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第71回ノーベル化学賞 ヘルツベルク「遊離基の電子構造と幾何学的構造に関する研究」

2020年03月12日 | ノーベル賞

 

 1971年ノーベル化学賞

 1971年のノーベル化学賞は「遊離基の電子構造と幾何学的構造に関する研究」に贈られた。

 遊離基とは何だろうか?遊離基とは 不対電子をもつ原子や分子、あるいはイオンのことを指す。ラジカル(radical)とも呼ばれる。

 また最近の傾向としては、C2, C3, CH2 など、不対電子を持たないがいわゆるオクテット則を満たさず、活性で短寿命の中間化学種一般の総称として「ラジカル(フリーラジカル)」という場合もある。

 通常、原子や分子の軌道電子は2つずつ対になって存在し、安定な物質やイオンを形成する。ここに熱や光などの形でエネルギーが加えられると、電子が励起されて移動したり、あるいは化学結合が二者に均一に解裂(ホモリティック解裂)することによって不対電子ができ、ラジカルが発生する。

 ラジカルは通常、反応性が高いために、生成するとすぐに他の原子や分子との間で酸化還元反応を起こし安定な分子やイオンとなる。

 一方、ゲルハルト・ヘルツベルクがラジカルを分析する手段として、分光法を発展させラジカルの電子状態が詳しく調べられるようになった。

 その結果、ラジカルが単純に結合を切断した形で存在するのではなく、特に二つの結合を切ったようなビラジカル(またはバイラジカル;CH2等)では基底状態は不対電子を持たない形で存在することが明らかになった。

 一方で安定な分子の一部(O2など)も不対電子を持つことから、ヘルツベルクはラジカルに対して「不対電子をもつことにとらわれず、反応性の高い活性で短寿命の中間化学種一般の総称」という広い定義を彼の著書の中で使用した。

 これを受けてヘルツベルクと関連の深い、分子科学(化学物理)、化学反応論、宇宙化学の分野ではこの広い定義で扱われるようになった。

 分光法とは何か?

 分光法(spectroscopy)とは、物理的観測量の強度を周波数、エネルギー、時間などの関数として示すスペクトル (spectrum) を得ることで、対象物の定性・定量あるいは物性を調べる科学的手法である。

 spectroscopy の語は、元々は光をプリズムあるいは回折格子でその波長に応じて展開したものをスペクトル (spectrum) と呼んだことに由来する。

 18世紀から19世紀の物理学において、スペクトルを研究する分野として分光学が確立し、その原理に基づく測定法も分光法 (spectroscopy) と呼ばれた。

  当初は可視光の放出あるいは吸収を研究する分野であったが、光(可視光)が電磁波の一種であることが判明した19世紀以降は、ラジオ波からガンマ線(γ線)まで、広く電磁波の放出あるいは吸収を測定する方法を分光法と呼ぶようになった。

 また、光の発生または吸収スペクトルは、物質固有のパターンと物質量に比例したピーク強度を示すために物質の定性あるいは定量に、分析化学から天文学まで広く応用され利用されている。

 天体とスペクトルの関係

 19世紀に分光(スペクトル)分析が天体観測に用いられるようになって、天文学は一変した。
 従来はもっぱら天体の位置や形状を調べることによって宇宙の姿を把握しようと試みられてきたが、スペクトル観測により、人類は太陽をはじめとする星がどのような物質からできているのか知ったり、宇宙が膨張しているという認識を得ることができるようになった。

 スペクトル観測によって得られるのは、大きく分けて天体の組成と運動についての情報である。スペクトル線の強さ(ある波長での光の放射や吸収の量)からは、天体の組成、つまり光の放射や吸収に関与する原子や分子がどのくらいあるのか、ということがわかる。

 これには元素レベルでの組成だけでなく、天体の温度や圧力などの状態についての情報も含まれる。
 一方、観測者からみて天体が遠ざかったり近づいたりすると、いわゆるドップラー効果によって光の波長が延びたり縮んだりしている。つまり、スペクトル線の波長のずれから、天体の速度(観測者からみた方向の速度で、視線速度とよばれる)が測定できる。

 ゲルハルト・ヘルツベルグ

 ゲルハルト・ヘルツベルク(Gerhard Herzberg, 1904年12月25日 – 1999年3月3日)は理論的および実験的な化学の分野を発展させた化学者である。ドイツ帝国ハンブルクで生まれ、ヒトラー政権樹立後、1935年にカナダに亡命している。

 ヘルツベルクは分光学を発展させ、ラジカルと呼ばれる不安定な分子の電子状態の構造および原子核の配向を解明する方法を開発した。その功績により1971年にノーベル化学賞を受賞した。

 化学においては、彼の発見した分光学的な情報によって不安定な分子の分析が可能になり、化学反応素過程の解明が進んだ。天文学においては天体望遠鏡を用いて観測されたスペクトルを解析する土台となった。

 小惑星(3316)のヘルツベルクは、彼の名を取り命名された。1999年にオタワにて94歳で没した。

 経歴・業績

 ゲルハルト・ヘルツベルグは、1904年にドイツのハンブルグで生まれた。1928年にダルシュタット工科大学を卒業。その後ゲッティンゲン大学では、ジェームズ・フランク(1925年ノーベル物理学賞)とマックス・ボルン(1954年ノーベル物理学賞)のもとで物理学を学んだ。

 1635年にカナダに亡命。1936年から1945年までカナダ中西部サスカチュワン大学で物理学の教授を務めた。1945年カナダに帰化した後、1948年までシカゴ大学ヤーキス天文台の分光学の教授に就く。1948年からカナダ国立研究所に勤務し、1955年に物理学部門長になった。

 原子から出る光を分光器に当てて通すと、原子ごとに特有の波長が固有の色に分かれて見える。これを手掛かりとして光の強度や周波数、エネルギーなどを調べたのがヘルツベルクである。
 水素や重水素の真空紫外線吸収スペクトルや、酵素の禁制遷移(ふだんは起きない遷移)の吸収スペクトルから、解離エネルギーを決定した。さらに閃光光分析法を用いてC3、CH2、CH3など、いくつもの多原子遊離基の構造を決定した。

 ラジカル(遊離基)と呼ばれる原子は、一番外側に配置されている電子が奇数になっていることから不安定な存在であるが、これをスペクトルから解析して分子内の電子の状態の構造や原子核の配向について解明した。
 このほか、天体望遠鏡で観測されたスペクトルを分子分光学の手法で行い、惑星や彗星、星間に存在する分子の同定にも成功している。これらの業績に対してノーベル化学賞が授与された。

参考 Wikipedia: ゲルハルト・ヘルツベルク

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