09/25 私の音楽仲間 (101) ~ Viola はヴィオラ?
私の室内楽仲間たち (81)
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前回は、「ヴァイオリンを大きくしたのがヴィオラだ」とは言え
ない…というところで終わりました。
むしろ "逆" だと付け加えましたが、これにはどういう事情が
あるのでしょうか。
それにはヴァイオリン、ヴィオラという、二つの楽器だけでなく、
他の擦弦楽器を見る必要があるようです。
"ヴィオール" という種類の弦楽器については、よくご存知で
しょうか。
ヴァイオリン、チェロなど、特定の楽器を指す言葉ではありま
せん。 本来はヴィオラ・ダ・ガンバを表わしていたようですが、
年月の経過とともに、同種類の楽器を代表する語になりました。
のみならず、国や地方によって色々なニュアンスが紛れ込み、
さらに広い意味を持つようになりました。
そして今では、
① 「擦弦楽器全体を指す」、② 「ヴィオラ・ダ・ガンバに代表
される、立てて弾く楽器のグループだけを指す」など、大別する
と意味は二つに分かれます。
①は広義、②は狭義なので、今日でも誤解を生む元になって
います。 その他、チェロを「ヴァイオリン型楽器」とする呼び方
まであるので、事態はさらに複雑です。
このフランス語 "ヴイオール (Viole)" が、イタリア語では "Viola"
になります。 また同時に今日のヴィオラも、まったく同じ "Viola"
で表わされます。 イタリア語のヴィオラは内容が広いんですね。
ここでヴァイオリンに登場してもらいましょう。
ヴァイオリンのイタリア語 "Violino" は、"viola" + "ino" から
成っています。
この "-ino" は縮小語尾、すなわち「小さな…」を意味するの
で、「ヴァイオリンは "小さなヴィオラ"」を表わすようになったと
いうのが、言葉の順序としては正しいことになります。
しかし、「今日の "ヴァイオリン" に当るものだけが "Violino" と
呼ばれていたのか」、そして「最初の "ヴァイオリン" がいつ登場
したのか」…という問題になると、今となっては正確に分りません。
一説には16世紀の初頭ではないかと考えられています。
少なくとも、「ヴァイオリンが先でヴィオラが後から出来た」ので
ないことだけは確かです。
一方、"ヴィオラ" の側でも、「イタリア語の "Viola" が厳密に
何を指していたか」は、先ほど見てきたように、一通りではあり
ません。 必ずしも"今日のヴィオラ" とは限らず、広い意味の
ヴィオール属かもしれないのです。
ここで初めて "ヴィオラ" に限定したとしても、古い時代に
は色々な種類の楽器がありました。 ヴィオラ・ポンポーザ
(ポンポーサとも言う) 、ヴィオラ・ダモーレなどの名をお聞きに
なったことがあるかもしれません。
このように、"Violino"、"Viola" が指してきた内容が、そもそも
当時から厳密でなかった上に、現在までに意味が多少変化して
いるのです。 以下は、このことを踏まえた上で記してみます。
今日の "ヴィオラ" は、ヴァイオリンの登場以前に存在して
いたと考えられ、以後、"ヴィオラ ・ダ・ブラッチョ" と呼ばれる
ようになりました。
これは「肘、腕のヴィオラ」という意味で、床に置くなどして
立てずに、手に持って弾くからです。 "Bratsche" は、今日
ドイツ語で "ヴィオラ" を表わします。
これに対して "ヴィオラ・ダ・ガンバ" は「膝、脚のヴィオラ」
です。 サイズ (音の高さ) にも色々なものがあり、「膝の上」、
「膝の間」、「膝よりさらに下」などに、置いたり挟んだりして
演奏します。
何だか解りにくくなりましたね。 いよいよ今回も終わりに
近づきました。 もう少しガンバってください。
少なくとも、「ヴィオラという言葉が古くからある」ことだけは
確かなのです。
詳細は[ヴィオール属]に譲ることにします。
「ヴィオラなんて、名前は聞いても、見たことも触ったことも
ない。 ヴァイオリンと、大きさはどのぐらい違うんだろう。
どんな音がするんだろう?」
そうですね、ヴァイオリンならそこらじゅうで見かけます
から。 それに比べれば、ヴィオラはずっと "マイナー" な
楽器かもしれません。 後進楽器のヴァイオリンが、今や
主流になってしまったわけです。
かく言う私も、ヴィオラにはかつてまったく関心がありま
せんでした。
(続く)
なおウィキペディア(Wikipedia)の『ヴィオラ』の項目には、
以下の記載が見られます。 言葉の厳格な定義の難しさを
感じます。
ドイツ語名のブラッチェ(Bratsche)はヴァイオリン族の総称であるヴィオラ・ダ・ブラッチョ(viola da braccio)に由来する。
大きさ
大きさはヴァイオリンに比べ、胴の長さで50mmほど大きいといわれるが、ヴィオラの大きさは390mmほどから420mmを超えるものまでばらつきがある。
アントニオ・ストラディヴァリはコントラルトヴィオラ(CV)とテナーヴィオラの2種類のヴィオラを製作している。現在残された、木の内型によればコントラルトヴィオラの胴長さは約41cmで、テナーヴィオラの胴長は約47cmである[1]。音響的には大きい方が有利であるが、大きすぎると演奏が困難になるため、演奏者は演奏技術・体格との兼ね合いで自分の弾くヴィオラを選択することになる。
日本では405mmほどの大きさが好まれるが、世界的には小さめの寸法であり、ストラディバリウスが製作した寸法から410mm程度が標準とされる。これは前述のコントラルトヴィオラの大きさをほぼ継承したものと言える[2]。一方、アメリカ合衆国では大きなヴィオラが好まれ、あるヴィオラ製作コンクールでは「420mmを超えるもの」という条件があるくらいである。また長さのみならず、共鳴箱の容積を大きくとるために厚みを厚めに設計したもの、幅を広めに設計したものなど形もまちまちである。
ヴィオラの大きさは、ヴァイオリンより音域が五度下がることから、本来胴の長さがヴァイオリン(360mm程度)の1.5倍の540mm程度であるべきという議論もあるが、実際にはきちんと製作され調整された楽器ならば420-430mmあれば十分というのが現在の認識である。もちろんヴィオラの音色は大きさのみによって決定されるものではないのでバシュメットのように標準的な寸法よりも若干小さめのヴィオラで魅力ある音色を出す演奏家もいるが、400mm以下のヴィオラでは本当のヴィオラの音とは言いがたいというのが本格的な制作者にみられる認識である。弦は楽器全体の長さに応じてヴァイオリン用のものより長いだけではなく、同じ高さのヴァイオリンの弦より太い。弓は一般的にヴァイオリンのものより短く、重量は重い。