[映画紹介]
「マンガ大賞2020」を受賞した
山口つばさによる人気漫画↓
を実写映画化(既にアニメ化、舞台化)。
一人の男子高校生が美術の世界に挑む姿を描いた青春ドラマ。
高校生の矢口八虎(やとら)は、
大した勉強もしていないのに成績優秀で、
タバコも酒も飲む優等生不良。
ただ、流される毎日に物足りなさを感じていた。
美術の授業で「私の好きな風景」という課題を出され、
一番好きな「明け方の青い渋谷」を描いてみる。
自分にしか見えない世界を、
絵に描いてみたことで、
それまでの自分から解き放たれ、
本当の自分をさらけ出せたような気がした八虎は、
美術に興味を抱くようになり、
またたく間にのめりこんでいく。
そして、進路を決める時期が来て、
将来を心配する母を説得して、
国内最難関の美術大学への受験を決意するが・・・
「国内最難関の美術大学」とは、東京藝術大学のこと。
日本で唯一の国立芸術大学。
藝大には音楽学部と美術学部の2つがある。
美術学部は工芸科、彫刻科、デザイン科、
建築科、先端芸術表現学科、
芸術学科、絵画科の7つの学科があり、
絵画科は更に油絵専攻と日本画専攻の2つに分かれる。
絵画科の実質倍率はおよそ100倍で、
日本一受験倍率が高い学科、
ある意味東大より難しいと言われている。
八虎が目指したのは、その油絵専攻。
まず、一次試験は課題が当日発表で「自画像」。
それを朝9時から午後3時までの間に仕上げる。
(途中に1時間の昼食休憩)
イーゼルに置かれた出品作を藝大教授が一点ずつ評価し、
落選者の作品はイーゼルから外される。
一次通過者は二次に進み、
与えられた課題(八虎の時は裸婦像)を3日かけて仕上げる。
藝大絵画科の試験はどうやるのかと興味津々だったが、
なるほどと納得した。
八虎と共に藝大をめざす仲間たち。
同級生のユカちゃん、
「心が女性」の女装の鮎川龍二(あゆかわりゅうじ)、
ライバルとなる高橋世田介、
美術部の先輩・森まるなど。
それに美術部顧問の佐伯昌子、
美術予備校講師の大葉真由。
「好きなことをする努力家は最強なんです」。
佐伯昌子が八虎に放つこの言葉が作品を貫く。
八虎は「好きなこと」を見つけた。
だが、そういう人は沢山いる。
後は、努力、いやそれ以上に才能がものを言う。
それは小説家でもお笑い芸人でも同じ。
本作は、絵画に見入られた青年の努力と成長を描いて、熱い。
久しぶりに映画で、その熱さを味わった。
若い俳優たちは、
クランクインの前からそれぞれが絵の練習をスタートし、
手元のシーンは吹替なしで撮影に挑んだという。
絵を描く現場の熱気や醍醐味が
スクリーンから伝わってくる。
萩原健太郎が監督を務め、
脚本をテレビアニメ版を手がけた吉田玲子が担当。
「ブルーピリオド」とは、
「青の時代」=画家パブロ・ピカソの青春期の陰鬱な作風の通称。
転じて、孤独で不安な青春時代を表す言葉。
良い題名を付けたものだ。