MARU にひかれて ~ ある Violin 弾きの雑感

“まる” は、思い出をたくさん残してくれた駄犬の名です。

記号を "無視" する勇気

2011-10-06 00:00:00 | 私の室内楽仲間たち

10/06 私の音楽仲間 (314) ~ 私の室内楽仲間たち (287)



           記号を "無視" する勇気



         これまでの 『私の室内楽仲間たち』



            Beethoven の "Harp"

                  音程の濡れ衣?
             付き合いのいい音程、悪い音程
               記号を "無視" する勇気
                 それを言っちゃあ…
                   拘りにも差が
              Beethoven の ドッグ-ラン
                長距離走に比べれば
               解釈を左右する表現手段
               理解が先? 表現が先?
                揺れる調、揺れる3度
                それは形式が決めるさ





 Violin の K.君T.さん、チェロの T.さんとご一緒しての
カルテット。 最後は "ハープ" の愛称で親しまれている、
Beethoven の 変ホ長調 Op.74 です。



 この曲の第楽章は、"主題と変奏" から出来ています
が、弦楽器奏者として注意しなければならない箇所が幾つ
かあります。

 そこでは、"スラーの記号の処理" が問題になります。




 [譜例 ]は、楽章の冒頭で、ViolinⅠがテーマを提示
する部分です。

 二拍目から一拍目に向かって、スラーがかかっている
場合がほとんどです。








 [譜例 ]は、楽章の後半でテンポが上がった部分です。

 ここでもスラーがたくさん見られますが、そのかかり方が、
先ほどとはだいぶ違いますね。 "小節単位" の場合が
多くなりましたが…。



 先ほどの[譜例 ]では、スラーのとおりに演奏すれば、
フレーズ感をそのまま表現できました。 ところが今度は
スラーを忠実に演奏しても、何となくピンと来ません。

 それは、なぜでしょうか?







 どうも、「作曲者が厳密にスラー記号を書き込んだ」とは思え
ないのです。 大まかなフレーズ感は解りますが。 演奏側
から見れば、書き方が一貫しない上に、「同じ高さの音符が
スラーの中で連続している」…など、弦楽器奏者には処理
しにくい問題も見られます。

 ここではもう一度、最初のテーマをよく思い起こし、基本的に
"同じフレージングで" 演奏することが大事ではないでしょうか。



 ただ、それでも演奏しにくい箇所が幾つも残ります。 あとは、
個々の奏者が、自分なりに工夫する必要が出てきます。 同じ
音符が続いたときには、弓は切らず、違う指を使うようにする…
など、色々な手段を用いた方がいいでしょう。




 [譜例 ]は、これより前、第二変奏で Viola が活躍
する部分です。

 ここでも、ほぼ "小節単位" のスラーが多いのです
が、「このとおりに忠実に弓を返さなければいけない」
…のでしょうか?







 ここでも、最初のテーマを頭に入れておけばいいでしょう。

 大事なのは、「何を遵守し、また何が自由でいいのか」…
を判断することではないでしょうか。 "小節の途中で弓を
返す勇気" も必要になってくると思います。




 [譜例 ]は、この部分をスコアで見たものです。

 Viola のパートには、ほぼ "二小節単位" で、大まかに
スラーを私が書きこみました。

 貴方が "Aさん" というお名前なら、この部分の弓使いの
"Aさん版" があっていいと思います。 また、"指使い" は
さらに自由です。







 一箇所だけ注意が必要なのは、繰り返し記号の後、楽譜の段
が変わる辺りの部分です。

 ここでは「スラーの範囲が4小節に亘っている」ことを、冒頭の
テーマで確認し、長いフレーズ感で演奏しなければなりません。
たとえ弓は切っても、音楽は4小節分の長い息が必要です。




 下の音源は、冒頭のテーマと第二変奏を、編集、直結して
しまったものです。

 テーマ部分は繰り返しをカットし、また後半の変奏は、逆に
繰り返しをすべて取り入れました。



 よく聴いていただくと、変奏の1度目と2度目では、色々違う
事柄が多いですね。 どこまでお気付きでしょうか?

 「2度目は雪辱を!」…などと考えながら、改善を試みている
フシもあります。 また、逆に "事故" が起きてしまうことも…。
演奏者も人間です。

 ただこのときは、眼の前のパート譜の音を出すのは、全員が
初見でした…。 どうかお赦しください。 










    冒頭のテーマ と Viola による変奏部分の演奏例]




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