たそがれオヤジのクタクタ山ある記

主に北関東の山を方向音痴で歩いています。山行計画の参考にされても責任は負いかねます。深慮せず軽く読み流してください。

新薙経由で太郎山

2010年06月26日 | 日光周辺の山
◎2010年6月25日(土)

 天気は、午前中は何とか持ちそう。日光の太郎山に行ってみることにした。25年ぶりに訪ねる山。苦い思い出がある。その頃、ハガタテのルートが一般的だったので、ハガタテから登り、小太郎から太郎へと向かった(今は通行止めになっているようだ)。そして、太郎山でいきなりの雷雨。岩場の陰でしばらくうずくまっていたらおさまった。いざハガタテから下ろうとしたら、一帯が鉄砲水から発生した土石流で、下りるに下りられない。当時、新薙コースがあったのかどうかは思い出せない。そんな機転もきかなかったろう。かなり慌てふためいた。ハガタテに沿って樹林を下ろうとしたが、方向感覚を失い、延々と急な斜面をさまよいながら下った。途中、何度も自分の人生もこれで終わりかなと思った。遺書めいたものを残そうと、メモ帳に何やら書き込もうとしたが、手が震えて字もかけない。そんなことをやっているうちに、トラックのエンジン音を聞き、志津林道に下りたことを知った。以来、太郎山は一種の魔の山で、好きなのに行けない山になっていた。

(樹林の一角が開けて山頂が見えた)


 今日は、別の目的もあった。日光修験の「寒沢宿」跡の探索も兼ねている。ネットで調べたら、この新薙コースの1,900m付近にテープの目印があり、ここから小真名子山と太郎山との鞍部を目指して北東にしばらく行けばいいらしい。地図の上では簡単なのだが…。太郎山林道タカノス沢の砂防ダム前に駐車地がある。4台が限度といったところだろうか。すでに2台、手前の空きスペースに1台、駐まっていた。7時42分に歩き出す。結局、前回の鳴虫山と同じような時間になってしまった。今日は、志津林道の入り口探しに手間取ってしまった。登山口は林道のすぐ先の右手にあった。しばらくは樹林帯。傾斜は緩やかで、しっかりした道がついている。標識板やテープも豊富。迷うことはない。新薙だから、いずれは薙ぎに沿って歩く形になるのだろうか。やがて急になり、道もくねくねしはじめた。しばらく行くと、左手が開け、太郎山が見えた。下はガレている。そろそろ薙ぎ歩きかと思ったら、また樹林歩きに戻った。ここは、例外にもれず、シャクナゲが豊富な山だが、最後まで、苦しめられることはなかった。こんなのばかりだったら、シャクナゲに獰猛さを想起することはないのだが。

(ここが寒沢宿への入口)

(テープはこれでおしまい)


 腕時計のプロトレックの高度計が、今日はあてにならなくなっている。天気が悪くなっているため、気圧も下がりつつある。戦場ヶ原で確認したら、実際よりも60m高度が低くなっていたが、今はもう100m近い差になっている。これが山頂に着いた時は120mになっていた。表示が1,800mになった辺り(標高1,900m付近)、右手の木に黄、赤のテープが3本巻かれていた。これだな、寒沢宿への道標は。8時25分。歩き出しから40分ほど。コンパスを北東に向けて踏み込む。灌木帯だから、ヤブにはなっていない。木がひっかかるほどの密な状態でもないので、歩きやすい。その分、そこいら中に踏み跡があるように見える。赤のテープが続いている。なんだ、これだったら楽勝じゃないのと思っていたのは束の間。テープが忽然と消えた。探し回った。しかし、どの先にもない。足下を見ると、一升瓶やビール瓶がかなり捨てられ、埋もれている。つまり、ここには以前、飯場でもあって、その案内のためのテープだったのじゃないのか。仕方がない。北東に向けて再び歩き出す。踏み跡をたまに見かけ、それを追うが、どうも北寄りになってしまう。また北東方面に修正。この繰り返し。涸沢に出会い、これを越えていいのか迷いながら越えてみる。ますます分からなくなった。自分のいる位置が、地形図を見てもまったく不明。戻るか。こういったルートファインディングは自分には向かない。しかし、やはり予想通り、すんなりとは戻れなかった。右往左往しながら、9時10分、登山道に復帰。45分の彷徨で終わってしまった。でも、これ以上歩いていたら、ハガタテの二の舞になっていたかもしれない。

 寒沢宿跡は地形図上で1,879mポイント付近らしい。その近くを、日光市と旧栗山村の境界線が走っている。普通、境界杭がポツンポツンと置かれているはずで、これがあれば、小真名子山から2,034mピークを越え、杭を追って行くという手があるだろう。杭があればの話だ。テープよりはより確実だ。駐車地のタカノス沢から入れるかもしれないが、いずれにしても、方向感覚が弱い自分には無理であることが分かった。GPSでも持参していたら行けたかもしれないが、これは負け惜しみというもの。

(展望スポットから男体山)

(トラバース)


 登山道から歩き出し、すぐ目の前を犬連れの方々が歩いている。犬に引かれている感じ。その前を2人連れ。いずれも疲れた感じ。あっさりと抜いたが、自分も彷徨で汗だくのうえ疲れている。上から犬連れの単独が下りて来る。犬連れが多い山だね。下から犬が来ますよと言ったら、じゃ、ここで待機と、休憩に入っていた。しばらく単調で急な上りになるが、一向に薙ぎの縁を歩くようにはならない。トラバースが2度ほどあっただけ。自分の勘違いだった。ここは、薙ぎの脇の樹林帯を登るコースだったんだ。ハガタテと同じような、むき出しの薙ぎ歩きのコースかと思っていた。ところどころに展望スポットがあり、男体山から大真名、小真名、帝釈山、女峰山が間近に迫り、見る度に、それぞれの山頂が自分の目線に近づいてくる。風があって気分がいい。やがて中禅寺湖が見えてきた。その向こうには皇海山。

(お花畑)

(太郎山山頂)

(日光白根山)

(於呂倶羅山、高薙山、温泉ヶ岳方面)

(大真名、小真名山方面)


 10時、お花畑。お花畑とはいっても、ここは年間を通じて、ただの平地らしい。その上の太郎山は、さも高山といった感じの植生に見える。大岩の間をくぐり、また急登。左に小太郎、山王帽子への分岐。ここで、また忘れものに気付く。大岩の間にお地蔵さんがあるはずだけど、確かめなかった。帰りに見よう。10時15分、山頂到着。4人いた。展望は最高。つい、先日歩いた高薙山をまず探してしまった。ここからでは見下ろす感じ。興味がなければ、於呂倶羅山も高薙山もだれも知らない山だろう。北寄りの遠くに、雪の付いた山塊が見える。飯豊山だろうか。おにぎりとパンを食べて一服。寒いくらいの風。追い抜いた2人連れが上がって来た。

(小太郎山から太郎山)


20分の休憩後、小太郎山に向かう。一旦下り、また上がる。険しい感じの小ピークがあり、そこに剣ヶ峰の表示板があった。小太郎山のピークは、太郎山ほどの広さはないが、ここからだと、中禅寺湖も間近に見え、太郎山よりも展望はいいかもしれない。ここも、全国の修験者が来るのか、那智の行の御札が三角点に納めてあった。上からポツリと雨が落ちてきた。ちょっと急いで下らないと。太郎山の直下の分岐から戻る。往復にかけた時間は14分、17分。ポツリポツリの間隔が短くなった。

(お地蔵さん)

(駐車地)


 岩の間を通る際、右手の大岩の下にお地蔵さんがいた。阿弥陀如来と、ネットに記されていたが、ちょっとぴんとこない。ひたすら下る。結構、上がって来る方々がいる。まだ11時台だ。8人くらいと行き交う。いずれも男性で、高い年齢の方々。小太郎に行っている間に下山した方々を抜く。急なところは、ロープもあるが、ちょっと手間取っている。たんたんと下って12時15分、駐車地に到着。雨も樹林の中ゆえ、何とかかわしたが、結構、降っている。車が空きスペースを入れて8台になっていた。地元の宇都宮ナンバーは2台だけ。さすが300名山といったところだろうか。千葉ナンバーのワゴン車があった。この車には見覚えがある。志津林道に入れず、グルグルと回っていた時、この車としきりに行き会った。オレよりも時間がかかって到着したみたい。

 雨が強くなることを願った。それには理由がある。実は、帰りに、志津林道との合流に車を駐め、今度は大田和宿跡を探すつもりでいた。ここは、林道からそれほど入らないで行けそうだ。宿跡の探索にこだわる理由というのもある。宿の跡は、石祠があるだけのものが多いのだが、大田和宿も寒沢宿跡も、石仏や遺構もセットされて残っている。だから見たかった。ただ、寒沢探しの彷徨があったばかりだから、まったく自信がなくなった。改めて、慎重にGPSなり持参した上で行きたいところだ。そのためにも、今の雨は、まだ合羽を着込む程のことでもなく、行けない理由作りのためにも、本降りになって欲しい。願いがかなって、本降りの手前程度にはなった。ほっとした。上辺は、残念ながらそのまま帰るといった体裁を装う。志津林道に合流すると、雨は上がった。もう迷うことはなかった。シラを切るといった状態だ。先の広場に車を駐め、湯を沸かして、カップラーメンを食べ、そのまま帰った。

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2 コメント

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Unknown (ぶなじろう)
2010-06-28 22:28:41
曇天の中、お疲れ様です。

私も、20年ほど前にハガタテから太郎山に登りました。さすがに土石流には出会いませんでしたが、下りのイヤだったことが頭から離れず、それ以来ご無沙汰です。以来太郎山は、戦場ヶ原や高山の肩から眺める山となったのです。
例の本を読み、寒沢の宿経由で登ろうかなと思っていた矢先です。たそがれオヤジさんをして寒沢の宿に辿り着けなかったということは、意外です。余程、心して出かけなければいけないなぁと、思いました。
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ぶなじろうさん (たそがれオヤジ)
2010-06-29 08:41:11
おはようございます。
そうでしたか。ぶなじろうさんも狙っていらしたのですか。でしたら、その報告を待って行けばよかったですね。
むしろ、私だから行けなかったのでしょう。私が取り付いたところからは、とにかく北東にひたすら、のようです。踏み跡やらテープに邪念をとられてしまいました。
記事の中で軽く記してしまいましたが、小真名子山付近にある日光市と旧栗山村との境界線は、後で調べると、岩峰やらヤブが多くて、何やら危険な気配のようですね。
ぶなじろうさんのご報告を待っています。参考にして、今度は、寒沢宿跡だけを目的に行きますよ。今回は、太郎山山頂といった別目的も共存しましたから、さっさとこちらに逃げてしまいました。
新薙の下部に見捨てられたお地蔵さんがあるようで、これだけ見られなくて、ちょっと心残りでした。こちらも次回回しです。
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