03/07 私の音楽仲間 (150) ~ 私の室内楽仲間たち (130)
Mozart の弦楽四重奏曲第22番変ロ長調 K.589
エネルギー不足
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変ロ長調の『プロシャ王四重奏曲』。 第Ⅰ楽章の冒頭で、
早くも問題に突き当たってしまいました。
それは、スラーで囲まれた16分音符の群れです。 演奏が
大変難しく、あるときは速過ぎて短く、またあるときは不均等
に聞こえやすく、四つを足しても、4分音符の長さに満たない
ことが多いのです。
こういう現象を、俗に "走る"、"音符が詰る" などと言い、
私などは率先してやっていることがあります。
また、たとえ時間的に正確でも、今度は全体の音量が
落ちてしまいやすいものです。
以上の二つの現象が、ときには同時に顔を出します。
中でも特に難しいのは、スラーで囲まれたうちの、最初
の音符です。
前回は、「その前に2分音符が置かれているので、
さらに難しい」、また「4分音符だと、もっと難しい」…
というところまで、ご一緒に見てきました。
それは、なぜなのでしょうか?
[譜例①]
これは前回もご覧いただいた、第Ⅰ楽章の冒頭です。
2分音符の後の16分音符が、レガートで囲まれています。
ここでは問題を単純化するために、「2分音符の代わり
に4分音符が書かれている」と仮定してください。
今 Violin を取り出し、一弓で4分音符を、続いて、弓を
返しながら 四つの16分音符 (スラー付き) を弾くとしましょう。
もし「急ぐ、短い」、「音量が落ちる」などの問題が16分
音符に起こるとすれば、原因は「エネルギーが足りない
からだ」とは考えられないでしょうか。
同じ長さでも、音の動きの無い、単純な4分音符と、
中が細分化され、スラーで囲まれた音符とでは、
「後者の方をしっかり弾きこまねばならない」ようです。
それは、自分自身も絶えず意識していることです。
またこれは弦楽器に限らず、どの楽器の教師も、
また声楽の先生でも、共通して指摘される内容では
ないでしょうか。
それも、スラーの中の音符の数が2個、3個…と
増えていくに連れて、さらに多くのエネルギーを
要するように感じます。
やはり、違う音程の音符がスラーの中に現われた
ときは、それぞれが "鳴り始める" ために、かなり
エネルギーを必要とするのでしょうか。
まるで、自動車が何度も発進するときのように…。
音響、物理学的に詳しい方がおられたら、
ぜひ補筆をお願いいたします。
では、その "エネルギー" を増やすには、どうしたらいいの
でしょうか?
「弓に重さを加えればいいだろう。」 確かにそれは有効な
方策の一つです。
[譜例②]
これは第Ⅱ楽章の一部です。 ご覧のとおり、4分音符
の後に、32分音符が8つ続いています (一つはタイで、前と
同じ高さの音)。
Mozart は、この2拍 (4分音符) 全体を、レガ―トで演奏する
ように指定しているので、普通は全体を一弓で弾く方がいい
でしょう。 美しく演奏するのは、かなり難しいのですが。
もし、どうしても弾きにくければ、"↑" の箇所で弓を返すことも出来ます。
しかし、それはそれで、また別の問題が浮上してくる危険性があります。
弦楽器をお弾きになる方は、この2拍を一弓で弾いてみて
ください。 弦楽器でなく、管楽器、歌の方もお試しください。
ひょっとして、「32音符で単に重さを増やすだけでは物足り
ない」とはお感じにならないでしょうか?
(続く)
音源は前回と同じものです。
全楽章
[アマデウス弦楽四重奏団 1955年6月5~7日録音]
(音が鳴り始めるまで時間がかかります。)
第Ⅰ楽章
[演奏団体不明]
第Ⅱ楽章
[演奏団体不明]
各楽章の断片
[TriState String Quartet]
その他
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[留魂録 (道楽日記)]より、[解説・第Ⅱ楽章試聴コーナー]
[第Ⅱ楽章 TSUTAYA 試聴コーナー]