ブラッドランド 上: ヒトラーとスターリン 大虐殺の真実 (単行本) | |
Timothy Snyder,布施 由紀子 | |
筑摩書房 |
本書の題名の「ブラッドランド」とは流血地帯という意味です。
本書の著者は、二十世紀半ば、ナチスとソ連の政権は、ヨーロッパの中央部でおよそ1400万人を殺害したといいます。この犠牲者が死亡した地域すなわち流血地帯(ブラッドランド)は、ポーランド中央部からウクライナ、ベラルーシ、バルト諸国、ロシア西部へと広がっていて、この1400万人という人数には兵士はひとりも含まれていません。ほとんどが女性か子供、高齢者だったとされています。この人々はすべて戦争ではなくて"殺害政策"の犠牲者です。意図的な飢餓、放火、銃殺、ガス刹等々。ナチスの国民社会主義とスターリニズムの強化が進められた時代(1933―38)から、ポーランドの独ソ分割統治(1939―41)、独ソ戦争(1941―45)までのあいだに、歴史上類を見ない集団暴力がこの地域を襲ったのです。この地で起きた未曾有のジェノサイドの全貌が、いま初めて明かされる。
きみの金色の髪、マルガレーテ
きみの灰色の髪、シュラミット
――パウル・ツェラン『死のフーガ』
すべては流れ、すべては変わる
同じ囚人列車には二度と乗ることができない
――ワシーリー・グロスマン『万物は流転する』
どこかの誰かがたったひとりで、黒海で溺れた
許しを乞う彼の祈りを聞いた人はいない
――ウクライナ民謡『黒海の嵐』より
都市という都市が消滅する。自然に代わり
非存在に対抗しえたのは、一枚の白い盾のみだ
――トマス・ヴェンクロヴァ『アキレウスの盾』
以上