03/21 私の音楽仲間 (34) ~
私のオーケストラ仲間たち (11) シベリウスの交響曲第1番 ②
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前回は、神奈川大学管弦楽団で現在取り組んでいる、
シベリウスの交響曲第1番、その第Ⅱ楽章を聴いて
いただきました。
この第Ⅱ楽章は、アンサンブル上、色々な問題が潜む、いい
実例なので、もう一度ご一緒に聴いてみたいと思います。
もしスコア、パート譜などがお手元にある場合には、ご用意
いただければ幸いです。
いえ、お手持ちの場合の方が少ないと思います。 そのとき
は以下の音源から、様々な楽器が奏でる色々なリズムにも
着目してお聴きください。
ここで取り上げる、曲の前半の部分では、テンポに多少の
変化はあるものの、基本的にはゆっくりな 2/2拍子です。
演奏者はその一拍の中に、様々な数の細かい音符、
色々なリズムを、正確に入れなければいけません。
音源 [Ⅱ]
以下のD~Kは、楽譜に記された練習記号です。
また数字は、(ここで取り上げた音源の場合に限り、)
時間的経過を分、秒で記したものです。
これらは参考に過ぎないので、
目をつぶって聴いていただくだけでも充分です。
曲は基本的に 2/2拍子。 よほどのことが無ければ、大体
どの指揮者も (一小節を) ゆっくりな二つに振ります。
[D (2'22") ] までには、多少テンポが上がっています。
[E (2'35") ]、音量は大きくなりますが、まだ二拍子系です。
[TempoⅠ(2'55") ]、独奏チェロ以外は全員 6/4拍子になり
ます。 指揮者は、ほぼ同じテンポで一小節を二つに振った
ままなので、演奏者は一拍の中に、今度は3つの音符を
入れなければなりません。
[F (3'23") ]の直前に、Violin には八分音符が出てきます。
一拍に6つずつを入れることになります。 さらにその音符
には、"二つ目から三つ目の音符へ" というようにスラーが
ついており、一種のシンコペーションになっています。
この音源の演奏では、プロのオケと言えども、かなりここで
遅くなるように感じられます。 音符の数が正確に入ってなく、
若干はみ出ているのです。 指揮者の指示で遅くなったとも
考えにくい箇所なのです。 私の勝手な解釈では、ここは
むしろ軽やかに聞こえた方がいいと思うのですが、あなたは
どうお感じですか?
[G (3'46") ]の直前から、Viola が十六分音符の装飾音形を、
連続して演奏し始めます。 一拍に12個を正確に入れるのは、
かなり難しい作業です。 直前の八分音符と、無意識に混同
してしまいやすい箇所でもあります。 弾き始めてからでは、
もう遅いのです。
木管にも細かい三連符や十六分音符、ハープにも細かい
音符が出てきて、アンサンブルはだんだん難しくなります。
指揮者は相変わらず二つに振ったままです。
[H (4'08") ]頭に音符の無いシンコペーションが
弦に現われました。 (「遅れているのに気付いていない」
と、学生さんたちが私に叱られてしまった箇所です。)
[Tempo (4'37") ]やっと単純な 2/2拍子に戻ったかと
思ったら、一部のピツィカート弦楽器は 6/4 拍子
(3/2 拍子) のまま。 (但し、音量が元々小さい奏法なので、
よほど工夫しないと聞こえません。)
フルート始め木管には、ソリスティックな細かい音形が
現れます。
[I (4'51") ]を過ぎると、pizzicato の6/4拍子は、いつのま
にか、ホルンのシンコペーションに変わっています。
(この音源ではまったく聞こえません。)
そしてテンポは上がり、
[K (5'33") ]になって、やっとアンサンブルの難しさは
一息つきます。
しかしここで息切れしてしまっては駄目。 この後は、
個々にとって技術的に難しい部分が続きます。 まさに
"追い打ち" !
北国の気候のように激しく変わる、シベリウスの音楽。
これは、後に作曲者自身が認めていることです。
弾きながらそれを聴いて味わう余裕は、演奏者には
あまりありません。 ステージの上で、自然の猛威に
翻弄されっぱなしです。
(続く)