空飛ぶ自由人・2

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『コールセンターもしもし日記』

2022年07月05日 23時00分00秒 | 書籍関係

[書籍紹介]

職業シリーズ「○○○○ ○○○○日記」の一篇。
今回はコールセンターが舞台。

筆者の吉川徹氏は、
明治大学を卒業し一般企業に就職するが、
精神的ストレスから退職し、
派遣社員として、
ドコモのコールセンターから始まり、
様々なコールセンターを渡り歩いた人。
途中、他の業種に従事もするが、
何時の間にか、コールセンターに戻っている。
時給がいいことと、
経験不問がいいらしい。

その経験から、
コールセンターのあるあるを記す。

とにかく、コールセンターには、
あらゆる問い合わせが来るし、
中には理不尽なものが沢山ある。
特に、携帯電話の料金不払い
電話が止められた時の抗議がすさまじい。
原因は支払わなかった本人にあり、
支払えば解決するのだが、
無理無体を言って来る。

自衛隊の妻だという人の電話。

※「住所見てわかりませんか! 
自衛隊の官舎に住んでいる人の電話をなぜ止めるんですか!
日本のために海外派遣されてるんですよ!
その夫が今、私に電話してたらどうするんですか!
あなた、それでも日本人ですか!」
知りませんよ、そんなこと。
携帯電話と自衛隊がどう関係あるんですか。
金を払わないあんたが悪いんでしょう。
使った分は払うのが社会のルールじゃないですか。
そう言いたい気持ちを抑え、~~~

「私、障害者なんですよ。
障害者に対してそんなこと言っていいんですか?」
と言われたこともある。
自分は優遇されて当然と思っているらしい。

そう思っても、
実際は平身低頭、相手を怒らさないようにする。
論争は許されない。
中には、お客に「死ぬぞ!いいのか!」とキレられ、
「どうぞ、ご自由に、お客さまの人生ですから」
と切り返した人もいるが、
そんな勇気は珍しい。
ストレスが溜まる。

ミスをしたり、会社の商品に欠陥があったから怒られるというのならわかる。
金を払わなくて電話をとめられたから
オペレーターを怒るというのは
筋が通らない。
自分の責任でないことで怒られる。
それが一日中だ。
それがいやになり、辞めてしまう。

大体、コールセンターは社員でも専門家でもなく、
派遣社員でまかなうことか多い。
渡されたマニュアルやスクリプト(台本のようなもの)でやるのだ。
それについて、こう書く。

派遣社員にはいろんな人がいるが、
注意してみると
2種類に分かれることに気づく。
派遣社員を正社員になるまでのつなぎと考えている人と
派遣社員で働くことに満足している人だ。
仕事がふつうにできて、
まわりとも仲良くやっていた人が急に辞めたときは、
たいていどこか別な会社において
正社員での採用が決まっている。
こういう人はふだんから浮ついたところがなく、
身につけているものも質素だ。

希有な例だが、
休憩室で寝泊まりする女性もいたという。
終業にトイレに隠れて時間をやりすごし、
全員が帰ったあとに
休憩室のソファーで眠り、
朝になったら、またトイレに移って時間まですごし、
そこから出勤していたという。
お風呂はトイレの洗面台の水を使っていた。
ネットカフェで宿泊するのに対して金がかからないからだ。

どうしてばれたかというと、
誰もいないはずなのにエレベーターが動いているのを
夜勤の警備員が不審に思って、
休憩室に行ってみて、発覚した。
即日契約解除となった。

コールセンターも人柄が反映し、
尾崎部長という人は、
派遣社員を見下さず、
「職場の仲間」として接してくれた。
センター長の嫉妬を買って、人事異動させられたという。

別な室長は、面接の時、
センター長が失礼な質問をしたことを詫びてくれた。
そのことについて、こう書く。

室長の、この謙虚な姿を見て、
私も偉くなっても決して威張らない人間になろうと思った。
しかし、その後いつまで経っても
偉くなることはなく、
よって威張る機会自体がない。

コールセンターも千差万別で、
吉川さんは、こう書く。

言葉の使い方から厳しく指導されるところもあれば、
とにかく本数をこなせばいいというところまでさまざまだ。
あとになって役に立ったのは、
やはり厳しく指導されたところで身につけた技術だった。

こんなことも書いている。

以前、派遣会社から電話セールスの仕事を紹介された。
私ともうひとりに獲得件数を競わせ、
勝った方を契約社員として採用し、
負けたほうには辞めてもらうと言われた。
即座に「私にはできません」と断った。
なんで見ず知らずの人と仕事を取り合わなければならないのか。
勝っても負けても嫌な気持ちになるに違いない。
どうやら私は競うことをチャンスと捉えられない性格らしい。

吉川氏、なかなか骨がある。

吉川氏がコールセンター勤務をはじめたのが35歳の時。
離婚した息子の養育費を律儀に払い続け、
ついに成人して養育費から解放され、
今では、息子と3カ月に1回くらいの頻度で会っているという。
今は55歳で、
障害者対象の社会福祉法人で
グループホームの夜勤の仕事についている。

吉川さんは、こう書いている。

一流大学を出て一流企業に入った人間が幸せかといえば、
必ずしもそうではない。
一流企業は給料も待遇も恵まれ世間的なイメージもいいが、
仕事は厳しい。
帰宅が連日夜中ということも少なくないだろう。
それを考えると、給料も待遇もそれほどでなく、
世間的に知られていない会社でも、
自分のペースで働ければ、
そっちのほうが幸せと考えにこともできる。

私自身も、パソコンの不具合などで
コールセンターのお世話になったことがあるが、
とにかく忍耐強く、こちらの話を聞き、
解決策を教えてくれる態度に頭が下がった。
時には5~6時間かかったこともある。
別なコールセンターで、貸別荘の予約で
不穏な態度を取られて、
怒鳴りつけたことがある。
今になってみれば、悪かったな、と反省。

 



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