空飛ぶ自由人・2

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映画『我、邪を邪で制す』

2024年04月28日 23時00分00秒 | 映画関係

[映画紹介]

冒頭、ヤクザの葬式での銃撃戦。
犯人を追う刑事との壮絶な格闘が描かれる。

それから4年。
何とか逃げおおせた逃亡犯の陳桂林は、
祖母を病気で亡くし、
自身も肺ガンで長くて半年、
短かければ3か月の余命を宣告される。
ある人から、このままネズミのように死ぬのではなく、
誇れることをしろ(自首しろ)、
「死して名を残し尊厳を守れ」と忠告され、
自首しに訪れた警察で、
「台湾三大指名手配犯」の張り紙を見て、
自分が序列第3位の指名犯だと知る。


陳桂林は、死ぬ前に、名声を遺すために、
手配序列1位と2位の犯罪者の駆逐を決意する。

一人は、義理の娘に美容院を経営させて潜伏する許偉強。
その駆逐は、娘の解放も意味していた。
それを片づけた後、
序列1位の林禄和を探す陳は、
南方の島の宗教団体で、陳の墓を見つける。


宗教団体で黒い液体を吐いた陳は、
教祖の薫陶を受け、
所有していた全財産を捧げて悔い改め、
法悦の境地に至るが、
宗教団体と教祖の正体を知って、
陳の最後の使命が炸裂する・・・

という、バイオレンスストーリー。

香港人であるウォン・ジンポー監督の台湾初作品。
主演はイーサン・ルアンベン

途中から全然話が別な方角に向かい
えっ、そういう映画なのか、
と驚いていると、
最後は、元の路線に戻り、
すさまじい暴力と殺戮が展開する。
そして、最後はほろりとさせる。

バイオレンスシーンが容赦ない乾いた描写
魅力的。
実は、陳自身も騙されていた、
という落ちもビターな味わい。

台湾の死刑がああいうものだと初めて知った。
後片付けが大変だろうに。

後を追う刑事との友情のようなものがあり、
薬局のおばちゃんも魅力的。

原題の「周處除三害」は、
次のような故事による。

中国のあるところに周処という若者がいた。
村の人が嘆いているのを見て理由を聞くと、
「三つの害」が原因だと言う。
その三害とは、
白虎、大蛇、そして周処自身だと知った周処は
「俺が三害をすべて取り除いてやる」と出かける。
まず虎を退治し、次に大蛇と死闘を繰り広げて、
川に流されて行方不明となる。
やっとの思いで村に戻って来た周処は、
三害がいなくなったと大喜びする村人たちの姿を見る。
自分はどれほど人に迷惑をかけていたのかに気づいた周処は
賢人を訪ね、
自分の過ちを知り、改心したいと思う気持ちがあれば、
まだ間に合う、と励まされて、
猛勉強をして、人格者となり、
優れた業績を残す名将となったという。
その昔話にまつわる題名。

映画の中に次のような漢詩が出て来る。

一失足成千古恨
再回頭已百年身
捨棄貧、瞋、癡
來世再做新的人

明代の「明良記」という書物に出てくる言葉で、
一部は「仏教聖典」に記されているという。
「貧、瞋、癡」というのが、仏教用語で、
人間の持つ根源的な三つの悪徳のこと。
三毒とも言われる。
「貧」欲を貪(むさぼ)り、執着すること⇒「鶏」(鳩)
「瞋」怒り、憎しみに支配されること⇒「蛇」
「癡」真理に対して無知であり、愚かであること⇒「豚」
英題の「The Pig, The Snake and The Pigeon 」は、
この「心の三毒」を表してる。

この詩は、本作では、
「過ち一つで悔い一生 貪欲 怒り 無知を脱し 新しい人間に」
と訳されている。

と、暴力描写の向こう側に、
いろいろと味わい深い台湾映画だった。

Netflixで配信中。

 



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