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安保審議大詰め 欠陥法の採決許されぬ(京都新聞社説)

2015-09-08 | Weblog

安保審議大詰め 欠陥法の採決許されぬ

27日の国会会期末に向け、安全保障関連法案の参院審議は大詰めを迎えている。与党は来週の採決を目指す構えである。

自民党の高村正彦副総裁は一昨日、「十分に(国民の)理解が得られていなくても決めないといけない」と語った。法案審議が進むにつれて反対の声が強まっていく現状に対し、なりふり構わず押し切るつもりのようだ。

参院での審議は、衆院での政府答弁との矛盾が次々と明らかになっている。「説明が足りない」のではなく、まともに説明できない欠陥法案であることが根本原因と言わざるを得ない。政府は成立をあきらめて出直すべきだ。

例えば、これまで安倍晋三首相が母子の絵を描いたパネルまで作り、集団的自衛権が使える代表例としてきた「邦人を輸送する米艦の防護」である。

ここにきて中谷元・防衛相は「邦人が乗っているかいないかは絶対的なものではない」と言い出した。何を武力行使の理由とするかは「総合的に判断する」とあいまいな答弁に終始している。

「日本人を守るため、自衛隊が米国の船を守る」とした首相の説明は何だったのだろうか。
もう一つの行使例としていた「ホルムズ海峡での機雷掃海」も、イランと欧米などが核問題で合意したことで現実味を失った。

集団的自衛権は本当に必要なのか。結局、政府が法案成立を急ぐのは、軍事予算の削減を自衛隊で補完したいとされる米国の意向を優先しているだけではないか。

参院に提出された自衛隊の統合幕僚長と米軍幹部の会談記録が、その一端をものがたる。安倍首相が米議会で安保法案の成立を約束する4カ月も前に、制服組のトップが夏までに成立するとの見通しを米軍に伝えている。

政府は当該文書の有無を「調査中」としているが、事実とすれば文民統制の観点からも由々しき問題だ。国会は統合幕僚長を招致してただす必要がある。

法案を「憲法違反」とする声は、三権の長である最高裁長官を務めた山口繁氏からも上がった。多くの憲法学者や歴代の内閣法制局長官に続き、「論理的矛盾があり、ナンセンスだ」と断じる。

公明党の支持母体・創価学会や自民党の地方議員にも法案に反対する動きが広がっている。

国民の幅広い支持と信頼をなくして安全保障は成り立たない。政権が法案を白紙に戻すことこそ、冷静で現実的な対応と言える。

京都新聞社説2015/9/8

 



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