MARU にひかれて ~ ある Violin 弾きの雑感

“まる” は、思い出をたくさん残してくれた駄犬の名です。

最後に五重奏曲

2011-06-22 00:00:00 | 私の室内楽仲間たち

06/22 私の音楽仲間 (275) ~ 私の室内楽仲間たち (249)



             最後に五重奏曲



         これまでの 『私の室内楽仲間たち』



         弦楽五重奏曲 変ホ長調 K614




 前回はブラームスの弦楽五重奏曲第2番について
お読みいただきました。

 この日は、休憩後も五重奏曲で、今度は MOZART
奇しくも二人の作曲家の、最後の弦楽五重奏曲が
続いてしまいました。




 Mozart の弦楽五重奏曲は、偽作の疑いが濃いものを除き、
完成年代順に並べると次のようになります。

     第1番 変ロ長調 K174      1773年

     第2番 ハ短調  K406(516b)  1787年
 管楽セレナーデ(Nachtmusique、1782年) K388 (384a) からの編曲

     第3番 ハ長調  K515      1787年

     第4番 ト短調   K516      1787年

     第5番 ニ長調  K593      1790年

     第6番 変ホ長調 K614      1791年



 1791年1月に35歳を迎えた Mozart は、この五重奏曲を
4月に完成し、12月に亡くなりました。

 ちなみに Schubert は、1828年の1月に31歳になり、6月
に弦楽五重奏曲を作ると、11月に他界しています。 それが
最後の室内楽曲になりました。

 Beethoven も五重奏を計画していながら、実現できなかった
と言われています。




 Mozart は20曲以上の弦楽四重奏曲を残していますが、
むしろ「弦楽五重奏曲の方が素晴らしい」と言われること
が珍しくありません。

 同じことは、弦楽五、六重奏曲を2曲ずつ作った Brahms
にも当てはまります。 こと弦楽器の室内楽曲に関しては、
"5" という数字が彼らの理想だったのでしょうか。 Brahms
が第2番の五重奏曲を作ったのが1890年ですから、両曲の
間には100年が経過していることになります。




 第Ⅰ楽章 (変ホ長調、Allegro di molto)。 いきなり2本の
Viola が、"狩のホルン" を思わせる、元気のいいテーマを
奏でます。 これに答える "Violin の下降する動き" は、
全曲に亘ってテーマを形作る、大事なモティーフです。

 快活な 6/8拍子が、終始楽しい気分を盛り上げます。



 うって変って第Ⅱ楽章は、Andante の平和な歌です。 変ロ
長調、2/2拍子。 しかし時折り暗い影が差すばかりか、強烈
な不協和音が現われ、聴く者を驚かせます。

 特に ViolinⅠのパートには、弾きながら「音を間違えたので
はないか…!」と、自分が一瞬びっくりする箇所があります。
仲間の音が動いて解決してくれるまで、音を半音でぶつけた
まま、しばらく鳴らしていなければならないからです。



 第Ⅲ楽章は Allegretto の MENUETTO。 すでに第Ⅰ楽章
で聞かれた "Violin の下降する動き" が、ここではテーマその
ものになっています。 これはどのパートにも等しく現われます。
また上向形も活発に聞かれ、全体は "対位法的なメヌエット"
になっています。

 やはり変ホ長調の Trio は、なだらかなレントラー風の趣き。
これを聴いていると、いつまでも「ビヤホールに座っていたい」
気分になってしまうのは、私だけでしょうか。



 第Ⅳ楽章は、変ホ長調 2/4拍子の、軽快な Allegro です。

 しかし途中に2度も出現するフガートの部分では、テーマの
前半と後半の2つの部分が複雑に絡み合い、演奏者の頭と
指をもつれさせます。




 今回のメンバーは、Violin が私、U.さん、Viola は
B.さんO.さん、チェロ Su.さんでした。



 この曲、実は「あまり弾いたことがない…」という事情
で選ばれたらしいのです。 しかし Mozart を心から
愛する U.さん、「どこかで一度やったことがあります」
とは、さすがです!




       [音源ページ ]  [音源ページ

          第Ⅳ楽章からの演奏例

       (最初の音量が大きすぎることがあります。)

音源をお聴きの際は、他の外部リンクをクリックすると中断してしまいます。




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