001:始
やわらかなひざしにあわせムーミンがまあるいせなかをゆらし始める
002:晴
かたくなに折りたたまれた薄紙を午後の晴れ間にそっとひろげる
003:屋根
ゆるやかに陽がのぼるころぬくもりをたしかめようと屋根へとのぼる
004:限
じりじりとひきのばされた鋼線がいま限界をむかえるように
005:しあわせ
しあわせとなまえをつけたガンプラのディテール処理にこだわっている
006:使
しんぴんのボディソープを使いきりくすんだ僕をがしがしみがく
007:スプーン
特売のプッチンプリンをまよなかにざっくりえぐる銀のスプーン
008:種
きがつけばわたしに少しにた種がふたつぶぐらいはつがしていた
009:週末
もうだいぶ一人でいるのもなれたから週末のよていはコンビニで買う
010:握
手のひらにこもれびをあて温もりをとじこめようと握りかえした
011:すきま
カーテンのすきまをぬけて春さきがわたしの部屋にまぎれこんでる
012:赤
はるの子がおひるねをする玄関にたてかけられた赤い自転車
013:スポーツ
きえてゆくスポーツ選手のみぎかたにモンシロチョウはしずかにとまる
014:温
公園のひえたベンチでいつまでも着信履歴を温めていた
015:一緒
あのひとが赤いボタンをおすときも一緒にいっしょにいてくださいね
016:吹
あわいろのベランダにむけ吹く風にとざした窓をすこしだけあける
017:玉ねぎ
なみなみとボールにあつめた冷水にしんせんな玉ねぎをしずめる
018:酸
アミノさんヒアルロンさんクエンさんアスコルビンさんアルファリポ酸
019:男
あけがたの始発ホームですぐにでも発芽しそうな男をみかけた
020:メトロ
『知られざる地底人の謎』という本をねっしんによむメトロ職員
021:競
じっちょくな競歩選手がうかつにも駆けだしそうな日曜の午後
022:記号
おもいでは記号となって堅牢なしかくい箱のなかにとどまる
023:誰
誰にでもできる手編みという本をかったときから三度めの春
024:バランス
今まさにばくはつしそうな火薬庫でまがおにきめるY字バランス
025:化
なだらかな隆起にあわせゆっくりと液化するようまざりあう皮膚
026:地図
もうだれのひめいかわからないそらからバラバラとふってくる世界地図
027:給
少子化?とつぶやきながら大量のおかずをこねる給食のおばさん
028:カーテン
引越しの人がたくさん持ってったから僕のカーテンにくるまって眠る
029:国
たくさんの国旗にうもれしょうねんはせかいを統べるゆめをみている
030:いたずら
いたずらにくりかえされる閃光にわたしはひしゃげたおしべのようだ
031:雪
あやふやなカタチのまんまぎこちなく雪どけみずにひたすてのひら
032:ニュース
アマゾンのグァンポポ族の酋長が結婚しました みたいなニュースも
033:太陽
そういえば、ほら、ウルトラマンの役だった。誰だっけ、え~っと、なんとか太陽
034:配
早朝にみどりいろしたおばさんが初夏の感じを配ってあるく
035:昭和
昭和シェル石油のきいろい貝殻の化石のでてくる三万年後
036:湯
ぬるま湯にしずめたからだいつまでもいつからかそのままでわたしは
037:片思い
きょうれつな豪雨のなかにワイパーはまけちゃいそうな片思いです
038:穴
穴のあるからだにうまれ理由などないのでしょうね うめたいのです
039:理想
とてもよい寝心地だったふかふかの理想のまくらがきえてしまった
040:ボタン
真っ白なシャツのボタンがすこしずつなくなることに気がつかなくて
041:障
そういえば障子の紙のはりかえをもうなんねんもしたことがない
042:海
うっすらとひざしのあたるほんだなに海でもらった貝をならべる
043:ためいき
ためいきをシャボンにかえて青空のそのまたうえのそのまたうえへ
044:寺
たまねぎのいすらむ寺院のせんとうに少女はなにをいのるのでしょう
045:トマト
さかみちをかけあがるそのいきおいで真っ赤なまっかなトマトになあれ
046:階段
非常事態宣言がなされた街でほほえみかける非常階段
047:没
「道路陥没」を「どうぞ乾物」とまちがえてもらいにいくとなりのおばさん
048:毛糸
そういえばギネスにのった最長の毛糸のマフラーは何メートルですか
049:約
くらがりで約三分のあいじょうをそそぐ少女のすむまちのあめ
050:仮面
ほほえみの仮面をつけて、ごいっしょにポテトはいかが? なきじゃくる君
051:宙
宙返りするひとたちが重力にさからいながら生きようとする
052:あこがれ
あこがれることにあこがれあこがれをいつになっても追いかけている
053:爪
小指の爪とこゆびのつめは初めての出会いでかわすちいさな約束
054:電車
それはもうまっさおな電車にのって海へうみへとむかへ僕たち
055:労
正直なひとを労うやわらかな風をもとめて丘陵にいる
056:タオル
まっしろなタオルをわたす瞬間にゆびさきは触れすこしとまどう
057:空気
ゆっくりと空気はぬけてすてられた赤いふうせんのようね夕暮れ
058:鐘
きょうかいの鐘のよいんをとじこめていま深遠のすきまに放つ
059:ひらがな
ひらがなの栞をはさむ突きすすむ漢字のような人のページに
060:キス
ああ、これはキスぢゃないかっ! と、夕暮れの魚政のまん前で僕たち
061:論
そういえば太宰なんて論じながらいつのまにかに朝焼けだったね
062:乾杯
誠実でありたいと願うユミと乾杯のグラスに反射する夏空
063:浜
砂浜にのこす足跡 僕たちは夏の歪みに気付かないまま
064:ピアノ
ユミの弾くピアノの調べ 放課後は瞬きと知らなかった僕たち
065:大阪
大切な言葉を忘れないようにルミネtheよしもとに探す大阪
066:切
坂道をのぼっておりて踏切をこえてまがって まっはごーごーな僕たち
067:夕立
夕立にむかうステップ 虹色のリングに放つボールを手にして
068:杉
せつなくて出木杉くんの似顔絵をとてもリアルに描いて未明
069:卒業
そう、それは儀式として 僕たちの卒業を記す校舎の裏壁
070:神
右腕に神が宿る瞬間(とき) 残り一秒に放ったシュートの行方は
071:鉄
ゆうぐれのジャングルジムの僕たちに鉄のにおいはしみこんでいた
072:リモコン
リモコンがふえてきたのでリモコンをリモコンするリモコンをふやす
073:像
おもいきり飲みほすコーラ 空きびんにとりのこされる夏の残像
074:英語
駅前の英語教師はさりげなく Tourist visa (観光ビザ)の意味を知らない
075:鳥
夕暮れの焼き鳥屋にはめくるめくネギマの秘密をさぐる僕たち
076:まぶた
夕立のアスファルトからおしよせる夏の匂いにまぶたをとじる
077:写真
ひまわりの記念写真をとりましょう 空を両手につかめ僕たち
078:経
さよならは農大通り 経堂はダイコン踊りでめっちゃうるさい
079:塔
ぼくたちは給水塔と電波塔ほどの距離感であいしあえばいい
080:富士
富士サファリパークでホントに僕たちはちかすぎちゃってどうしよう ドキ
081:露
えんがわで玉露をすする気がつけば夏のおわりの茶柱がたつ
082:サイレン
サイレント映画のように僕たちはむごんの今をたしかめあった
083:筒
いま空の虚無感にむけポケットの擲弾筒をかまえろ僕たち
084:退屈
退屈にほおづえをつくあやふやにケータイでんわをもてあそぶ指
085:きざし
復活のきざしがみえる明後日フルマラソンを完走します
086:石
石化するぶなの巨木の年輪を数えるようにあいしあいたい
087:テープ
強風にとばされそうな 今、いまを ビニールテープではりつけている
088:暗
ほの暗いトンネルをぬけゆっくりと日差しのなかにからだをならす
089:こころ
最新のオール電化のマンションでさめたこころをレンジでチンする
090:質問
では、ここで、質問します まえむきにいきてゆこうと思ってますか
091:命
マリオには命が三つあるんだよ 僕ならもっともってるよね ママ
092:ホテル
グラスにはピンクのシャンパンえいきゅうにおどりつづけるホテルカリフォルニア
093:祝
いま僕は祝福のためゆっくりと鱗の頬をほぐしはじめる
094:社会
ゆうぐれにどくさい社会システムがなきだすように起動しました
095:裏
ひまわりのかれてしまった裏庭にしずかにうめる夏のじゅんあい
096:模様
そら模様ばかりきになる喫水をひたひたにしてゆきかうわたし
097:話
やがて会話はとぎれるようにゆっくりとわたしのなかにとけこんでいた
098:ベッド
エンジェルに逆らうようにめをとじてベッドから垂らす足のつめたさ
099:茶
銃身に紅茶のかおり ああ、この船はインド洋からもどつてきたのだ
100:終
終わらないじかんのなかに一瞬のあなたのような栞をはさむ
やわらかなひざしにあわせムーミンがまあるいせなかをゆらし始める
002:晴
かたくなに折りたたまれた薄紙を午後の晴れ間にそっとひろげる
003:屋根
ゆるやかに陽がのぼるころぬくもりをたしかめようと屋根へとのぼる
004:限
じりじりとひきのばされた鋼線がいま限界をむかえるように
005:しあわせ
しあわせとなまえをつけたガンプラのディテール処理にこだわっている
006:使
しんぴんのボディソープを使いきりくすんだ僕をがしがしみがく
007:スプーン
特売のプッチンプリンをまよなかにざっくりえぐる銀のスプーン
008:種
きがつけばわたしに少しにた種がふたつぶぐらいはつがしていた
009:週末
もうだいぶ一人でいるのもなれたから週末のよていはコンビニで買う
010:握
手のひらにこもれびをあて温もりをとじこめようと握りかえした
011:すきま
カーテンのすきまをぬけて春さきがわたしの部屋にまぎれこんでる
012:赤
はるの子がおひるねをする玄関にたてかけられた赤い自転車
013:スポーツ
きえてゆくスポーツ選手のみぎかたにモンシロチョウはしずかにとまる
014:温
公園のひえたベンチでいつまでも着信履歴を温めていた
015:一緒
あのひとが赤いボタンをおすときも一緒にいっしょにいてくださいね
016:吹
あわいろのベランダにむけ吹く風にとざした窓をすこしだけあける
017:玉ねぎ
なみなみとボールにあつめた冷水にしんせんな玉ねぎをしずめる
018:酸
アミノさんヒアルロンさんクエンさんアスコルビンさんアルファリポ酸
019:男
あけがたの始発ホームですぐにでも発芽しそうな男をみかけた
020:メトロ
『知られざる地底人の謎』という本をねっしんによむメトロ職員
021:競
じっちょくな競歩選手がうかつにも駆けだしそうな日曜の午後
022:記号
おもいでは記号となって堅牢なしかくい箱のなかにとどまる
023:誰
誰にでもできる手編みという本をかったときから三度めの春
024:バランス
今まさにばくはつしそうな火薬庫でまがおにきめるY字バランス
025:化
なだらかな隆起にあわせゆっくりと液化するようまざりあう皮膚
026:地図
もうだれのひめいかわからないそらからバラバラとふってくる世界地図
027:給
少子化?とつぶやきながら大量のおかずをこねる給食のおばさん
028:カーテン
引越しの人がたくさん持ってったから僕のカーテンにくるまって眠る
029:国
たくさんの国旗にうもれしょうねんはせかいを統べるゆめをみている
030:いたずら
いたずらにくりかえされる閃光にわたしはひしゃげたおしべのようだ
031:雪
あやふやなカタチのまんまぎこちなく雪どけみずにひたすてのひら
032:ニュース
アマゾンのグァンポポ族の酋長が結婚しました みたいなニュースも
033:太陽
そういえば、ほら、ウルトラマンの役だった。誰だっけ、え~っと、なんとか太陽
034:配
早朝にみどりいろしたおばさんが初夏の感じを配ってあるく
035:昭和
昭和シェル石油のきいろい貝殻の化石のでてくる三万年後
036:湯
ぬるま湯にしずめたからだいつまでもいつからかそのままでわたしは
037:片思い
きょうれつな豪雨のなかにワイパーはまけちゃいそうな片思いです
038:穴
穴のあるからだにうまれ理由などないのでしょうね うめたいのです
039:理想
とてもよい寝心地だったふかふかの理想のまくらがきえてしまった
040:ボタン
真っ白なシャツのボタンがすこしずつなくなることに気がつかなくて
041:障
そういえば障子の紙のはりかえをもうなんねんもしたことがない
042:海
うっすらとひざしのあたるほんだなに海でもらった貝をならべる
043:ためいき
ためいきをシャボンにかえて青空のそのまたうえのそのまたうえへ
044:寺
たまねぎのいすらむ寺院のせんとうに少女はなにをいのるのでしょう
045:トマト
さかみちをかけあがるそのいきおいで真っ赤なまっかなトマトになあれ
046:階段
非常事態宣言がなされた街でほほえみかける非常階段
047:没
「道路陥没」を「どうぞ乾物」とまちがえてもらいにいくとなりのおばさん
048:毛糸
そういえばギネスにのった最長の毛糸のマフラーは何メートルですか
049:約
くらがりで約三分のあいじょうをそそぐ少女のすむまちのあめ
050:仮面
ほほえみの仮面をつけて、ごいっしょにポテトはいかが? なきじゃくる君
051:宙
宙返りするひとたちが重力にさからいながら生きようとする
052:あこがれ
あこがれることにあこがれあこがれをいつになっても追いかけている
053:爪
小指の爪とこゆびのつめは初めての出会いでかわすちいさな約束
054:電車
それはもうまっさおな電車にのって海へうみへとむかへ僕たち
055:労
正直なひとを労うやわらかな風をもとめて丘陵にいる
056:タオル
まっしろなタオルをわたす瞬間にゆびさきは触れすこしとまどう
057:空気
ゆっくりと空気はぬけてすてられた赤いふうせんのようね夕暮れ
058:鐘
きょうかいの鐘のよいんをとじこめていま深遠のすきまに放つ
059:ひらがな
ひらがなの栞をはさむ突きすすむ漢字のような人のページに
060:キス
ああ、これはキスぢゃないかっ! と、夕暮れの魚政のまん前で僕たち
061:論
そういえば太宰なんて論じながらいつのまにかに朝焼けだったね
062:乾杯
誠実でありたいと願うユミと乾杯のグラスに反射する夏空
063:浜
砂浜にのこす足跡 僕たちは夏の歪みに気付かないまま
064:ピアノ
ユミの弾くピアノの調べ 放課後は瞬きと知らなかった僕たち
065:大阪
大切な言葉を忘れないようにルミネtheよしもとに探す大阪
066:切
坂道をのぼっておりて踏切をこえてまがって まっはごーごーな僕たち
067:夕立
夕立にむかうステップ 虹色のリングに放つボールを手にして
068:杉
せつなくて出木杉くんの似顔絵をとてもリアルに描いて未明
069:卒業
そう、それは儀式として 僕たちの卒業を記す校舎の裏壁
070:神
右腕に神が宿る瞬間(とき) 残り一秒に放ったシュートの行方は
071:鉄
ゆうぐれのジャングルジムの僕たちに鉄のにおいはしみこんでいた
072:リモコン
リモコンがふえてきたのでリモコンをリモコンするリモコンをふやす
073:像
おもいきり飲みほすコーラ 空きびんにとりのこされる夏の残像
074:英語
駅前の英語教師はさりげなく Tourist visa (観光ビザ)の意味を知らない
075:鳥
夕暮れの焼き鳥屋にはめくるめくネギマの秘密をさぐる僕たち
076:まぶた
夕立のアスファルトからおしよせる夏の匂いにまぶたをとじる
077:写真
ひまわりの記念写真をとりましょう 空を両手につかめ僕たち
078:経
さよならは農大通り 経堂はダイコン踊りでめっちゃうるさい
079:塔
ぼくたちは給水塔と電波塔ほどの距離感であいしあえばいい
080:富士
富士サファリパークでホントに僕たちはちかすぎちゃってどうしよう ドキ
081:露
えんがわで玉露をすする気がつけば夏のおわりの茶柱がたつ
082:サイレン
サイレント映画のように僕たちはむごんの今をたしかめあった
083:筒
いま空の虚無感にむけポケットの擲弾筒をかまえろ僕たち
084:退屈
退屈にほおづえをつくあやふやにケータイでんわをもてあそぶ指
085:きざし
復活のきざしがみえる明後日フルマラソンを完走します
086:石
石化するぶなの巨木の年輪を数えるようにあいしあいたい
087:テープ
強風にとばされそうな 今、いまを ビニールテープではりつけている
088:暗
ほの暗いトンネルをぬけゆっくりと日差しのなかにからだをならす
089:こころ
最新のオール電化のマンションでさめたこころをレンジでチンする
090:質問
では、ここで、質問します まえむきにいきてゆこうと思ってますか
091:命
マリオには命が三つあるんだよ 僕ならもっともってるよね ママ
092:ホテル
グラスにはピンクのシャンパンえいきゅうにおどりつづけるホテルカリフォルニア
093:祝
いま僕は祝福のためゆっくりと鱗の頬をほぐしはじめる
094:社会
ゆうぐれにどくさい社会システムがなきだすように起動しました
095:裏
ひまわりのかれてしまった裏庭にしずかにうめる夏のじゅんあい
096:模様
そら模様ばかりきになる喫水をひたひたにしてゆきかうわたし
097:話
やがて会話はとぎれるようにゆっくりとわたしのなかにとけこんでいた
098:ベッド
エンジェルに逆らうようにめをとじてベッドから垂らす足のつめたさ
099:茶
銃身に紅茶のかおり ああ、この船はインド洋からもどつてきたのだ
100:終
終わらないじかんのなかに一瞬のあなたのような栞をはさむ