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うめと愉快な仲間達

うめから始まった、我が家の猫模様。
犬好きな私は、チワワの夢を見ながら、
今日も癖が強めの猫達に振り回される。

チャー坊との、最後の青空

2023年07月25日 | チャー坊のこと

前回の記事に、

コメントを下さった皆様、

誠にありがとうございます。

何度も何度も、ありがたく拝読いたしました。

 

おはようございます。

7月24日、月曜日。

チャー坊は昨夕から呼吸が荒い。

私は一晩、チャー坊に付き添っていたが、夜は乗り切った模様だ。

かずこをデイサービスに見送ってから、父に、

「何かあったら電話して」と伝え、出社した。

今日ぐらい休もうかと思ったが、

「ど根性のチャー坊のことだもん。今日も乗り切れて、また徹夜になるかもしれない。」

という期待があったから、この日は会社を休まないでおこうと考えた。

 

11時54分、スマホが鳴った。

父からだ。

「チャー坊がおかしい。すごい声でギャッと叫んだ。」

私は急いで会社を出て、実家へ向かった。

 

約10分後、チャー坊は何度か、カッカッと口を開ける。

私は、チャー坊の背中を擦りながら、

「チャー坊、来たよ。チャー坊、もう逝っていいよ。」

と何度も声を掛けた。

 

5分ほど経ったろうか。

チャー坊が動かなくなった。

私はチャー坊をペットシーツに移したが、

カーペットにもペットシーツにも、濡れた個所が無い。

最後は、だいたい失禁するものだけれど、それが無い。

「チャー坊?死んだよね?」

そう言って、チャー坊をジッと見ていると、耳がぴくぴく動いた。

鼻に指を当てると、微かな風が吹く。

「まだ生きている!」

 

私は、微かに生きているチャー坊を抱き上げて、

台所の窓辺へ向かった。

「チャー坊、日向ぼっこしようね。」

私とチャー坊にとって、昼は特別な時間だった。

チャー坊が、まだ会社に住み着いていた頃、

私達にとって、昼休憩の時間は日向ぼっこをする時間だったのだ。

「チャー坊、気持ちいいね~。」

と話しながら、地べたに座り込んで一服する私に、

チャー坊は寄り添って、私達は同じ空を見上げ、同じたんぽぽを眺めた。

 

台所の窓辺に座り込み、だらんとしたチャー坊を膝の上に乗せ、

壁の時計を見たら、12時10分だった。

それは丁度、会社の外階段の階下で待つ、チャー坊のところへ、

駆け下りていた時間だった。

「チャー坊、気持ちいいね~。」

見上げた空は、私達がいつも見上げていた空と同じ、真っ青だった。

私は、チャー坊を膝の上に抱いて一服していた。

気付けば、チャー坊は息をしなくなっていた。

いつだったか、正確な時間なんて分からない。

ただ、それに気づいた時、時計は13時を示していた。

「チャー坊、終わっちゃったね。」


125日目の君

2023年07月23日 | チャー坊のこと

あと、もう少しだ。

チャー坊、あと、もう少しだからね。

私は、そう声を掛けた。

 

おはようございます。

チャー坊は、そろそろ準備を始めた。

あと、もう少しで逝ってしまう。

 

逝かせてやらないと。

いやでも、また復活してくれるかもしれないじゃないか。

 

そんな思いが交錯している。

だから私は、今日も昨日と変わらず、

チャー坊の内耳に縊り付いて剥がれない汚れを拭いてやるのだ。

何年分か分からない、漆みたいな頑固な汚れだ。

それを綺麗にするには、とっても時間が掛かるんだ。

いつか・・・いつかピカピカの綺麗な耳になりますように。

そう願いながら耳を拭いていると、チャー坊は気持ちよさそうに顔を上げる。

まだ、反応がある。

いいぞ、チャー坊!

流石だ、チャー坊!

 

だけど、もう、強制給餌はしない。

 

チャー坊、もう少しだからね。

 


それでも、僕を愛せますか?

2023年07月14日 | チャー坊のこと

それでも、

あなたは私を、愛せるか?

 

おはようございます。

通院の回数を重ねるたび、チャー坊は私の眼を見なくなった。

チャー坊が私を見る眼差しは、いつだって柔らかな春の日射しのようだ。

いや違う。

春の日射しの中で、愛おしい人を見つめる眼差しだ。

私は、その眼差しを失い、狼狽えた。

それまでだって、じゅうぶん狼狽えていた。

彼と出会ってから、私はずっと狼狽えていたのだ。

ぎょっとしてしまうほどボロボロの野良猫だった彼にも、

次から次へと、あらゆる症状で体調を崩す彼にも、

狼狽えながら、奔走していた。

けれど、彼が私を見なくなったと気付いた時、

私はもっとも狼狽え、それと同時に、

一瞬、世界が真っ暗になって、時が止まった気がした。

それは、瞬きの速度だった。

次に瞼を開けた時、

私が彼と出会って以来、過ごしてきた時間の体感速度の変化を感じた。

目まぐるしくグルグル回っていた時計の針が、ゆったりと動き始める。

そんな気がした。

「よし、チャー坊。もう病院へ行くのは、やめよう。」

 

あれ以来、私はチャー坊を病院へ連れて行かなくなった。

その代わりに、獣医さんに来てもらうようになったかんね~。

チャー坊、ごめんよ~。

 

そんな訳で、

うんこの最期を診て頂いた往診専門の獣医さんに、

チャー坊もお願いすることになったのだ。

さっそく、第1回目の診察、私はこれまでの治療内容を

表にまとめて獣医に渡し、笑顔で説明をする中、

本来は和やかなはずの獣医は、クスリとも笑わない。

非常に厳しい面持ちだった。

私は、あれ?っと思った。

可愛いエリカラのことも、愛らしいチャー坊のことも、

「可愛いですね。」と言ってくれない。

その代わりに、

「皮膚も、かなり薄くなってますね。

脱毛は、真菌のせいというより、ステロイドの影響が大きい。

この量のステロイドを飲まないと保てない状態ということなのですね。」

その時、私は改めて彼を眺めてみた。

どう見たって、可愛い猫じゃない。

出会った時、ぎょっとした時の彼より、ぎょっとする見た目になっている。

私は無意識に、

「本当に、良い子でね。本当に、性格の良い子なんです。」

と、まるでいい訳のように必死でチャー坊を褒めていた。

「優しいですね。」

そう呟く獣医の心境が、その時の私には全く酌めなかった。

 

いいさ、いいよね、チャー坊。

これから、獣医さんをいっぱい、笑かしてやろうよ。

私とチャー坊なら、できるよ。

いや、私とチャー坊と、ボケたババァなら、最強さ。

 

相変わらず、気の合うババァとチャー坊。

 

昨夜は、お刺身もらって、爆食いしたな~。

 

チャー坊?

ひとつ、分かったことがある。

私は、その眼差しを、守りたいということ。


タンポポみたいな猫

2023年07月03日 | チャー坊のこと

タンポポみたいな猫だ。

 

おはようございます。

7月はうんこだ。

うんこを花に例えると・・・それは難しい。

そもそも、うんこは目の開かない頃から私の子だったから、

外で咲く花なんて、見たこともない。

うんこは、花というより、都会のOLさんみたいな、そんな猫だった。

 

タンポポみたいな猫というのは、チャー坊のことだ。

3月初旬、まだ寒い道端に咲くタンポポを私達は眺めていた。

缶コーヒーを飲みながら一緒に見た、タンポポと澄んだ青空を私は忘れられない。

あの頃のチャー坊は、今より痩せて汚れていたが、

うんと頼もしく見えた。

「君は、タンポポがよく似合うね」

私は、チャー坊にそう声を掛けた。

 

3月は、とても寒かったけれど、

抱き合って温めてやるなんてことは、してやれなかった。

地べたに座り込む私の足に背中を寄せる程度が、

あの時のチャー坊が知っている、暖の取り方だった。

 

今、チャー坊の体調は、かなり厳しい。

罹った真菌は、一旦改善を見せつつあったが、

この数日で、また一気に悪化した。

自己免疫が下がっているせいだ。

インターフェロンを投与しても、以前のようには復活してこない。

ただでさえストレスが最も良くないと言われるダブルキャリアに、

嫌な処置が続く。

それでもチャー坊は、「いい子だね」と声を掛けると、

私の眼を見て、喉を鳴らす。

「ぼく、いい子?」と問いかけるように見上げるから、

「いい子だよ」「ぼく、いい子?」のやり取りが止まらない。

 

タンポポが咲く頃、私の足で暖を取っていたチャー坊は、

今では私に全身を委ねてくれる。

こんな暑い最中だというのに、私に抱かれて喉を鳴らす。

病院での輸液や注射も、投薬も塗り薬も、まったく手こずる事がない。

「あなたのすることを、ぼくは信じる」

チャー坊は、そう言っているように見えさえする。

その懐の深さに、私はやっぱり、頼もしく思える。

そして、それ以上に、やるせない、切ない気持ちに押し潰されそうになっている。

 

ついに、チャー坊がタンポポになったみたいだ。

体を舐めないようにダメ元で装着してみたが、

チャー坊はそれも難なく乗り越えたもんね。

よし、チャー坊、次へ行くぞ!

前へ進んで行こう、一緒に。


長い昼間と101日目

2023年06月28日 | チャー坊のこと

昨夜、

また電話が鳴った。

 

おはようございます。

最近のかずこは、電話魔だ。

「まだ電話の機能が使えるなんて、凄いねぇ」

思わず、そう母に感心するほど、認知症は進んでいる。

ただ皮肉にも、電話魔になるというのも、進行の過程でよくある症状らしい。

 

仕事中に何度も何度も電話を掛けて来ては、

「わしの車はどこ行ったんや!」

と怒り狂ってみたかと思うと、

「一緒に買い物行くか?」

と誘ってきたりと、かずこの脳内は目まぐるしい。

私は、スマホが鳴るたび動悸を起こすようになっていた。

そのくせ、電話の最後に毎度必ず、かずこが言う、

「ほんじゃな。」

の響きが好きだった。

 

ところが、ある日、

スマホが一度も鳴らない。

スマホから離れて戻るたびスマホを確認しても、かずこからの着信は無い。

その日は、やけに昼間が長いと感じた。

「母さんは、何をしているんだろう?」

私は、鳴らないスマホの液晶に表示された日時をおもむろに見て、気が付いた。

「あっ、今日は夏至か。」

やけに昼間の長い日、

私は鳴らないスマホを見つめて、かずこの「ほんじゃな。」の響きを思い起こした。

切なくて温かな響きだ。

まるで昔、恋人が

「またね。」と笑顔で手を振った時、恋の終わりを予感させた時みたいに

切なくて温かな気持ちになった。

この人とは、きっともうすぐ、会えなくなる。

ならば、素敵な最後を迎えようと心に誓った響きだ。

 

夏至の日以来、かずこからの電話はぱたりと無くなったのに、

昨夜は久々に電話が鳴った。

チャー坊を実家に保護して以来、夜は実家で過ごしている。

昨夜も実家から帰ってきて、30分もしないうちに、電話が鳴ったのだ。

そんな奇行は、かずこにしか出来ないことだ。

「はい、なに?」

そう、恐る恐る電話に出ると、相手はかずこではなく、父だった。

しかも、電話口で爆笑している。

父さんまで壊れたか?と卒倒しそうになったが、

「おぉぉ、おらぁ今、どえらい大変になっとるぞ~。

チャー坊が、おれの布団でションベンしやがった~あーっはっはっは」

という父の言葉に、私は別の意味で卒倒しそうになった。

チャー坊が、粗相した?!

これは、えらいこっちゃ。

「どうしよう?どうしよう?」

よりによって、潔癖症の父さんの布団に粗相してしまった。

私は、考えを巡らそうと、チャー坊の闘病日記を見返して気が付いた。

「あっ、今日で100日か。」

昨日は、チャー坊を保護して100日目だった。

私は、100日実家へチャー坊に会いに行ったということになる。

そして100回、

「また、明日。」と言って実家を後にしたわけだ。

私は、終わるのが怖くて、だから必ず、

「また、明日。」とチャー坊に約束をする。

これもまた、恋の終わりを予感させる響きに似ている。

 

チャー坊?

 

また明日。

って、今日も始まるぞー!

かずこ、チャー坊、待ってろよ~!!