MARU にひかれて ~ ある Violin 弾きの雑感

“まる” は、思い出をたくさん残してくれた駄犬の名です。

バッサリお手打ち

2013-07-24 00:00:00 | 私の室内楽仲間たち

07/24 私の音楽仲間 (519) ~ 私の室内楽仲間たち (492)



             バッサリお手打ち


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                 王様はお見通し
                 バッサリお手打ち
                 意地っ張りの私
                  自業自得の私
                  鍛えられる私




 Mozart の『プロシャ王』 四重奏曲 変ロ長調
その第Ⅱ楽章は、2/2拍子の Larghetto です。

 第Ⅰ楽章は、歌う Allegro でした。 そして今度
は、ゆっくりな歌。



 “ゆっくり” にも色々ありますが、“Largo” は “幅
広い、ゆったりとした”。

 “(h)-etto” は縮小辞ですから、“軽めのラルゴ”、
“愛らしいラルゴ” でしょうか。



 演奏例の音源]は、楽章の冒頭と最後を無理に繋げて
しまったものです。 相変わらずチェロが大活躍します。




 さて、[譜例]は Vn.Ⅰの冒頭部分ですが、“版による違い”
を何箇所か書きこんでみました。

 主な問題は、楔形の記号、スタカーティシモです。 [譜例]
が小さくて見にくいのですが…。



 (1) 二段目の (4箇所) は、別の版ではスタカート (・) に
なっています。

 (2) は、その版ではスタカートも何も無い箇所です。

 その他、p の位置や、スラーの懸り方にも差があります。



 ご覧の[譜例]はベーレンライター版です。 「MOZART に
関しては信頼できる」とされており、私も用いるように心掛け
ています。







 “スタカート” は、「短く演奏しろ」…とよく言われます。
楽典にも堂々と、そう書いてある。

 “スタカーティシモ” は、「もっと短く」…と。



 しかし “スタカート” は、“切れた、分離した” です。 “短い” の
意味はありません。

関連記事 『頭の体操 (106) 漢字クイズ 問題/解答 より』 ~ スタカーティシモ



 もし “短い” と思いながら、この[譜例]を見ると、色々な矛盾
が浮かんでくるはず…。

 たとえば、四分音符のスタカーティシモが、フレーズの最後に
幾つも出てきます。 これ、どう演奏するのでしょうか?



 十六符音符? それなら、なぜ Mozart はそう
書かなかったのか?

 幅広い、ゆったりとした楽章の中で、フレーズが
プッツリ終わってもいいものでしょうか?



 それでは、いくらなんでも不自然ですね。

 だからこそ “楔形” を、後の編集者が取り除いて
しまったのでしょう。 記したのが Mozart であっても。
意味を理解できずに。




 どうも、音の “長さ” が問題ではなさそう。 音の “有無”
に注目する、デジタルな捉え方には限界があるようです。

 …となると、アナログ、ファジー…ですね。 「音にはゼロ
か1しか無い」…と考えるのではなく、“その中間の音” を
体験する機会、伸ばす努力も大事でしょう。 何通りも。



 音には、0.5 の音も在ります。 そして 0.4、0.3…と減少
しながら、無くなっていく。 もちろん長さはキープしながら。

 それがスタカートなのでしょう。 減衰がもっと急激なら、
スタカーティシモになります。

 いわゆる “音を抜く” 奏法と関連してくる。 管楽器でも
弦楽器でも、“弱音のロングトーン” という、難しい技術が
必要になってきます。




 いずれにしても、“音の形” を考えないと、この緩徐
楽章では納得のいく弾き方が出来ません。 いつかも
触れた “砲弾型” です。

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 その極端な例が、この “ゆったりとしたスタカーティシモ”
ではないでしょうか。

 王様の手打ちのように “バッサリ” はごめんです。




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