MARU にひかれて ~ ある Violin 弾きの雑感

“まる” は、思い出をたくさん残してくれた駄犬の名です。

『眠れる森の美女』組曲

2009-03-27 00:04:51 | 私のオケ仲間たち

03/27  私の音楽仲間 (40) ~



  私のオーケストラ仲間たち

        (17) 『眠れる森の美女』組曲







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               『眠れる森の美女』組曲







 「人生は短く、芸術は長い」、なんて格言がありますね。

 「"くるみ" は短く、"眠り" は長い…。」



 私たち "楽隊屋" は、この偉大な作曲家の三つのバレェを、
白鳥湖』、『眠り』、『くるみ』と呼んでいます。

 短い『くるみ割り人形』でも、二時間弱かかります。 そして
もっとも長い、この "眠り" は、どんなにカットしても三時間を
超えるのが普通です。



 演奏者泣かせのこの曲。 昔々あるところで、公演中に
眠ってしまった人までいました。 嘘のような本当の話です。

 ちなみに、私ではありませんが、かつての私の演奏仲間で、
正真正銘、女性の眠り姫でした。 今どうしてるかな…。




 ところで、もし演奏者でなくて、踊り手がそうなったら…。
きっと迫真の演技になることでしょう。

 王子に接吻されても、なかなか起きないとか…。



 王子役の踊り手も、そのままずっと、とぼけてたりして。 

 「今日の "眠り" はいやに長いな…」なんて喜んだり
しながら…。 けしからん…。

 いくら、本番には事故がつきものと言っても。




 おっと、話を戻さないといけませんね。

 「"楽隊屋" とは何か?」ですって?



 困ったな…。 それは、あなたの先生にお訊きになるか、
それとも検索でお調べください。

 「私の年代は、辛うじてその名残りに属する」とだけ、
申し上げておきます。




 さて、ヴォトカ (ウォッカ) で "よいよい" (宵酔い) の作曲者は、
また大変な "演奏家思い" でも知られていました。
   (私の勝手な想像かな…。)

 「オケ・ピットで寝てしまった日本人がいたとは…。 四時間も
かけて演奏させて、本当に申しわけなかった。 酒も無いのに。」

 そう反省した作曲者は、自身で何曲かを選び、演奏会用の
組曲を作りました。 (なんか変だな…?)



 それは以下の5曲です。



 なお曲順は、バレェ原曲の順番とはまったく異なります。

 よくあることですね、『白鳥湖』にしろ、『くるみ』にしろ。




1. 『序奏とリラの精



 「大変だ、大変だ! 姫が針で指を刺して倒れた!」

 序奏部の激しい不吉な音楽は、この情景から採られています。

 オーロラ姫に呪いをかけた、悪の妖精、カラボスのテーマは、
"半音階の連続" が特徴的です。

 騒然とする城内。 悲嘆にくれる王と王妃。



 音楽が静まり、ハープの響きに乗って進み出るのはリラの精
コーラングレ (コール アングレ、イングリッシュ ホルン) で登場します。

 これは、いわば低音のオーボエで、ちょうど Violin と Viola の
関係に当り、落ち着いた、丸く優しい音色の楽器です。



 リラの精のテーマは、希望の光。 人々から人々へ、様々な
楽器で引き継がれ、音楽とともに期待が盛り上がります。

 ついに銅鑼の響きとともに、リラの精の手にした魔法の杖が
一旋! "死の呪い" は、"眠り" へと和らげられます。

 半音階ばかりだった、カラボスの不吉なテーマにも、明るく
輝かしい "全音階の光" が射し込みます。




 おや、何か変な音が聞こえますよ? 「シュルシュルシュル…」。

 見ると Violin の足元から、何やら生えてきました。 あれよ
あれよという間に、Viola、チェロと、地面のあちこちから。

 やがて城は鬱蒼とした森に覆われ、静かに100年の眠りに
就きます。 姫、王、王妃、廷臣たちを中に抱いたまま。



 そう、細かいトリルのような速い半音階が、延々と続くの
です。 足に纏わりついて身動きが取れないばかりか、
肝心の指までもつれてしまう難所でもあります。

 一緒に眠ってしまっていいのなら、どんなに楽なことか…。




 以上はすべて第一幕の終わりの場面で、この一曲目の
音楽はその部分から採られています。




 音源 ① 静止画像



 音源 ② 第Ⅰ幕の幕切れ場面 (1)



 音源 ③ 第Ⅰ幕の幕切れ場面 (2)




2. 『パ・ダクシオン~バラのアダージョ



 最後まで延々と続く、"つま先立ち" のウルトラE!

 しかし若いオーロラ姫は、難しそうな素振りなど、まったく
見せません。 四人の王子に代わる代わる支えられながら、
一人ずつ手を差し伸べ、求婚のバラの花を受け取ります。
いともにこやかな表情で。

 でも演出によっては、それらをすぐにポイしてしまうのです。

 舞台は第一幕の前半。 オーロラ姫が初めて登場する、
城内の庭園の場面です。




 "パ・ダクシオン" は、直訳すると "動作の踊り、ステップ"
といった意味です。 活発に踊り回るのではなく、静かで
優雅な動作の見せ場なので、こう呼ばれるのでしょう。



 バレエ基礎用語解説には、以下の記述が見られます。

 「物語の筋を展開させるため、パントマイムを含んだ踊り
などで感情の表現を行う場面。」




 音源 ① Margot Fonteyn (オーロラ姫の登場から中途まで)



 音源 ② Margot Fonteyn (TV番組からの抜粋)



 音源 ③ Featuring Alla Sizova and the Kirov Ballet 
      1965
  (オーロラ姫の登場~ヴァリアシオンまで)



 音源 ④ Viviana Durante As Aurora.
      The Royal Ballet at Covent Garden 1995




 音源 ⑤ Alina Cojocaru dancing the Rose Adagio
     from Act 1 of the Royal Ballet's 2006 production

       (1) (2)



 音源 ⑥ Christine Walsh  (オーロラ姫の登場の場面から)



 音源 ⑦ Aurelie Dupont and the Paris Opera Ballet
                  
 (オーロラ姫の登場の場面から)



 音源 ⑧ Maria Kochetkova



 音源 ⑨ カットだらけの短縮版



 音源 ⑩ 静止画像




3. 『パ・ドゥ・カラクテール~長靴を履いたネコと白いネコ



 舞台は、すでに第三幕の婚礼の場です。 二匹のネコの
ユーモラスな踊り。



 えっ! 「ネコの婚礼?」

 違います、いくら何でも…。 私の書き方が悪かったですね。



 ネコは本筋と関係なく、"招待客の一員" という設定になって
います。 『白鳥湖』に "チャールダシュ" や "ナポリの踊り" が
出て来るのと同じです。

 ちなみに "本筋" は、第二幕まででほぼ、完結しています。




 "パ・ドゥ・カラクテール" は "特徴的な踊り" の意味です。



 "カクテルの踊り" ではありませんよ。 それでは
"おんどり (雄鶏) どり" になってしまいますもの。



 それに、すぐに「アサ~!!」になっちゃって、
とてもお酒を楽しむどころじゃありません。



 …さて、そろそろ、マジになって書かないといけませんね。

 でないと、「おんどりゃ~、この~!!!」なんて、叱られ
ちゃいそう…。




 音源 ① Dutch National Ballet



 音源 ② Stephane Elizabe y Laetitia Pujol



 音源 ③ (詳細不明)



 音源 ④ 日中共演ネコちゃん、"尻尾" がありません



 音源 ⑤ Abilene Ballet Theatre のヤンキーねこチャン



 音源 ⑥ 静止画像




4. 『パノラマ



 第二幕の後半。 城はまだ眠りについています。

 それを目指して水面を滑っていくのは、真珠貝の舟。
リラの精に導かれ、デジレ王子が急ぎます。

 幻に見た、オーロラ姫のもとへ…。

 何と幻想的で、見事な音楽なのでしょうか。




 音源 ① 静止画像



 音源 ② 風景の静止画像



 音源 ③ Walk in the green nature.



 音源 ④ 演奏会




5. 『ワルツ



 "眠り姫" と言えばこれ。 最も有名なワルツです。

 舞台は第一幕の後半。 16歳を迎えたオーロラ姫の誕生日
です。 祝宴の場で村の娘たちが踊ります。



 でも、どこに紛れ込んでいるのでしょう、つむ (紡錘、糸紡ぎの針)
を隠し持った老婆は? やがて姫は、遊んでいるうちに誤って
指を刺し、倒れてしまうのです。




 音源 ① kirov ballet w/ vaganova students



 音源 ② dancing forest academy



 音源 ③ (中途から)



 音源 ④ 静止画像



 音源 ⑤ 静止画像 『素晴らしきロシア』



 音源 ⑥ 演奏会




 詳細な解説は、以下の優れたサイトにもあります。




  [オーケストラ・アンサンブル金沢を応援するページ

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 チャイコフスキー ⇒ [バレエ音楽「眠れる森の美女」
                       (全曲)




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      クラシックの部屋 ⇒ [三大バレエ組曲
                        (組曲)




 (この項終わり)