MARU にひかれて ~ ある Violin 弾きの雑感

“まる” は、思い出をたくさん残してくれた駄犬の名です。

運動の神秘 (6) ~ 指先を広げる③

2009-02-24 00:03:45 | 音楽演奏・体の運動

02/24   運動の神秘 (6) 指先を広げる ③





 『運動の神秘』 シリーズには、これまでに

(1) 深奥部の筋  (2) 筋肉の協調  (3) 筋肉の反目

(4) 指先を広げる①  (5) 指先を広げる②

の五回分があります。





 関連記事 『楽器の顎当て』 シリーズ

(1) 邪魔な厚み  (2) 材質の差?  (3) "厚み"と身体の寸法








 前回は Violin、Viola を弾く際に

「③や④の指の音程が低くならないよう、肘を引き付ける

というお話をしました。




 また、それはいいとして、

「同時に①も高くなってしまうのではないか?

という疑問も生じましたね。




 手の大きさにはそれぞれ限りがあり、後天的に突然変異を
期待することなどは、もちろん出来ません。 与えられた手の
大きさで、各々の楽器を持ち、対処するしかないわけです。

 指先を開こうとしても、もちろん限界はあります。 しかし
やり方によっては可能性がかなり広がるのも、また事実
なのです。




 話はガラリと変わりますが、今ここで、長方形を思い浮かべて
ください。 あの、四角い。



 長方形には、の辺との辺がありますね。 そこで、さらに
もう一本。 頭の中で対角線を引いてください。

 さて、これで三種類の直線が出来ました。



 それでは質問です。 そのうち、一番長いのはどれですか?

 もちろん、それは対角線ですよね。




 「お前、一体なんの話、してんだ…!」と、どうやらお叱りが
来そうです。



 さて、あなたの顔の前で、手を開いてみてください。 そして
指を曲げてみましょう。 ちょうど、Violin か Viola を手にした
つもりで。



 ここでお願いがあります! ①~④のそれぞれの指の、三つの
関節がどういう形をしているか、記憶しておいてください。

四本の指の形は "似ていますか"? それとも、かなり
"差がありますか"?



 お待たせしました。 それでは、指と指の間を開こうとして
ください。 一体どれだけ広がりますか?

               ←  ?  ⇒
          


 もしあなたが、単に"指と指の間隔" を、上の写真のように
"横方向に" 開こうとするのであれば、はっきり申し上げて、
広がる可能性はほとんどありません。 特に③、④は

 ますます解らなくなってしまったでしょうか?

 実は私が、"指を広げる" と書いていることに、気付いて
いただきたいのです。




 それでは具体的にお話ししましょう。 注目するのは、
①~④の指の第三関節、つまり、指の付け根です。



 まず①の付け根を、手の甲の側に引いてください。
指先が、親指から離れていく方向です。

 今度は逆に、④の指先を、手のひらの側に突き出して
ください。 そう、肘や肩に近づく方向です。

     ←      →         ↑
    
                           ↓


 すると、①の指先と、④の指先の間の距離は、以前と比べて
どうなったでしょうか?

 答は一目瞭然ではないでしょうか。



 そして、先ほど覚えていただいた、ご自分の指の形ですが、

各指の第三関節の形には、かなり差が無ければいけない

ことになります。




 もし四本の指の曲がり方が同じままならば、①~④の指先は、
単に横の辺に沿って並んでいるだけです。 しかし第三関節を
始めとして、曲がり方に差がつけば、各々の指先が "縦方向"
に離れてくれるはずです。

 そのため、"指先が対角線状に並んだ" と言えるでしょう。

 要は、指の付け根の曲げ方、伸ばし方なのです。

     

    Violin     Viola      Viola      Viola
     36.0      38.5       40.5      44.5

           数字はいずれも "胴長" (cm)



 私の場合、Violin より、Viola を持つときに、この曲げ方の
差を大きくしなければなりません。 いや、"私だけ" という
ことは、おそらくないでしょう。

 また、もし "お子様 Violin" なら、関節はほとんど曲げずに
済むでしょう。 今回の、一番最初の写真のような手の形でも、
音程はまだ広すぎるかもしれません。 大人なら、おそらく
どなたでも。



 ということは、この関節の曲げ伸ばしが必要な度合いには、
手の大きさによって差がある」ということにはならない
でしょうか。

 もしかして、あなたと先生との間にも。 そして、ひょっとして
微妙な差は、楽器の構え方全体にもあって当然なのでは…。

 体格が、そして手の寸法も違うかもしれないから。




 以上が、私が勝手にお薦めする "指先の開き方" です。



 しかし、これだけで、すべてを充分にお伝え出来たなどとは、
まったく考えていません。




 まず申し上げておかねばならないのは、

指先のどの部分が弦に触れなければならないか」という、

大変重要な基準があることなのです。 特に①の指の!

①は、四本の中では最も自由度の高い指でもあります。



 上の四枚の写真、そして下右の写真をご覧になり、お分かり
いただけるでしょうか…?



     

                     Viola (胴長 40.5cm)



 以上は、指という末端の部分についてでしたが、実際に楽器を
持ってみると、この指の形、すぐには出来ない場合もあるでしょう。

 たとえば、人差し指の関節の曲がり方を修正すると、
"指が弦から離れてしまう" とか…。 あるいは、"①~④の
指先が形作るラインが、楽器の弦の方向と一致しなくなる"
とか。

 これらを修正するためには、どうしたらいいのでしょうか?

 問題は、身体の末端部分から、より根幹の部分へと波及して
いきます。 新たな "末端" を、楽にしようとすればするほど。




 また前回は、楽器に隠れて見えにくい肘を引き付けることが
大事だと書きました。 もしそれが困難だとしたら、一体どんな
原因があるのでしょうか。



 手の最短距離を許してくれない原因、それは、樹木の幹に
当たる胴体や、頸 (くび) の姿勢にあるのでしょうか。

 それとも、楽器や備品の "厚み" ?

 あるいは、これらが微妙に関係し合っているのか?



 ひょっとして、「"楽器の構え方" を変える」必要が出てくる…?



 私の"顎当て騒動" も、半分はこの辺に起因しています。




 (続く)




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