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安倍の戦争法案 まず廃案こそが筋 修正協議は単なる談合(維新の独自案提出)

2015-07-05 | Weblog

維新「安保」対案 「違憲」立法に手貸すな

維新の党の安全保障法制の独自案は政府案との隔たりが大きく、与党側が法案の実質的修正を受け入れるか否か不透明だ。「違憲」と指摘される政府案の採決に手を貸すだけにならないか、心配だ。

維新の党はきのう、政府が提出した安全保障法制関連法案の対案となる独自案を自民、公明、民主三党に示し、安倍晋三首相は衆院特別委員会で「党と党でしっかりと議論されることを期待したい」と、与党と維新との修正協議入りへの期待感を表明した。

維新の独自案は理解できる部分もある。例えば、政府案で「存立危機事態」での行使を認めている集団的自衛権である。

維新案はこれを認めず、日本有事以外で自衛権の行使ができるのは、日本防衛のために活動する外国軍が攻撃され、日本も攻撃される明白な危険がある「武力攻撃危機事態」に限るとしている。

憲法で認められた個別的自衛権が行使できる範囲を見直すことで対応しようとしたのだろう。

個別的自衛権の安易な拡大には反対だが、実際に攻撃される明白な危険を武力行使の要件とすることは、日本の存立が脅かされるとか、国民の生命、自由、権利が根底から覆されるといった政府案の曖昧な要件よりはましである。

また、外国軍に対する後方支援でも「周辺」という地理的限定や「後方地域」「非戦闘地域」という概念を維持するのも妥当だ。

政府案を「憲法違反」と指摘した小林節慶応大名誉教授らが「個別的自衛権の範囲内に収まっている」と、維新案を「合憲」と評価していることも首肯できる。

政府、維新両案の隔たりは大きく、与党側が実質的な法案修正に応じるのは難しいだろう。にもかかわらず、維新との協議に前向きなのは政府案の早期成立に向け、維新から協力を得る狙いがある。

維新が審議拒否や採決を欠席しなければ、政府案への賛成が得られなくても、与党単独の強行採決という批判は避けられるからだ。

維新は今国会で、野党が「一生派遣の人が増える」として反対している労働者派遣法改正案の採決に応じ、結果的に、衆院通過に協力した経緯がある。

憲法学者の多くや、世論調査では国民の過半数が「憲法違反」と断じる政府の安保法案である。

集団的自衛権の行使や戦闘現場近傍での後方支援という「違憲」部分の修正を勝ち取ることなく、政府案の採決に手を貸すだけであってはならない。(7/4 東京新聞社説) 



問題児・維新、安保法案対案提出の本音は、国民のためか、政権スリ寄りか

維新の党が3日、安保法案の対案を与野党に提示した。柿沢未途幹事長は自民党の高正彦副総裁、公明党の北側一雄副代表を個別に訪ね、協議入りを要請。
 
これに対し、高村副総裁は「できるだけ早く国会に出してほしい」と応じ、北側副代表も「独自の案を作ったことを評価する」と好意的だったが、この「維新案」は本当に国民のためになるのか。
 
7日の党執行役員会を経て、国会に提出される見通しの「維新案」。柱は、政府が集団的自衛権行使の要件としている「存立事態危機」に替わり、「武力攻撃危機事態」を新設したことだ。日本を守る外国軍が攻撃され、日本への攻撃が発生する明白な危険がある場合に限り、「自衛隊による武力行使を可能」とした。経済的理由のみで中東・ホルムズ海峡の機雷掃海に自衛隊を派遣しないことや、周辺事態で地理的制約を撤廃しないことも盛り込んでいる。
 
3日の衆院特別委で質問に立った柿沢幹事長は早速、政府案と維新案を対比しつつ、憲法学者たちが「(維新案は)合憲とコメントしてくださっている」と強調。同じ維新の下地幹郎議員も「素晴らしい案じゃないですか」と自画自賛し、中谷防衛相に同意を求めた。安保法案の特別委はいつもはピリピリムードだが、維新議員の質疑ではユル~イ空気が流れ、安倍首相も「(対案提出に)敬意を表したい」とニンマリ顔。テレビ中継を見ていた国民は「憲法違反」と指摘されている法案をめぐる審議とは到底、思えなかっただろう。
 
維新の橋下徹最高顧問は6月に安倍首相と都内のホテルで会談した際、安保法案の成立に協力を求められたという。事実なら、維新の「対案」も単なる“出来レース”なのか。国際NGOピースボートの共同代表を務める川崎哲・集団的自衛権問題研究会代表はこう言う。

「維新案は一言で言うと『奇異』ですね。対案を素直に読むと『集団的自衛権の行使は認めない』『武力行使はあくまで自国防衛のための個別的自衛権のみ』という内容です。つまり、政府案の根幹を真っ向から否定しているわけで、審議するとなれば、単なる修正協議で済む話ではありません。この対案通りの考えなら、本来は政府案の廃案を求めるのが筋なのに、対案を国会に出して話し合おうと言っている。対案の中身と行動がチグハグです。うがった見方をするなら、対決姿勢を国民に示しつつも、単独の強行採決を避けたい与党に最後は擦り寄るのではないかと勘繰りたくなります」

維新は、改正労働者派遣法案をめぐって土壇場で与党に擦り寄った“前科”があり、安保法案でも“再犯”を犯す可能性は十分、考えられる。

与党は安保法案を15日にも衆院特別委で採決し、16日の衆院本会議で可決させたい考えだが、維新は最後の最後でどう動くのか。“本性”が見えるのはその時だ。

 
2015年7月3日 日刊ゲンダイ