09/11 思い出の曲 (2) 『ブラ1』 (2)
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さて、このブラームスの交響曲第1番ハ短調。 もちろん
私の大好きな曲なのですが、自分にとってはそれ以上の意味
があります。
まず思い浮かぶのは、この曲の Viola のパートを、あるオケ
のオーディションで弾かされたときのことです。
団員や常任指揮者などが居並ぶ中、オケ曲の課題曲として
出されたのがこの曲でした。 曲のどの部分を弾かされたのか、
今でも覚えています。 もう30年以上も前のことですが。
この試験は私にとって二度目の挑戦で、何とか入れてもらう
ことが出来ました。 ちなみに一度目のときに出た曲は、あの
『悲愴』です。 これも、どの部分を弾かされたのか、大体
覚えています。
そのとき落ちたのは、もちろん曲が "悲惨"、じゃなかった、
『悲愴』だったせいではありませんよ。 試験の時期が3月
だったので、もし受かっていたら "春の椿事" になるところ
でした。
ご存知のとおり、ブラームスの曲は内声が充実している
ので、Viola弾きには大変やりがいがあり、人気もあります。
もちろん私もこの曲は、それまでに何度か弾いていました
が、最初の出逢いは遥か昔に遡ります。
それは、まだ小学校に入る前のことでした。 両親と遠出を
して帰り、疲れて寝てしまったことがあります。 そして目を
覚ますと、ラジオから流麗なメロディーが。
それが確かにこの曲の一部だったような気がするのです。
もちろん確証はありませんが。
どの部分かと言えば、それは終楽章の、例の『歓喜の主題』
に似ていると言われる箇所です。 "Allegro con brio" と書かれ、
Violin がG線で奏でる、あのハ長調のテーマです。
これは優に50年以上前のことになりますが、私の記憶力が
いいのではなく、原因は別のところにあるようです。
ひと寝入りして、おそらく疲れはとれ、気分もすっきりしていた
ことでしょう。 その上、目が覚めると、両親が傍で見守ってくれ
ていたのです。
爽快感と安堵感、それにこのメロディーが一体となり、強い
印象を私の心に刻み込んだのではないかと思います。
もちろんこれがブラームスの名曲であることを知ったのは、
ずっと後のことでした。 しかし曲との "出逢い" に関しては、
あの "第9" より、私の場合は先だったようです。
この曲は『第10交響曲』と呼ばれることがあります。 大先輩
Beethoven への思い入れ、またその後継者としての筆致が、
よく指摘されるところです。
のちに自分が学生オーケストラの指揮をする機会を与えられて
からは、この曲に別の形で接することになりました。
楽譜を何度も読んでいるうちに強く受けたのは、この交響曲
には、「曲自身の成立の過程、またそれを巡る思いが直接
込められているのでは?」という印象でした。
着想から完成まで 20年以上を要したこと、完成の喜び、恩師
シューマンの妻クララへの感謝、そして、ブラームス自身…。
それらが曲の中に描写されている、とさえ窺えるフシがあります。
その意味では確かに "歓喜のテーマ" です。 ブラームスの。
また脱線しました。 機会があれば続きはいつか…。
[音源]
(同じテーマが二度目に登場する部分です。)