昭和の歌。
じーさんのみぎ手のひらがだだこねるテレビをはたく夕飯のころ
手作りのトーチをぎゅっとにぎりしめわらう子どものモノクロ写真
あいすべき時代をすこしかいまみて昭和64年生まれのぼくたち
キングギドラの歌。
みぎ首の恋の悩みを真剣に聞いてどうするまんなかの首
金属のつばさはおもく深海に空を失くしたメカキングギドラ
投げやりな右のシッポの行動をなだめるように左のシッポ
黄金のうろこをちらす戦いのあとにむらがるひろうひとたち
三つ首で協力すればゴジラにも勝てるはずだと毛利元就
モスラの歌。
歌声にひかれるように漆黒の海をわたった 刻限をまつ
想いからあなたを包み込むように東京タワーに巨大な繭を
明け方の緑の島のうたごえが途切れぬように守護神となる
時はきてあなたにむけて羽ばたきのきらきら光る鱗粉をもつ
空の子の羽根のありかを知るために私は繭に籠もるのでしょう
白物家電の歌。
三分でできあがる恋もありますとかなしいうそをつく電子レンジ
たぶんもうなくしてしまった感情をブラウン管にやきつけるテレビ
ばらばらにとびちった記憶のために吸引力の衰えない掃除機を
これいじょう惑わさないで真夜中の全自動洗濯乾燥機のほてり
メカゴジラの歌。
負の為の存在としてメカゴジラ 涙腺にあふれるオイルを拭う
夕虹がきれいなほどに硬直のからだは軋む わたしメカゴジラ
ちっぽけなプライドかもねきらきらと輝くようにメカゴジラ 牙
夕暮れの東京タワーを破壊しろ わたしのなかのメカゴジラの疼き
今とてもメカゴジラしてて無敵よ無敵 わたしの殻を砕いて下さい
ぐだぐだの言い訳なんか聞きたくない 今、逆襲のメカゴジラになる
追悼。
とつぜんの意味しらない僕たちが突然にとつぜんのいみ知る死
やすらかな寝顔にふれる僕たちはその頬の冷たさにとまどう
楽園はあふれる花にかこまれてもうなにも気にせずに眠る
寝台車 遠くへゆくと実感の汽笛をならす 目をしばたく
無に帰することの痛みをわかちあうためにささえる僕たちの生