MARU にひかれて ~ ある Violin 弾きの雑感

“まる” は、思い出をたくさん残してくれた駄犬の名です。

黒幕にも決定できない順番

2011-06-24 00:00:00 | 私の室内楽仲間たち

06/24 私の音楽仲間 (276) ~ 私の室内楽仲間たち (250)



          黒幕にも決定できない順番



         これまでの 『私の室内楽仲間たち』



         弦楽五重奏曲 ハ長調 K515




 有名な "ト短調" と、ほぼ同時期に作られた Mozart
弦楽五重奏曲に、ハ長調 K515 があります。

 個人的には大好きな曲で、これまで3度ほど、異なる
メンバーの方々と楽しんできました。 いずれも Violin
を担当し、うち2回は小さな演奏会のために、何度も
練習を重ねたものです。



 ところが最近になって、初めてお近づきになった方々と、
この曲を演奏する機会がありました。 それも2度ほど。
いつもご一緒している室内楽グループとは、違うメンバー
です。

 しかし今回も共通しているのは、「発表を前提にした場
ではない」ということ。 それも、貴重な連休を返上して、
合宿よろしく「泊まり込みで楽しもう!」というのです。

 場所を提供してくれたのは、チェロの N.さん。 この日、
初めてお目にかかったのですが、まるで「室内楽を楽しむ
ために建てた」ような、立派なお宅。 宿泊施設も完備して
いるのですから驚きです。




 今回の人数は10人以上。 弦楽四重奏の編成だけでなく、
ピアノ、フルート、クラリネットの方も居ます。

 もちろん、全員が一度に演奏するわけではありません。
出番の無い人間は、そばで談笑しながら飲んだり食べ
たり。 演奏する側も、「それを耳に入れながら楽しむ」と
いう様子です。

 おっと、「アルコールを腹に入れながら…」という実態も、
ちゃんと付け加えないといけませんね。



 演目、あるいは人間の組み合わせの数は、20ほどだった
でしょうか。 1日目の夕方から、2日目の昼にかけてです。
もちろん、深夜も寝る間を惜しんで。

 そのうち私が参加したのは、10を軽く超えてしまう演目数。
まったく初見の曲も幾つかありました。 「純粋にアルコール
を楽しもう」という魂胆は、無残にも潰えました。 もっとも、
それなりに "燃料" を補給しながらでしたが。




 私に出番や演目を指示したのは、K.君。 この場にも何度か
登場している名です。 私の大学オケ時代の友人、というより、
正確には、"オケや室内楽の恩人、師" と記す方が相応しいで
しょう。



 詳細にお読みくださっている方は、「おかしい…!」と思われ
るかもしれませんね。 K.君と私は「何十年も会っていない」
はずですから。

 それが、どういうわけか、彼と私は今、一緒に居るのです。
いや、この場に誘ってくれたのも彼で、そのお蔭で N.さん
始め、多くの方々と初めてお会いすることになったのです。




 当日、私が最初に参加したのが、この五重奏曲、K515 でした。
「そうしろ」と言ったのは K.君。 ただし、この五重奏曲では一緒
に弾いていません。



 あるいは、久しぶりに彼の前で弾くことになった私を、まずは
聴く側に回って吟味したかったのかもしれません。

 怖い…。 「40年経っても、学生時代と全然変わってないな…」
なんて言われたら、どうしよう…。



 黒幕の K.君。 引き続きご登場いただくことになりそうです。

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 五重奏曲のメンバーは、Violin が S.さんH.さん、Viola が私、
N.さん、チェロが T.さんです。



 S.さん、H.さんは、この日、初めてお会いしました。 単に上手
なだけでなく、音楽の歌心、アンサンブルでの適応力など、大変
優れた方々であることが、ご一緒してすぐ解りました。

 Viola の N.さん、チェロの T.さんは、同じオーケストラで長年
活動しておられ、ほんの少し前にお近づきになったばかりです。



 N.さんは "楽器の良心"、"永遠の青年" と呼ばれる方である
のを、後になって知りました。 演奏法について熱い探究心を
抱き続け、私にも真剣な質問を何度か投げかけられました。

 演奏中、私の隣に位置したチェロの T.さんは、極めて安定感
のある、奥行きの深い音で全体を支えてくれました。 短い休憩
中には、何度も "バッハの無伴奏" を手がけておられました。




 この曲は4つの楽章から成っていますが、楽章の順番について
は異論があります。



 その第楽章 "Allegro ハ長調"、第楽章 "Allegro ハ長調"
には問題が無いのですが、間に置かれた2つの楽章の「どちら
が第Ⅱ、第Ⅲなのか」は、今日でも定説がありません。

 使われた五線紙の鑑定などから判明しているのは、第Ⅰ楽章
と "ヘ長調の Andante"
が、また "ハ長調の Menuetto" と第Ⅳ
楽章
が、「対になって書かれた」という事実です。 作曲時期にも
若干のズレがあるようです。



 しかし作曲者自身が、後日これらを組み合わせた際、明確な
順序を指定しませんでした。 そのために、今日でも楽章の順番
が確定していません。

 「調性の配置からしても、"Andante" → "Menuetto" の順が
自然だ」…という説。 これに対して、「全体の流れは "Menuetto"
→ "Andante" の方が良く、作曲者の存命中にも、その形で演奏
されるのが一般的だった」という反論があるかと思うと、「だから
と言って、それが作曲者の望んだ順序だとは断定できない」…
と、議論が尽きません。



 結局、出版された楽譜にも、また実際に演奏される順番にも、
両方の形が併存している有様です。 この論争に将来決着が
付くのかどうか、まだまだ解りません。





       [音源ページ ]  [音源ページ

           Andante からの演奏例
            (談笑の声が入っています)

       (最初の音量が大きすぎることがあります。)

音源をお聴きの際は、他の外部リンクをクリックすると中断してしまいます。




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