MARU にひかれて ~ ある Violin 弾きの雑感

“まる” は、思い出をたくさん残してくれた駄犬の名です。

薔薇好凝作風の作品?

2011-06-04 00:00:00 | 私の室内楽仲間たち

06/04 私の音楽仲間 (269) ~ 私の室内楽仲間たち (243)



           薔薇好凝作風の作品?




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 Borodin (アレクサンドル・バラヂーン) の弦楽四重奏曲に
は、有名な第2番ニ長調の他に、第1番イ長調があります。

 こちらは Beethoven を意識した意欲的な作品で、リームス
キィ=コールサコフ夫人、ナヂェージダに捧げられています。



 それでは、「ロマンチックな第2番は誰に…?」という
と、もちろん自身の愛妻、エカチェリーナにです。 曰く、
『妻への愛の告白20周年記念日』に捧げた…のだそう
ですから。

 大作曲家ともなると、やることが違いますね…。 私
なら逆立ちをしても、せいぜい薔薇の花束でしょう。

 あるいは、ロウバイしながら、「そんな事、言ったっけ」
…と、とボケるか、「最近ミョウガを食べスギちゃってね、
一体ナノハナし?」とゴマかすのがオチです。




 今回取り上げるのは、弦楽四重奏のための『スペイン
風セレナード
』 (Serenata alla spagnola) です。 Borodin
は、これを書いた翌年の1887年に急死しているので、
小品とは言え、貴重な作品が四重奏曲に加わったこと
になります。

 そう言えば、やはり代表作の歌劇『イーゴリ公』も、
交響曲第3番も、共に未完成のまま残されています。
リームスキィ=コールサコフや、グラズーノフの補筆に
よって成り立った作品です。



 このセレナータ、演奏時間は僅か3分。 パート譜で
言えば、ちょうど楽譜の1ページ分です。 単純な三部
形式 (A B A') で書かれているので、各部分はちょうど
1分ずつ。

 その中間部 B (最初の音量が大き過ぎることがあります) が、
なるほどスペイン風です。



 半音階を含む独特の音階。 2つの Violin の絡み合い
は、踊りながら交錯するセニョーラでしょうか。 そして、
カスタネットの連打を思わせる、打楽器的な叩き弓。

 それらが、軽やかな 3/8拍子の Allegretto に乗って
舞い、漂います。




 ところがよく聴いてみると、Viola に与えられた音の数
(音程) が、なぜか大変少ないことにお気付きでしょう。



 Si♭LaFa (低いのと高いの)。 これですべてです。 "音階"
とはお世辞にも言えません。 もちろん、何度も出ては来るの
ですが。

 これ、どういうわけ? 私の Violin パートには、一度に3つ
音を出したり、1小節に6個、音符があったりするのに…。



 続く "最後の1分間 A'" (最初の音量が大き過ぎることがあります)
は、まさに Viola の独り舞台です。 使われている音の高さは
やはり、たった4つしかありません。

 ますます変な曲だ…。




 ところで、私が自分のパート譜に書き込みをしながら、この
曲の準備をしていたときのこと。 その様子を偶然見かけた
方が、私に言いました。

 「これ、聴いたことがあります!」



 驚いた私が、さらに尋ねてみると、「Viola に音符が少し
しか無いので、"自分にも弾けそうだ" と思った」…とまで
言われるのです。

 これ、Violin がとても上手な H.さんの発言なので、
もちろん謙遜しておられるのですが…。




 それに、もっと奇妙なことがあります。



 この Borodin の "Serenata" は、私の手にした楽譜の
8ページ目にあるのですが、1ページ目には、こう記されて
いるのです。

 Ⅰ (Nicolai Rimsky-Korsakow) … と、まず先頭に。



 そして出版社と思われる名が、一番下に。

 M. P. Belaieff Nr.233 …。




  (続く)





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(作曲年代には諸説があります。)




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