『優雅な軟着陸』
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「悪棒狽汚鈴?」
↓
悪棒 = あく + スティック
狽汚鈴 = ばい + お + りん
"アクースティック・ヴァイオリン" "acoustic violin"