憲法施行70年 解釈改憲を繰り返すな
日本国憲法は3日、施行70年を迎えた。北朝鮮が核・ミサイル開発を進め、就任100日を迎えた米大統領との間で一触即発の緊張感が高まり、内向きのナショナリズムが各国で台頭する―。国際情勢が不安定さを増し、平和について考えさせられる中での節目である。
北奥羽地方も時代の荒波にさらされている。安倍晋三首相が一昨年、憲法9条の解釈を変更し、集団的自衛権の行使を認める安全保障関連法を成立させた。これを受け、陸上自衛隊第9師団(青森市)を中心に組織された国連平和維持活動(PKO)11次隊が、南スーダンに派遣された。先月から順次、撤収作業が始まっている。
青森県内には陸海空の自衛隊に加え、米軍三沢基地もある。9条を中心とした憲法の在り方は、北奥羽地方でもより身近で切実な問題となっている。
そんな中、昨年の参院選で、憲法改正に前向きな勢力が衆参両院で国会発議に必要な3分の2以上を占めた。いよいよ改憲が現実味を帯びている。
ただ、この70年で、憲法が育んだ戦後民主主義は国民各層に定着した。いま政治に求められるのは、憲法の歴史的役割を正当に評価した上で、現実との「ずれ」があるかどうか、冷静に論じ合う姿勢ではないか。
国民の抵抗が少ない課題を選び、取りあえず改憲の実績を作ろうとする「お試し改憲」が好ましくないのは当然だ。
注目したいのは、共同通信が実施した世論調査の結果だ。安倍政権下での改憲は51%が「反対」と答えており、「賛成」は45%だった。9条の改正についても賛否は拮抗(きっこう)している。
これらは、国際情勢への懸念があっても、安易な9条改正へと世論が雪崩を打つわけではないこと。何より「安倍1強」の中での性急な改憲論議には、危うさを覚える人が多いことを示してはいないか。安保関連法を成立させた際、「立憲主義を無視した解釈改憲だ」との批判があったように。こんな解釈改憲を繰り返してはならない。
安倍首相は1日、早期の改憲発議へ環境整備を図る強い意欲を示した。本丸は9条だとの見方が根強い。だが、衆院憲法審査会の論議では、改憲の対象項目として、緊急事態における国会議員の任期延長などが浮上しているという。そこに緊急の必要性があるのか。お試し改憲そのものではないか。
安倍首相が9条改正を目指すのなら、国民と正面から向き合い、言葉を尽くして、支持を広げる努力をするべきだ。
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