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2017衆院選 安倍に告ぐ 日本は主権国家といえるのか? 米軍に「占領」されたヘリ墜落現場 (沖縄タイム)

2017-10-20 | Weblog

沖縄県東村高江で起きた海兵隊CH53大型輸送ヘリの不時着、炎上事故から見えてきたのは主権のひ弱さだった。

 周辺住民の不安をよそに同型機が住宅地上空を飛び、日本政府の自粛要請を米軍は無視した。沖縄県警は「航空危険行為処罰法」違反の疑いで現場検証を再三申し入れているが米軍は聞く耳を持たない。

 気の毒なのは地主だ。迷彩色のテントに海兵隊員が待機し、時折、残骸の周りを見回っている。何の法的根拠があって個人財産を米軍が期間未定のまま占拠できるのか。なぜ警察は現場検証さえ許されないのか。沖縄県も放射能汚染の調査をさせてほしいと申し入れているが、米軍は一顧だにしない。地主には損害賠償が支払われるかもしれないが、その請求書は日米地位協定に従い日本の納税者に回される。

 県警が捜査できない理由を外務省日米地位協定室に聞いてみた。日米地位協定に基づき設置されている日米合同委員会で合意した米軍機事故に対応するガイドランによるという。正式名称は「日本国内における合衆国軍の使用する施設・区域外での合衆国軍用航空機事故に関するガイドライン」。

 2005年4月に日米合同委員会で合意した。きっかけは04年8月に起きた沖縄国際大学でのヘリ墜落・炎上事故。普天間飛行場のフェンスを飛び越えて大学構内に押し寄せた海兵隊員が現場を占拠し、日本政府関係者の立ち入りを一切拒絶した。その対応が行き過ぎだと批判を集め、事故現場の保全・管理、情報交換など日米双方の役割分担をガイドラインで取り決めた。

 その結果が今回の高江の現場の軍事占領なので、ガイドラインはおそらく米軍に排他的な現場管理の根拠を与えたに過ぎないのだろう。合同委員会の構成は日本側が軍事に疎い官僚、米側は軍人たちなので、基本的に米側が同意しなければ何も決まらない仕組みだ。その中身は政治家にも知らされず、一切非公開の秘密会議で決められてしまった。

 ガイドラインによると、消火、救出などの初期対応が終了した後、現場は事故機を囲う内周規制線、周辺立ち入りを規制する外周規制線が設置される。事故機は米側が保全し、内周の管理は日米共同で行うこととした。立ち入りや交通規制を実施する外周規制は地元警察が担当する。内周規制の中に入るためには日米双方の責任者が合意すると定められており、日本側の立ち入り要請を米側は一方的に拒否することが可能な立て付けになっている。まさに沖国大の事故で批判された現場の米軍占領をルール化したような格好だ。

ただ今回は防衛省が自衛隊の専門家を現場に派遣している。おそらく米軍機事故の対応では初めての試みで、外務省もガイドラインによって日米共同の調査が実現したと評価する。自衛官の現場調査が事故現場の安全確認にとどまるだけなら、衆院選挙を意識した政治パフォーマンスに過ぎないとの不信を招く。自衛隊の関与が実効性のあるものなのか注視したい。

 現行の日米合意を駆使すれば日本側の事故機調査も可能なはずである。日米地位協定合意議事録(1960年1月19日)は航空機など米国所有財産の捜索、差し押さえ、検証は基地内外を問わず米側が行うこととしているが、米側が合意すれば日本も事故機などの捜索、差し押さえ、検証ができるとの規定がある。合意議事録、ガイドラインに明記された日本側の権利を行使するかどうかという単純な問題だ。

 関西大学の高作正博教授(憲法学)は「ガイドラインは現場封鎖の役割分担を決めているが、警察による現場検証を拒む根拠とするのは誤っているのではないか」と指摘する。日米地位協定には、犯罪について日米は証拠の収集、提出について、相互に援助しなければならない」と規定され、「相互援助」が求められている。県警は「航空危険行為処罰法」違反の容疑で捜査を行う必要がある。高作教授は「事故機の管理権が米国側にあるにせよ、日米間の合意上は日本の警察権についての制限はないと 解され、県警による検証を妨げる権限は米軍にはないはずだ」と今回の米側の対応に疑問を投げかける。

 おそらく欧州先進国は違った対応をとるだろう。米軍が駐留するイタリアは米軍機でも敢然と自国の警察権を行使する。

 1998年2月にアルプス山脈の渓谷で海兵隊の戦闘機が低空飛行訓練中にスキー場のケーブルを切断し、20人が死亡した事故で、イタリア軍警察は戦闘機を証拠物件として差し押さえた。米側は「合衆国の所有財産である」として返還を求めたがイタリアは「証拠物件だ」と主張し譲らなかった。地元の地方検察官はパイロットを事故翌日に事情聴取、イタリア軍警察はコックピットも調べ、事故発生時の飛行映像記録をパイロットが消去した事実を突き止めた。

 当時のイタリアのランベルト・ディーニ外務大臣は事故直後にマデレーン・オルブライト米国務長官に電話し、「あれは事故ではない。パイロットによる殺人事件だ。裁判権はイタリアが行使する」と激しく抗議した。そして外務省職員に自国で裁判するよう指示していたという。

 検察は米軍機のパイロットを20人の殺人、証拠隠滅の容疑で起訴した。しかし北大西洋条約機構(NATO)地位協定により、裁判権は米側にあるされ裁判所は訴えを受理しなかった。イタリアは自国で裁くことはできなかったにしても主権国家として法治主義を貫いた。

 イタリアも日本も同じ敗戦国だが、何が違うのだろうか。集団的自衛権を行使し、米軍とともに血を流して戦える対等な立場かどうかによる、と論じる専門家が多い。しかし安倍政権が従来の憲法解釈を曲げて集団的自衛権を行使できるよう閣議決定し、安保関連法制も整備したはずだが、米軍の態度は相変わらずで、日本政府の要求に耳を貸さない状態が続いている。

嘉手納飛行場でのパラシュート降下訓練、海外でのオスプレイ墜落事故後に飛行自粛を求める日本側の申し入れを米軍はことごとく無視している。そんな状況をみると、集団的自衛権といった同盟の中身と基地運用は別次元の問題だろうと考える。一般的に自衛隊はイタリア軍よりも戦闘能力は上だと評価されるので軍事力の問題でもない。おそらく両国の違いは外国軍基地を自国の管理下に置くという主権意識ではなかろうか。

 理論的には統治の全能である主権が先にあって国家が出現するといわれる。戦後日本は占領終了と同時に日米安保に組み込まれてしまったため、主権の一部が欠けた状態で戦後の歩みが始まった。それはよく指摘される日本人の依存的な性格にぴったり合致したのかもしれない。

 外国軍を受け入れるときに締結する地位協定は主権のぶつかり合いだ。日本のように領土・領空・領海の一部を排他的に外国軍へ提供する状態は占領下と紙一重だが、東京の上空にはいまも広大な米空軍管制空域が存在することでさえ日本人に屈辱感はないようだ。そして米軍基地と主権の問題に無頓着でいられるのは、国民の多くが基地問題に無関心でいられるのは遠い沖縄の問題だと考えているからではないだろうか。

 オスプレイが本土で低空飛行訓練する頻度が増えており、いつ何時、誰もが事故に巻き込まれるかもしれない。海兵隊員があなたの所有地を占拠し、警察さえ手出しできない状態を果たして容認できるだろうか。主権意識の弱さという戦後日本の病理が「オキナワ」という症状に現れている。病原根絶が先ではないか。
 


2017衆院選 安倍に告ぐ 東京一極集中是正/手詰まり感 かすむ地方再生(河北新報)

2017-10-20 | Weblog

安倍政権が「地方創生」を掲げて3年がたった。

 東京一極集中の是正、人口減少の克服を目指す看板政策に位置付けられてきたが、目立った成果は上がっていない。そればかりか、手詰まり感さえ漂う。

 もちろん、衆院選の各党公約には地方活性化策が並ぶ。与党は省庁地方移転の実証実験、地方が自由に使える一般財源の総額確保などを掲げる。野党も憲法改正で地方分権の考え方を明記することや、正社員を増やす企業への支援強化を打ち出した。

 だが、人口減少に歯止めを掛け、地方再生につながる処方箋は判然としない。地方の有権者がもどかしさを募らせる選択機会にしてはならない。各党の地方戦略の視点が問われている。

 地方の未来を展望するとき、政治がまず手を付けるべきは、東京一極集中の是正に尽きることは言うまでもない。現状を確認しておきたい。

 安倍政権は2014年、転入者の数が転出者を大幅に上回る東京圏(東京、埼玉、千葉、神奈川の1都3県)の「転入超過」を20年に解消する戦略を決定した。

 13年の東京圏への転入者は約46万6千人。転出者は約37万人で約9万6千人の転入超過だった。戦略はこれを起点に転入者を6万人減らし、転出者を4万人増やすと明記。20年に転出入とも41万人で均衡させることを掲げた。

 現実は目標に遠く及ばない。16年の転入超過は約11万7868人。15年より約1489人減ったものの、転入超過は21年連続となった。

 湾岸部では20年東京五輪・パラリンピック関連の再開発が進んでおり、転入超過が再び拡大すると予測されている。目標は修正が避けられず、「絵に描いた餅」と指摘されても仕方あるまい。

 起爆剤として期待された政府機関の地方移転も、掛け声倒れに終わった感が否めない。地方側は観光庁や中小企業庁、気象庁などの移転を要望したが、決まったのは京都に全面的に移る文化庁だけ。背景に官僚らの「東京中心主義」があるのは明らかだ。

 全国知事会は公示前、与野党8党の選挙公約を採点した。地方税財源の充実、地方創生の推進、人口減少局面の打開など知事会が要望した10項目の政策が、どの程度反映されたかを評価した。

 安倍政権の重点政策に関する項目もあり、与党への評価が高い傾向がみられたが、人口減少対策や働き方改革では与野党の評価が拮抗(きっこう)した。ただ、各党が地方創生で論戦を交わす場面は少なく、他の争点の陰でかすみがちだ。

 選挙戦は最終盤に入る。東北の候補者一人一人に望みたい。党の地方政策をリードする気概を持ち、東京一極集中の打破と地域再生の道筋を示してほしい。政治の力が発揮されなければ、「地方創生」はうつろに響くだけだ。


2017衆院選 安倍に告ぐ 北方領土問題 帰属協議の道筋を語れ (北海道新聞)

2017-10-20 | Weblog

衆院選の論戦で、外交の大きな懸案を巡る議論が低調だ。北方領土問題と、その進展に向けた対ロ外交のあり方である。

 安倍晋三首相はプーチン大統領と19回もの会談を重ねてきたが、肝心の島の帰属の問題で目立った進展はない。

 四島での共同経済活動の前提となる日本の法的立場を害さない「特別な制度」も実像が見えない。

 交渉を「島の帰属の確認」という本道に、どう引き戻すのか。

 日ロ両国はきのう、1956年の日ソ共同宣言による国交回復から61年を迎えた。交渉を前進に導く道筋を、各党に問いたい。

 「北方領土、竹島、尖閣諸島の領土・主権に係る第三者機関を設置し(略)客観的事実を世界に広く示します」。自民党の公約は、こう記すにとどめた。

 昨年の参院選では、公約集の4ページ目に日ロ首脳会談の写真を掲げ「ロシアとの平和条約締結交渉を本格化」とうたっていた。

 当時、膨らんでいた交渉進展への期待はその後、ロシア側の態度硬化で一気にしぼんだ。公約の変化はこの後退を反映したものだ。

 首相が強調してきた「首脳間の信頼関係」が、領土交渉に結びつかないのはなぜなのか。選挙戦で納得いく説明が求められる。

 主要野党の公約も、この問題の記述は限定的だ。希望の党は「北方領土返還を目指し」と触れるにとどめた。立憲民主党の公約には北方領土問題への言及はない。

 政権を目指す以上、党としての見解が問われる論点だ。

 北方領土問題と対ロ外交は、選挙戦の焦点となっている北朝鮮情勢とも無縁ではない。

 各党の公約には、北朝鮮の脅威の抑制に向け、ロシアなど各国との連携をうたう文言が目立つ。経済制裁で足並みをそろえ、外交的な手段で北朝鮮を対話の場に引き出す方向ならば、理解できる。

 だが、日本政府の対応はこれまで、米軍との共同演習など、圧力の強化に傾斜してきた。

 一方、ロシアにとって北朝鮮は米国との間の軍事的な緩衝地帯としての意味を持つ。北朝鮮を口では非難しても、日米主導の包囲網に同調しないのはそのためだ。

 日米が軍事的一体化を強めれば中ロとの対立が先鋭化し、外交的解決は遠のくだろう。それは北方領土交渉にも悪影響を与えよう。

 その意味でも私たち有権者は、各党の外交姿勢を、冷静に見極めねばならない。


2017衆院選 安倍に告ぐ 対北朝鮮政策 衝突させない外交を(東京新聞)

2017-10-20 | Weblog

安倍晋三首相は今回の衆院選挙で、対北朝鮮政策を主要な争点として挙げたが、圧力強化を前面に押し出す姿勢が目立つ。緊張が高まっている時期だからこそ、衝突させない外交が求められる。

 安倍首相は各地で行っている応援演説の中で、最初に北朝鮮を巡る情勢に触れ、一定の時間を割いている。

 「この選挙は北朝鮮の脅威に対して、いかにして国民の命と幸せな暮らしを守り抜くのか、それを問う選挙です」「北朝鮮は、話し合いを時間稼ぎに使っている」「脅しに屈してはならない」とも述べた。自らの北朝鮮政策に対して、国民の信を問いたい、という意気込みの表れなのだろう。

 もちろん北朝鮮による弾道ミサイルの発射や核実験は、日本への直接の脅威だ。国連安全保障理事会の制裁決議に対する明白な違反でもあり、許されない。

 しかし、こういった状況が「国難」(安倍首相)というのなら、なぜ解散に踏み切って、わざわざ政治的空白を生んだのか。この疑問は、投票日を目前にしている今も、消えていない。

 もうひとつは、首相が危機を繰り返し強調する、本当の狙いだ。米国との太いパイプや、二〇一五年に成立させた安全保障関連法の必要性をアピールしたいのではないか。

 集団的自衛権の行使容認や米軍支援拡大を盛り込んだ安保法には、「違憲立法」との批判が強い。

 各党は北朝鮮問題について、「国際社会と連携し、制裁の厳密な実施」(希望の党)、「国際社会と連携して圧力強化」(立憲民主党)、「対話による平和解決」(共産党)と、それぞれ求めているが、大きな争点になっているとは言い難い。

 安倍首相の土俵に乗って選挙戦を進めたくないという、各党の警戒感も影響しているようだ。

 一方、安倍首相の発言には「危機をあおっている」という批判が絶えない。このためか首相は最近、「紛争などは決して望んでいない。圧力は北朝鮮の政策を変えさせるためで、勤勉な労働力や地下資源を生かせば明るい未来がある」とも説明している。

 北朝鮮への対応は、選挙後も続く課題だ。十一月に行われるトランプ米大統領の来日時にも、最優先で話し合われるだろう。首相が言うとおり、誰も衝突は望んでいない。外交的な打開策を、今後も粘り強く探るべきだ。


2017衆院選 安倍に告ぐ 加計・森友学園問題 解明せねば政治の信頼失われる(愛媛新聞)

2017-10-20 | Weblog

約束を守る政治家か政党かどうかを見極めなければならない

今回の衆院解散には、多くの国民が今も疑問を感じているはずだ。加計・森友学園問題で、安倍晋三首相は「真摯(しんし)に説明責任を果たす」と言ったにもかかわらず、臨時国会で審議もせず冒頭解散した。問題の核心は、首相や周辺の人々と近しい人物が優遇され、公平公正な行政がゆがめられたのではないかという点にある。民主主義の根幹が問われており、疑惑は必ず解明されなければならない。

 今治市への獣医学部新設の事業者に決まった加計学園は、首相の「腹心の友」が理事長を務める。新設を巡る省庁の文書に「総理の意向」「官邸の最高レベルが言っている」との記載があり、官邸や官僚が首相の意向を忖度(そんたく)し「『加計ありき』で手続きが進んだのではないか」との疑いが噴出した。

 疑惑は、獣医師確保や新学部の必要性とは分けて考える必要がある。首相は、事業者決定に「私が関与したという人は一人もいない」と強調するが、関与が疑われる議員や官僚は「記録も、記憶もない」を繰り返すだけ。記録を示さないことには、説得力を持ち得ない。関係記録を残す今治市や愛媛県も、疑惑を抱えたままの開学を避けるために、また行政の透明化を図る観点からも、自ら記録を公開する責務がある。

 首相は「選挙はまさに民主主義における最大の論戦の場だ」と言いつつ、選挙戦では問題にほとんど触れていない。本紙の県内候補14人へのアンケートでは、獣医学部新設決定のプロセスに関して「透明」「不透明」「その他」から回答を求めたところ、「透明」はゼロ。自民党は4人とも「その他」とし「政府説明が国民の誤解や不信を招いた」「丁寧に説明を尽くすべきだ」などと指摘した。身内からすら出る疑問や注文を、首相は重く受け止める必要がある。

 野党は「獣医学部設置に関する情報は全て公開」「国政調査権を使った真相究明を求める」と公約に掲げる。政府が隠す疑惑の解明に、全力を挙げなければならない。野党の存在意義も問われている。

 国有地が格安で売却された森友学園問題では、財務省局長は「売却価格は適正」と強弁し、交渉記録の文書を求められると「破棄した」と突っぱねた。学園が開設する予定だった小学校名誉校長には、首相夫人が一時就任しており、加計学園と同様に政治の強い関与が疑われる。首相がなすべきは、行政府のトップとして、関連資料を財務省に出させることだ。

 首相は、疑惑に「信なくば立たず」「李下に冠を正さず」との言葉を引き反省の意を示したが、実行しているとは到底言えない。9月の共同通信世論調査でも、79%が政府の説明に納得していないと答えた。信頼は、全ての政治家が最も重視すべき資質である。有権者は聞こえのいい訴えだけではなく、約束を守る政治家か、政党かどうかを見極めなければならない。


2017衆院選 18歳の政権選択 棄権は何も変えられない(高知新聞)

2017-10-20 | Weblog

 明治時代から数えて48回目の今回衆院選は、18、19歳の未成年が初めて政権を選ぶ選挙になる。
 どういう国になってほしいか。将来の暮らしや地域の安心、安全をどう描くか。それぞれ考えを巡らせ、1票を投じてほしい。

 昨年6月、選挙権年齢が「20歳以上」から「18歳以上」に引き下げられた。70年ぶりに参政権を拡大する歴史的改正だった。有権者の広がりは政治への民意の反映を豊かにし、民主主義を前進させる。

 18歳選挙権は昨年夏の参院選から適用され、全国で約240万人が有権者に加わった。現役高校生も投票できるとあって話題にもなったが、その結果は、20代をはじめ常態化して久しい若者の政治離れの現実をあらわにした。

 18、19歳の合計の選挙区投票率は全国平均で46・78%と50%を割り込み、全体の投票率54・70%を下回った。高知県はさらに低い30・93%にとどまり、県全体の投票率45・52%とともに全国最下位に沈んだ。

 地方より都市部の投票率が高い傾向が見られたことから、地方に住民票を残し、都市圏に進学や就職で転居した若者が投票しなかったケースなどが要因に挙げられた。本県は徳島と初の「合区」選挙で、県出身候補がいなかったことも重なり、関心の低迷を招いたようだ。

 だが、若者を遠ざけているのは、政治への日常的な関心や期待の低さが根底にあるとみるべきだ。投票率の低落傾向が続く大人たちが範を示せていない状況もある。

 防災から高校・大学の授業料、医療費、年金・介護さらに外交・防衛まで、その在り方や予算の配分、個人の負担をどうするか―。衆院選は有権者がその役割を託す政党、候補者を選び、多数派が国の針路づくりを担う政権に就く。主権者が政権の形を決める選挙である。

 自分たちのことは自分たちで決めるという、民主主義の意義を広く将来世代にどう根付かせていくか。18歳選挙権の導入は「主権者とは」を学校現場で学ぶ機会を広げた。政治課題を巡る討論や模擬投票など、主権者教育が活発に取り入れられるようになった。

 昨年参院選では18歳の投票率が19歳より高い傾向が見られた。本県でも主権者育成の研究指定校で学んだ高校3年生の6~7割が投票したという。主権者教育の成果といえ、幅広い浸透を期待したい。

 国会では国民の多くが不安を抱く法律や制度を政権が押し切り、強引に成立させる場面が目立つ。政権を監視し、歯止め役を託された野党の存在価値も問われる。

 政治への不信もあろう。かといって選挙権を放棄しては何も変えられない。考えられる限り、ベストの投票先が見当たらなければベターでいい。選挙後に選択を誤ったと思ったら、次の選挙で修正できる。選挙権は幸福探しの権利でもある。