03/12 私の音楽仲間 (153) ~ 私の室内楽仲間たち (133)
Mozart の弦楽四重奏曲第22番変ロ長調 K.589
上下のステップ
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西洋の上流社会に付きものの、舞踏会。 舞踊の場面
は、クラシック音楽とも深い結びつきがあります。
バレエ自体はもちろんのこと、歌劇の劇中でも、踊りは
頻繁に登場します。 また作品の題名だけを見ても、枚挙
に暇がありません。
『精霊の踊り』(グルック)、『ガヴォット』(ゴセック)、『ドイツ
舞曲』(Mozart)、『舞踏への勧誘』(ヴェーバー)、『仔犬の
ワルツ』(ショパン)、『仮面舞踏会』(ヴェルディ、ハチャトゥ
リャ―ン)、『死の舞踏』(サン=サ―ンス、リシュト)、『死の歌
と踊り』(ム―ソルクスキィ)、『パヴァーヌ、古風なメヌエット、
高雅で感傷的なワルツ、ボレロ、ラ ヴァルス』(ラヴェル)、
『悲しきワルツ』(シベリウス)、『舞踏会の美女』(アンダソン)…。
とりわけ私にとって魅力的なのは、やはりワルツです。
「イチ、ニ、サン、イチ、…」、いや、「アン、ドゥ、トルワ…」。
私は門外漢なので、踊りのことはまったく解りません。
一体どうやったら、あのように優雅な身のこなしが出来る
のでしょう…?
いえ、それ以前の原始的な疑問…。 ステップの位置
を間違えて、相手の足を踏んだりすることは無いので
しょうか? 私なら、パートナーから平手打ちを食らい、
「はい、それまでよ!」
その恐怖心が先に立ち、社交ダンスすら経験があり
ません。 高校のフォークダンス止まりです。
しかし優雅なワルツも、全身運動の一つです。 よく
見ると、連続する上下運動が含まれています。
「1、2、3、1、2、3。」 ドンブリ勘定で言えば、
「身体を1で上へ伸ばし」、「2で高さをキープし」、
「3で着地するとともに、次の1の運動へとつなげる」
…という、サイクルを成しています。
ここでは今、1拍目で軽やかに伸び上がる運動について
見てみましょう。 つま先、かかと、そして肘、指先に至る
まで、全身が上へ向かって伸びていきます。
見るからに自然な、Aさんの美しい踊りです。
あ! 隣りのBさんの様子が変です。 よく見ると、運動
の方向自体はAさんとまったく変わらないので、振り付け
は同じなのでしょう。
でも、どことなく伸びやかさが足りません。 手先、足先を
見ると、やはりよく伸びてはいます。 それに手足の長さや
全身のスタイルは、Aさんより明らかに恵まれているという
のに…。 しかし全身から受ける印象が、不自然で重苦しい
のです。 一体なぜなのでしょう?
この場合、Bさんの問題点は "腰" に在ったようです。
手足の先端は、振り付けどおりに伸びていました。
しかし、「腰を伸ばせ」とは言われなかったのかどうか、
とにかく「胴体が生きて」いなかったのです。
「腰は身体の中心」とも言われますが、その腰が死んで
いるので、全身の躍動感とは程遠い印象を与えていたの
です。 「小手先だけの芸」とはよく言ったものです。
一方で、Bさん自身の内部事情は、どうだったのでしょう
か? その心理状態、そして身体の感覚は? 自分では
「伸びやかだ」と感じながら、踊っていたのでしょうか。
いや、そもそも、「心は伸びやかだが、身体の方は…」
などということは、あるのでしょうか? また、その逆は?
…これは考え過ぎかもしれません。 「精神状態が良くても、
身体に病気や故障を抱えて」いたり、また、「身体は万全でも
心配事があって悩んで」いることだってありますから。
また、「敢えて腰を活発に動かさない」場合もあるでしょう。
演出、あるいは演技上の理由から。
しかしこれらは、本来あるべき姿とは異なった、例外的な
事例と言ってよいでしょう。
身体の自発的な運動は、全身のバランスを保たずしては
生まれませんから。 人間の肢体は、他の部分との協調が
無ければ、不自然なものにならざるを得ません。 外面的に
も、また内面的にも。
また、「腰だけが死んでいる」という現象も、実際は考えら
れないのではないでしょうか? 腰と隣り合った、他の部位
の肢体も束縛を受けざるを得ないからです。
前回までは、Violin を演奏する際の "弓使い" について、
見てきました。
ところがここでは、急に踊りの話になってしまいました。
相変わらず私お得意の "脱線" で、まったく困ったものです。
(続く)
音源は前回と同じものです。
全楽章
[アマデウス弦楽四重奏団 1955年6月5~7日録音]
(音が鳴り始めるまで時間がかかります。)
第Ⅰ楽章
[演奏団体不明]
第Ⅱ楽章
[演奏団体不明]
各楽章の断片
[TriState String Quartet]
その他
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[留魂録 (道楽日記)]より、[解説・第Ⅱ楽章試聴コーナー]
[第Ⅱ楽章 TSUTAYA 試聴コーナー]
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