07/24 私の音楽仲間 (519) ~ 私の室内楽仲間たち (492)
バッサリお手打ち
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バッサリお手打ち
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Mozart の『プロシャ王』 四重奏曲 変ロ長調。
その第Ⅱ楽章は、2/2拍子の Larghetto です。
第Ⅰ楽章は、歌う Allegro でした。 そして今度
は、ゆっくりな歌。
“ゆっくり” にも色々ありますが、“Largo” は “幅
広い、ゆったりとした”。
“(h)-etto” は縮小辞ですから、“軽めのラルゴ”、
“愛らしいラルゴ” でしょうか。
[演奏例の音源]は、楽章の冒頭と最後を無理に繋げて
しまったものです。 相変わらずチェロが大活躍します。
さて、[譜例]は Vn.Ⅰの冒頭部分ですが、“版による違い”
を何箇所か書きこんでみました。
主な問題は、楔形の記号、スタカーティシモです。 [譜例]
が小さくて見にくいのですが…。
(1) 二段目の○ (4箇所) は、別の版ではスタカート (・) に
なっています。
(2) ○は、その版ではスタカートも何も無い箇所です。
その他、p の位置や、スラーの懸り方にも差があります。
ご覧の[譜例]はベーレンライター版です。 「MOZART に
関しては信頼できる」とされており、私も用いるように心掛け
ています。
“スタカート” は、「短く演奏しろ」…とよく言われます。
楽典にも堂々と、そう書いてある。
“スタカーティシモ” は、「もっと短く」…と。
しかし “スタカート” は、“切れた、分離した” です。 “短い” の
意味はありません。
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もし “短い” と思いながら、この[譜例]を見ると、色々な矛盾
が浮かんでくるはず…。
たとえば、四分音符のスタカーティシモが、フレーズの最後に
幾つも出てきます。 これ、どう演奏するのでしょうか?
十六符音符? それなら、なぜ Mozart はそう
書かなかったのか?
幅広い、ゆったりとした楽章の中で、フレーズが
プッツリ終わってもいいものでしょうか?
それでは、いくらなんでも不自然ですね。
だからこそ “楔形” を、後の編集者が取り除いて
しまったのでしょう。 記したのが Mozart であっても。
意味を理解できずに。
どうも、音の “長さ” が問題ではなさそう。 音の “有無”
に注目する、デジタルな捉え方には限界があるようです。
…となると、アナログ、ファジー…ですね。 「音にはゼロ
か1しか無い」…と考えるのではなく、“その中間の音” を
体験する機会、伸ばす努力も大事でしょう。 何通りも。
音には、0.5 の音も在ります。 そして 0.4、0.3…と減少
しながら、無くなっていく。 もちろん長さはキープしながら。
それがスタカートなのでしょう。 減衰がもっと急激なら、
スタカーティシモになります。
いわゆる “音を抜く” 奏法と関連してくる。 管楽器でも
弦楽器でも、“弱音のロングトーン” という、難しい技術が
必要になってきます。
いずれにしても、“音の形” を考えないと、この緩徐
楽章では納得のいく弾き方が出来ません。 いつかも
触れた “砲弾型” です。
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その極端な例が、この “ゆったりとしたスタカーティシモ”
ではないでしょうか。
王様の手打ちのように “バッサリ” はごめんです。
[音源サイト ①] [音源サイト ②]
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