001:初
初めての冬の距離感ふたりには雪が降ります 寄り添いなさい
002:幸
とおく種であったころの幸せを砂丘のすみから植えてゆきます
003:細
昭和史をほどいてみれば群青のひかりのような飴細工あり
004:まさか
よく冷えたアクエリアスの気泡からまさかのような夏がはじまる
005:姿
姿見のなかのわたしは嘘つきだ嘲るような薄いくちびる
006:困
困惑をとおいひとから受け継いで星空を落下するペガサス
007:耕
愛なんてこれっぽっちもありませんもう耕すのは止めてください
008:下手
下手くそなピアノでいいね白鍵はあなたのために黒鍵はわたしのために
009:寒
あきらめた温もりのよう蒼白の寒暖計を手にとる夕べ
010:駆
しおさいのあなたを求め呼吸するわたしの内に疾駆する馬
011:ゲーム
終わらない椅子取りゲームの会場にあしたのような籐椅子を置く
012:堅
堅い人だらけの街の夕暮れに海月のような思いを伸ばす
013:故
故郷のオーケストラが現われて忘れかけた田園を奏でる
014:残
思い出は残るのですか ここはもう涙のような潮騒のあと
015:とりあえず
とりあえずともしてまわる蝋燭にねがいのようなちいさな炎
016:絹
絹糸を夕日にあてる一日がそれはやさしく終わろうとする
017:失
失望を幾つ許せば春の日のわたしは羽根を持てると言うの
018:準備
スケボーの車輪のひかり公園に初夏の準備をはじめる予定
019:層
悲しみのアンモナイトの貝殻はやがて地層に抱かれていた
020:幻
無くしても見つければいい永遠の幻灯機からあふれでる星
021:洗
Tシャツを洗い終えたら灯台の風のたもとで夏を待ちます
022:でたらめ
でたらめに空の光を追いながらああこれはたぶん僕の星座
023:蜂
蜜蜂の羽音の響くその先は無くしたはずの花なのでしょう
024:謝
もう一度すべてのひとに感謝祭忘れぬようにパレードの列
025:ミステリー
真夜中の小麦畑の地図を手にミステリーサークルを探す旅
026:震
携帯の震えはむかし水晶のころにかわしたとおい約束
027:水
まちがえて水力発電このダムのふかみは碧い森の悲しみ
028:説
きらきらとまわる猫の眼真夜中の天動説を示しはじめる
029:公式
公式にならないように海鳥をみなみの島のみさきに放つ
030:遅
寄り道をしたのでしょうね山肌をあなたの声が遅れて届く
031:電
真夜中をぶーんって泣いているのですクリーム色の電気メーター
032:町
こんなにもさびれた町のすみっこに赤いポストが笑顔のようだ
033:奇跡
めをとじてあけたら青き翅ひろげ奇跡的から蝶になります
034:掃
帚星76年越しに現れてスペースデブリを掃くのでしょうね
035:罪
真っ白な罪があるなら答えまで手をとりあって眠りましょうね
036:暑
ただ夏の暑さが記憶ひまわりの高みは何処にふれようとする
037:ポーズ
押しましょうどちらともなく明け方の瞳のようなポーズボタンを
038:抱
歩こうと水の小道をあしたまでほそい身体の抱きあいながら
039:庭
捨てられた庭師のはさみ忘れたらもう薔薇園は満開でしょう
040:伝
とどかない空のむこうにあるようなあなたの国へ伝書鳩 飛べ
041:さっぱり
駆けてゆく野生のような踝をきれいさっぱり忘れてしまう
042:至
坂道の下りの速度 風×高み また夏へ至る麦藁帽子
043:寿
寿の字を書くようにお父さんまた桃の表面を撫でている
044:護
お祈りを言い間違えた夕暮れの護るものから薄れてゆくの
045:幼稚
幼稚園バスの窓から夏空の青い帽子の飛び跳ねる朝
046:奏
奏でようと低音部から湖底まで沈んでゆくの鉛のペダル
047:態
君のないリビングルームに何時までも朝の擬態を止めないのです
048:束
大切を分けてください空白のクリアファイルの束を抱えて
049:方法
方法を見つけました。と、月光の観測師からメールが届く
050:酒
満たしてもわたしはグラス日本酒のいっそ透明になってゆきます
051:漕
三月の声を忘れた漕ぐ舟の喫水溢れ 眠れ あなたよ
052:芯
やわらかな夜中のように3Bの鉛筆の芯を研いでいるの
053:なう
残照の鋭い軌跡ガラス窓 ああ、曲面のカーテンを なう
054:丼
満月をもとめるように食べかけの牛丼におとす生卵
055:虚
虚構 あるいは海の彼方へとわたしをつれて霧笛を鳴らす
056:摘
みどり摘む呼吸するはず領域を手のひらの上 深呼吸する
057:ライバル
雨ふる日きみの背中に寄り添えてレインコートのライバルになる
058:帆
帆船ならみなみへむかう風の日のきぼうを孕みおすすみなさい
059:騒
ただ、海鳥の子守唄ならあるとして 耳をすませば消えた潮騒
060:直
実直なひとあらわれてまっすぐな手を伸ばすから 繋がればいい
061:有無
言い出せなかった有無が流星群 誰も知らない夜空に消える
062:墓
ガリガリ君の当たり棒なら夏の日の記憶の中の金魚のお墓
063:丈
背高泡立草の丈に近づく約束を秋になるまで忘れないでね
064:おやつ
ひかりから呼ぶ声のする公園に未来のようなおやつ抱えて
065:羽
観覧車 雲に近づく夏空の羽根があったら飛ぶのでしょうね
066:豚
紅の豚の魔法を解く鍵よ アドリア海のあかいくちびる
067:励
あきらめたバクの親子を励まして真夜中過ぎの悪夢を食べる
068:コットン
単純に暮らしてゆけば真っ白なコットンシャツの襟を正して
069:箸
箸であることを忘れて食卓のかなしいまでの砂丘のはずれ
070:介
介助犬の服を手作りしているようなあなたでしたか温かな手
071:謡
みどり色ジャングルジムに跨がって始まるでしょう蝉の歌謡祭
072:汚
えーえんの青いスーツよ撥ね返せ 汚職警官の放つ銃弾
073:自然
伝書鳩に秋の手紙をたくしたら数えてねむる空の自然数
074:刃
西日より長い刃の影を踏みつちふまずから泣き出しそうだ
075:朱
本日の夕焼け予報 この街は、赤のちオレンジ、所により朱
076:ツリー
夕暮れのスカイツリーのアンテナに生まれ変わって心を放つ
077:狂
剣を抜くことも忘れてゆりかごの 眠れ、眠れ、眠狂四郎
078:卵
ああ、それが望みであって春の日を一斉に孵化する無精卵
079:雑
捨てられる雑誌のように感情をビニール紐できつく結わえた
080:結婚
海沿いは立入禁止 昨日まであんなにも結婚式だったのに
081:配
しばらく見ないうちに大きくなって 覚えてますか空の配色
082:万
万力で挟むあたまの重さどこからか重力に逆らえと声がする
083:溝
めをとじるかすかこれがひかりでしょうか暗い溝を埋めてゆく
084:総
房総半島のひとが花の匂いをさせて海沿いをゆくように出会う
085:フルーツ
わたしだけフルーツ籠からこぼれ落ち白い机になっていました
086:貴
まちがえてひぐち君ヘアー 昨夜から貴族の乾杯の夢を見る
087:閉
天国に開け放たれる回転ドアをいつまでもどこまでも閉じてゆく
088:湧
湧くひとになって砂漠のかなしみを薄めてゆけば碧いオアシス
089:成
くちびるの冷水の悲しみを共にあなたは成功者となればいい
090:そもそも
そもそもと切り出した後の静寂のコーヒーカップにかすか秋色
091:債
ノルウェーの森の静かに雪ふるように債務時計の刻まれてゆく
092:念
どこまでも記憶のようなこの森にあなたであった植える記念樹
093:迫
迫るものが大きな罰であるように何もできない連れてゆかれる
094:裂
金の糸を織り交ぜながら深層の裂け目を縫って暮らしています
095:遠慮
遠慮なく飲み干すようにあかときのカシスオレンジ確かめなさい
096:取
取りあげて外の世界のあかるさの未来のような泣き声のする
097:毎
毎日をくらげのようなあかるさに過ごしてゆくの海に帰れば
098:味
ターコイズブルー口にふくんで味覚から氷のように痺れていった
099:惑
正さを支え合えたらあたたかなひかりを回れ惑星となる
100:完
完璧な球をたくして伝書鳩すべての空に放たれてゆけ
初めての冬の距離感ふたりには雪が降ります 寄り添いなさい
002:幸
とおく種であったころの幸せを砂丘のすみから植えてゆきます
003:細
昭和史をほどいてみれば群青のひかりのような飴細工あり
004:まさか
よく冷えたアクエリアスの気泡からまさかのような夏がはじまる
005:姿
姿見のなかのわたしは嘘つきだ嘲るような薄いくちびる
006:困
困惑をとおいひとから受け継いで星空を落下するペガサス
007:耕
愛なんてこれっぽっちもありませんもう耕すのは止めてください
008:下手
下手くそなピアノでいいね白鍵はあなたのために黒鍵はわたしのために
009:寒
あきらめた温もりのよう蒼白の寒暖計を手にとる夕べ
010:駆
しおさいのあなたを求め呼吸するわたしの内に疾駆する馬
011:ゲーム
終わらない椅子取りゲームの会場にあしたのような籐椅子を置く
012:堅
堅い人だらけの街の夕暮れに海月のような思いを伸ばす
013:故
故郷のオーケストラが現われて忘れかけた田園を奏でる
014:残
思い出は残るのですか ここはもう涙のような潮騒のあと
015:とりあえず
とりあえずともしてまわる蝋燭にねがいのようなちいさな炎
016:絹
絹糸を夕日にあてる一日がそれはやさしく終わろうとする
017:失
失望を幾つ許せば春の日のわたしは羽根を持てると言うの
018:準備
スケボーの車輪のひかり公園に初夏の準備をはじめる予定
019:層
悲しみのアンモナイトの貝殻はやがて地層に抱かれていた
020:幻
無くしても見つければいい永遠の幻灯機からあふれでる星
021:洗
Tシャツを洗い終えたら灯台の風のたもとで夏を待ちます
022:でたらめ
でたらめに空の光を追いながらああこれはたぶん僕の星座
023:蜂
蜜蜂の羽音の響くその先は無くしたはずの花なのでしょう
024:謝
もう一度すべてのひとに感謝祭忘れぬようにパレードの列
025:ミステリー
真夜中の小麦畑の地図を手にミステリーサークルを探す旅
026:震
携帯の震えはむかし水晶のころにかわしたとおい約束
027:水
まちがえて水力発電このダムのふかみは碧い森の悲しみ
028:説
きらきらとまわる猫の眼真夜中の天動説を示しはじめる
029:公式
公式にならないように海鳥をみなみの島のみさきに放つ
030:遅
寄り道をしたのでしょうね山肌をあなたの声が遅れて届く
031:電
真夜中をぶーんって泣いているのですクリーム色の電気メーター
032:町
こんなにもさびれた町のすみっこに赤いポストが笑顔のようだ
033:奇跡
めをとじてあけたら青き翅ひろげ奇跡的から蝶になります
034:掃
帚星76年越しに現れてスペースデブリを掃くのでしょうね
035:罪
真っ白な罪があるなら答えまで手をとりあって眠りましょうね
036:暑
ただ夏の暑さが記憶ひまわりの高みは何処にふれようとする
037:ポーズ
押しましょうどちらともなく明け方の瞳のようなポーズボタンを
038:抱
歩こうと水の小道をあしたまでほそい身体の抱きあいながら
039:庭
捨てられた庭師のはさみ忘れたらもう薔薇園は満開でしょう
040:伝
とどかない空のむこうにあるようなあなたの国へ伝書鳩 飛べ
041:さっぱり
駆けてゆく野生のような踝をきれいさっぱり忘れてしまう
042:至
坂道の下りの速度 風×高み また夏へ至る麦藁帽子
043:寿
寿の字を書くようにお父さんまた桃の表面を撫でている
044:護
お祈りを言い間違えた夕暮れの護るものから薄れてゆくの
045:幼稚
幼稚園バスの窓から夏空の青い帽子の飛び跳ねる朝
046:奏
奏でようと低音部から湖底まで沈んでゆくの鉛のペダル
047:態
君のないリビングルームに何時までも朝の擬態を止めないのです
048:束
大切を分けてください空白のクリアファイルの束を抱えて
049:方法
方法を見つけました。と、月光の観測師からメールが届く
050:酒
満たしてもわたしはグラス日本酒のいっそ透明になってゆきます
051:漕
三月の声を忘れた漕ぐ舟の喫水溢れ 眠れ あなたよ
052:芯
やわらかな夜中のように3Bの鉛筆の芯を研いでいるの
053:なう
残照の鋭い軌跡ガラス窓 ああ、曲面のカーテンを なう
054:丼
満月をもとめるように食べかけの牛丼におとす生卵
055:虚
虚構 あるいは海の彼方へとわたしをつれて霧笛を鳴らす
056:摘
みどり摘む呼吸するはず領域を手のひらの上 深呼吸する
057:ライバル
雨ふる日きみの背中に寄り添えてレインコートのライバルになる
058:帆
帆船ならみなみへむかう風の日のきぼうを孕みおすすみなさい
059:騒
ただ、海鳥の子守唄ならあるとして 耳をすませば消えた潮騒
060:直
実直なひとあらわれてまっすぐな手を伸ばすから 繋がればいい
061:有無
言い出せなかった有無が流星群 誰も知らない夜空に消える
062:墓
ガリガリ君の当たり棒なら夏の日の記憶の中の金魚のお墓
063:丈
背高泡立草の丈に近づく約束を秋になるまで忘れないでね
064:おやつ
ひかりから呼ぶ声のする公園に未来のようなおやつ抱えて
065:羽
観覧車 雲に近づく夏空の羽根があったら飛ぶのでしょうね
066:豚
紅の豚の魔法を解く鍵よ アドリア海のあかいくちびる
067:励
あきらめたバクの親子を励まして真夜中過ぎの悪夢を食べる
068:コットン
単純に暮らしてゆけば真っ白なコットンシャツの襟を正して
069:箸
箸であることを忘れて食卓のかなしいまでの砂丘のはずれ
070:介
介助犬の服を手作りしているようなあなたでしたか温かな手
071:謡
みどり色ジャングルジムに跨がって始まるでしょう蝉の歌謡祭
072:汚
えーえんの青いスーツよ撥ね返せ 汚職警官の放つ銃弾
073:自然
伝書鳩に秋の手紙をたくしたら数えてねむる空の自然数
074:刃
西日より長い刃の影を踏みつちふまずから泣き出しそうだ
075:朱
本日の夕焼け予報 この街は、赤のちオレンジ、所により朱
076:ツリー
夕暮れのスカイツリーのアンテナに生まれ変わって心を放つ
077:狂
剣を抜くことも忘れてゆりかごの 眠れ、眠れ、眠狂四郎
078:卵
ああ、それが望みであって春の日を一斉に孵化する無精卵
079:雑
捨てられる雑誌のように感情をビニール紐できつく結わえた
080:結婚
海沿いは立入禁止 昨日まであんなにも結婚式だったのに
081:配
しばらく見ないうちに大きくなって 覚えてますか空の配色
082:万
万力で挟むあたまの重さどこからか重力に逆らえと声がする
083:溝
めをとじるかすかこれがひかりでしょうか暗い溝を埋めてゆく
084:総
房総半島のひとが花の匂いをさせて海沿いをゆくように出会う
085:フルーツ
わたしだけフルーツ籠からこぼれ落ち白い机になっていました
086:貴
まちがえてひぐち君ヘアー 昨夜から貴族の乾杯の夢を見る
087:閉
天国に開け放たれる回転ドアをいつまでもどこまでも閉じてゆく
088:湧
湧くひとになって砂漠のかなしみを薄めてゆけば碧いオアシス
089:成
くちびるの冷水の悲しみを共にあなたは成功者となればいい
090:そもそも
そもそもと切り出した後の静寂のコーヒーカップにかすか秋色
091:債
ノルウェーの森の静かに雪ふるように債務時計の刻まれてゆく
092:念
どこまでも記憶のようなこの森にあなたであった植える記念樹
093:迫
迫るものが大きな罰であるように何もできない連れてゆかれる
094:裂
金の糸を織り交ぜながら深層の裂け目を縫って暮らしています
095:遠慮
遠慮なく飲み干すようにあかときのカシスオレンジ確かめなさい
096:取
取りあげて外の世界のあかるさの未来のような泣き声のする
097:毎
毎日をくらげのようなあかるさに過ごしてゆくの海に帰れば
098:味
ターコイズブルー口にふくんで味覚から氷のように痺れていった
099:惑
正さを支え合えたらあたたかなひかりを回れ惑星となる
100:完
完璧な球をたくして伝書鳩すべての空に放たれてゆけ