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連作短編集『いけないⅡ』

2023年02月20日 23時00分00秒 | 書籍関係

[書籍紹介]

直木賞作家・道尾秀介による、
新機軸のミステリー。

「いけないⅡ」というくらいだから、「Ⅰ」があり、
本書より3年前に発刊された「いけない」が、それ。

「Ⅱ」には、
明神の滝に祈ってはいけない
首なし男を助けてはいけない
その映像を調べてはいけない
祈りの声を繋いではいけない
が収められており、
前の3つが「オール讀物」に掲載されたもので、
最後の章が書き下ろし。
各章の最後に、写真が1枚添えられており、
その写真で隠された真相が見えて来る、という趣向。

第一章「明神の滝に祈ってはいけない」

桃花は、一年前に忽然と姿を消した姉・緋里花の
SNS裏アカウントを昨晩見つけ、明神の滝を訪れる。
裏アカウントの写真の投稿を見ると、
姉が大切にしていた人形を連れて
鶴麗山(かくれいさん)の明神の滝に
願い事をしに行ったとしか思えないからだ。
滝の観瀑台で桃花が出合ったのは、避難小屋の小屋守・大槻だった。
物語は桃花の視点と大槻の視点が交代で描かれる。
失踪の捜査に当たる隈島(くまじま)刑事も登場する。

第二章「首なし男を助けてはいけない」

夏祭りの日、少年・真は二人の仲間を連れて大好きな伯父さんを訪ねる。
今夜、親たちに内緒で行う肝試しで、
日頃から偉そうな裕樹(ゆうき)に、どっきりを仕掛けるため、
伯父さんに協力してもらうためだ。
伯父さんは30年前、祖父が川で溺れ死んで以来、
三十年近くも自室にひきこもって、
奇妙な「首吊り人形」を作っている。
その人形を借りて、裕樹を驚かせようというのだ。
伯父さんと真たちは、
首なし男の仕掛けを作るが、
事故が起こり・・・

第三章「その映像を調べてはいけない」

千木(ちぎ)という老人が警察に出頭して来る。
息子の暴力に耐えかねて刺し殺し、
遺体を六黒橋の上から川に流したというのだ。
取り調べを担当したのは隈島刑事。
先輩の戸頃(ところ)刑事は、隈島の取り調べに注文をつけ、
「容疑者の言葉を鵜呑みにするな、徹底的に疑え」と言う。
捜査は難航した。
川をさらっても、死体が見つからないのだ。
死体が発見されなければ、
殺人事件は成立しない。
隈島は千木宅を訪ね、
隠されたいた車のドライブレコーダーの記録を解析し、
千木が山に死体を埋めに行ったと推理するが・・・

第四章「祈りの声を繋いではいけない」

バラバラに起こっていた3章が、
4章に来て、全部繋がって来る
特に、千木のドライブレコーダーの仕掛けの意図は、
ちょっと意表をつかれた。
また、ことの真相にも、驚かされた。
そして、最後の写真で、
その後の展開が想像できる。

4つの話は全て箕氷(みごおり)市で起こったこと。
鶴麗山、明神の滝、御光川、六黒橋などの地名に
隠された意味がある。

鶴麗山(かくれいさん)は、
もともと「隠れ山」(かくれさん)で、
「隠れる」には「死ぬ」という意味があるらしい。
山に住む神が人の命を奪うというのが、
名前の由来だという。
その神がいるのが明神の滝であり、
こちらはもともと「冥神の滝」と表されていた。
「冥」は「あの世」という意味だとか。
滝で死んだ人々は神への御供(ごくう)、つまり供え物として捉えられ、
その死体が流れていくのが「御供川」──これも後に御光川と呼び換えられた。
「冥神の滝」で死体となった人間は、
「御供川」を下り、山裾で最初の橋をくぐることになる。
それが「骸橋」(むくろばし)であり、
現在の六黒橋というわけだ。

各章に読者を誤誘導するような仕掛けがあり、
何度もページをめくってしまった。

 



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