空飛ぶ自由人・2

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映画『薬の神じゃない!』

2022年04月16日 23時03分22秒 | 映画関係

[映画紹介]

Netflix で観たが、
既に日本でも公開されているから、
「旧作を観る」に属する。

上海で、回春薬を売る店を営むチョン・ヨンは、
店の家賃さえ払えず、妻にも見放され、
人生の目標を見失っていた。


ある日、慢性骨髄性白血病患者リュから
白血病の治療薬のインドからの密輸をもちかけられる。
というのは、当時の中国では、
外国の製薬会社の独占で高価なため、
白血病患者が苦しめられていたのだ。
一旦は断ったチョンだったが、
金に目がくらんでやってみると、
これが莫大な利益を生むことに気づき、
購入グループを作り、
より大量の密輸・販売を拡大していく。
権益を侵害された製薬会社の働きかけで、
警察の捜査が始まったため、
チョンは一旦グループを解散し、
貯めた資金で縫製会社の経営に乗り出す。
しかし、再び白血病患者の苦しみを目にすると、
グループを再結集して
危険な薬の輸入を再開し、
縫製工場の儲けをつぎこんで、
仕入れ値以下の価格で薬を売り、
患者たちに感謝されるが、
製薬会社の圧力で警察の捜査は激しくなる・・・

実話だという。
と言っても、人物設定などは創作で、
こういう薬の密輸で患者を助けた人がいて、
その結果、薬価が見直されて、
白血病患者たちが救済された、
という実際の事件をモデルに描いたものらしい。
中国の医薬業界に改革を促すきっかけともなり、
白血病の生存率が2002年の30%から
2018には85%に改善されたという。
                
チョンが密輸した薬は、
偽薬ではなく、
薬効も同じジェネリック薬
ただ、中国国内で未認可だというだけだ。
そのことは捜査をする刑事の口で語られる。

最初は金儲けのために始めた密輸だったが、
やがて、患者のため、儲けは度外視で薬を提供し続ける、
という主人公の変化がミソ。
最初はダメ人間として描かれたチョンだったが、
後半は、義侠心にかられるイイ男に変身する。
チョンを演ずるシュー・ジェンがいい味を出している。

グループのメンバーも、
依頼人のリュを始め、
白血病患者が集まるネット上コミュニティの管理人で、
自身も白血病の娘を持つポールダンサー、
中国語なまりの英語を操る牧師、
力仕事が得意な不良少年など多彩。
これも映画のための創作だろう。

上海の猥雑な雰囲気、
インドの喧騒など、
うまく取り入れられている。
冒頭の音楽など、インド映画か、と思うほどだ。

最後、判決を受けて車で護送されるチョンの見たものは・・・
という感動のオチが待っている。

邦題の「薬の神じゃない! 」は、あまり良い題名ではなく、
さぞ観客が減っただろうと思うが、
原題が「我不是藥神」と同じでは仕方ないか。

監督はウェン・ムーイエ

2018年10月の「中国映画週間」で、
「ニセ薬じゃない! 」の邦題で上映され、
2020年10月に一般公開された。