報道写真家から

我々が信じてきた世界の姿は、本当の世界の実像なのか

鳥インフルエンザは本当に脅威なのか

2005年12月11日 21時06分18秒 | ■鳥インフルエンザ
<鳥インフルエンザとタミフルへの関心の高さ>

『トリインフルエンザとタミフルとラムズフェルド』を書いた日のアクセスが1000(pv)を越えていた。このブログをはじめて一年ばかりになるが、一日の閲覧数が1000を越えたことなんて数回しかない。「鳥インフルエンザ」や「タミフル」への関心が非常に高いことがうかがえる。多くの方が、「鳥インフルエンザ」や「タミフル」に関する情報を求めてWEBを巡っているに違いない。

そうした方々は、「鳥インフルエンザ」の危険性は真実なのか、あるいは、「タミフル」は安全な薬なのかを知りたいに違いない。しかし、この問題を調べれば調べるほど、わからなくなってくる。専門家の見解が、大きく真っ二つに分かれているからだ。

「鳥インフルエンザ」は、必ず変異して「ヒト→ヒト」感染するようになる。そうなればパンデミック(世界的大流行)する。そして何百万人が命を落す。ワクチンや「タミフル」の備蓄を増やさなければならない。

という見解が主流だ。しかし他方で、

インフルエンザ・ワクチンはほとんど効果がない。また「タミフル」の効果は、発熱の期間が一日減るだけである。人体は、ウイルスに感染することによって体内に抗体を作り、より免疫力を強化していく。

素人にはお手上げである。どちらが科学的なのか、判断しようがない。WHO(世界保険機構)は、パンデミックを主張し、警告を発している。しかし、「鳥インフルエンザ」のパンデミックを示唆するWHOの資料の中に、奇妙な記述がある。

「ヒトの健康被害のリスク評価については、あまり開発が進んでいない。最近の報告によると、ウイルスはここ数年の間、常に環境中に存在していたにもかかわらず、依然としてヒトに容易に感染する能力を獲得していない。何故であろうか?この進化を阻害する何かがこのウイルスには有るのだろうか?」
http://idsc.nih.go.jp/disease/avian_influenza/43who.html

ここでいうウイルスとは、もちろん「鳥インフルエンザ」H5N1のことである。「ヒトに容易に感染する能力を獲得していない」ならば、パンデミックを危惧する必要はないはずである。こうなると、もう訳が分からない。WHOは、「鳥インフルエンザ」が早く変異してパンデミックを起こして欲しいのだろうか。

こうした方面からのアプローチは迷宮にはまり込んでいくだけなのかもしれない。専門家の間で見解が分かれているのだから、素人にはどうしようもない。

<医薬をめぐる利権>

僕がいつも問題にしているメディアの状況はどうだろうか。
メディアには、あふれんばかりの健康情報が日々流れている。メディアが唱える、健康によいとされる食品や健康法をすべて実践したら、かえって健康によくないのではないか。そう思えるほど、過剰な健康情報が流れている。にもかかわらず、「鳥インフルエンザ」や「タミフル」、そしてワクチンについての有効な情報がメディア上にはない。

また、日本の医療行政について考えてみると、根本的に信頼できない。医薬業界が巨大な利権の巣窟というのは疑う余地がない。どれだけ強固な利権構造かというのは、汚染血液製剤の事件を見れば明らかだ。みどり十字や厚生省(当時)の役人は、汚染の事実を知りながら、血液製剤を販売し続け、あるいは販売することを許可した。販売会社も厚生省も彼らの利権維持のために、多くの命を奪ったのであり、今後も奪い続けるのだ。この医薬業界をめぐる利権構造は、いまでも変わってはいない。

そこに加えて、いまアメリカ政府が日本の医療政策に対して発言権を得ようとしていることを考え合わせると、われわれを取り巻く健康医療環境は最悪と考えたほうがいいだろう。こうした環境の中では、メディアの流す官製情報を安易に信用する気にはなれない。情報が制限され、操作されている可能性を考えた方が安全だ。

不安や脅威というのは、人々を操る最も手っ取り早い方法だ。オイルショックのとき、たかだかトイレットペーパーがなくなるというだけで全国がパニックになった。より大きな脅威で人々を不安に陥れれば、それだけ操作は容易になる。「鳥インフルエンザ」や「タミフル」問題というのは、健康医療問題ではなく、巨大な利権の絡んだ世界的な政治経済問題だと考えている。

世界中が怖れた「赤い帝国」ソビエト連邦は、勝手に内部から崩壊するほど脆弱な国だったが、その実体が見えないように「鉄のカーテン」引いたのはアメリカ自身だ。「赤い帝国」の脅威によって、アメリカは西側世界の覇権を握り、軍需産業は計り知れない利益をあげた。

「鳥インフルエンザ」も構造的にはこれと変わらないと考えている。情報が錯綜して実体が不透明になれば、それだけ人々は不安になる。国民を安心させるという名目で、国家は税金を使ってワクチンや薬剤を備蓄して、利権企業を儲けさせる。その一部は、政治家や官僚にまわる。利権構造というのは、持続しなければ意味がない。幸い、インフルエンザの脅威は、毎年毎年やってくる。そして、「鳥インフルエンザ」の変異の脅威も毎年毎年高まっていく。しかし、本当に脅威なのかはたいへん怪しい。

「赤い帝国」の脅威は30年続いた。
「鳥インフルエンザ」の脅威は、あと何年続くのだろうか。

<病原菌とのつきあい>

いまのところ、学究的に言うならば、インフルエンザに対抗する手段として、ワクチンや「タミフル」などの薬剤をとるか、それとも人体の免疫システムをとるかという勝負は、決着がつかない。どちらを選ぶかは、もちろん自由だ。

僕はといえば、すでに世界中でいろんな感染症にかかっている。そのほとんどは名前もわからない。一度食中毒になると、以後ほとんど下痢をしなくなるということも経験してきた。ただ、日本に帰ってくると、この耐性もリセットされてしまうようだ。

病原性大腸菌O-157が日本で流行した時、ある研究者は、「日本はあまりにも清潔すぎて、病原菌との接触がなさすぎる。そのため体の耐性も低下している。病原菌とはある程度付き合いがあったほうがいいのだ。」とおっしゃっていた。僕もその通りだと思う。ただ、僕の場合、ちょっと付き合いが良すぎるような気はする。




現時点における H5N1型インフルエンザウイルスのヒトへのリスクの検討 (WHO)
http://idsc.nih.go.jp/disease/avian_influenza/43who.html
高病原性鳥インフルエンザ(国立感染症研究センター)
http://idsc.nih.go.jp/disease/avian_influenza/index.html
効かない・危ない予防接種!
http://www.ne.jp/asahi/kr/hr/vtalk/infl_appeal0311.htm


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2 コメント

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Unknown (rei)
2005-12-12 17:01:24
脅威というのは非常にありふれたものだと思います。

今日、階段から落ちるかもしれないし、事故に遭うかもしれない。地震が起きるかもしれない。キリがありません。

鳥インフルエンザもその一つだと思います。

確かに脅威かもしれませんが、日常にありふれた脅威の一つだと感じています。



しかし人間は知らないものに対して異常な恐怖を感じますし、自動車事故よりも飛行機事故のような「もし起きたとしたら大変」というようなものにより恐怖を感じます。確率がどんなに低くてもです。



鳥インフルエンザが本当の脅威になるか、ならないかは誰にもわかりません。なったとしても、私は今日事故に遭うことの方を恐れるでしょう。

いい意味であきらめるというか、当たり前のことを当たり前にすることが大切です。もちろんそれが一番難しいことだと感じますが。

日本人の平均寿命は80歳ほどですが、私は脅威も含めての80年の人生だと感じています。

脅威に対抗してプランBを選択したところで脅威の数は変わりません。

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reiさんへ (中司)
2005-12-13 18:01:28
脅威というのは、身近でありふれたものがたくさんあります。何に、脅威を感じるかは、確かに人それぞれです。



しかし問題は、脅威というのは、意図的に演出できるというところにあります。そういうとき、人は本当にそれが脅威であるかを考えずに、無暗と怖れます。そうした形で、人を一定の方向へ導くこともできます。



おそらく本当の脅威とは、われわれの見えないところで進行しているのだと思います。

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