報道写真家から

我々が信じてきた世界の姿は、本当の世界の実像なのか

ミニミニ・フセインとミニミニ・アメリカ

2006年06月05日 22時30分52秒 | ■東ティモール暴動
いまだ、東ティモールでは騒乱や略奪が続いている。
オーストラリア軍は一個大隊1300人を派遣している。
オーストラリアは、東ティモールの危機を救出にきたのだろうか?
もちろん答えは、NOだ。

すでに、述べてきたように、東ティモールとオーストラリアの間のティモール海には石油と天然ガスが埋蔵されている。オーストラリア政府は、領海を画定しないまま、国際法上の東ティモール領内で石油を採掘し続けている。これは明らかに「盗掘」だ。そんなオーストラリアが、東ティモールの危機を救いにくるだろうか。考えるまでもない。

オーストラリアは東ティモールの治安維持のためにきたのではない。
天然資源を奪いにきたのだ。

そのためにの必須条件が、マリ・アルカティリ首相の追い落としだ。これまで、資源を詐取したいオーストラリアに対して、アルカティリ首相は、驚くほどのタフ・ネゴシエーターぶりを発揮してきた。「独立」以来、彼は、オーストラリア政府と互角に渡り合ってきた。つまり、現時点でオーストラリアは”盗掘油田”以外は、石油開発がほとんど進んでいないのだ。オーストラリアはかなり苛立っている。

オーストラリアが資源を奪うための合言葉はただひとつ。
”アルカティリを引きずり降ろせ!”だ。

しかし、アルカティリ首相は、東ティモールにおいて強大な権力を掌握してきた。彼が書記長を務めるフレテリン党は、国会議席88のうち、55議席を占めている。第二党の民主党は、たった7議席だ。大統領はと言えば、国家の象徴にすぎない。大統領の権限は、軍事と外交の一部に限られている。政治的な強権を持つ首相を、通常の政治的過程で引きずり降ろすのは困難だ。したがって、オーストラリアは通常ではない方法を用いなければならない。

手段さえ選ばなければ、アルカティリ首相を追い落とすことはそれほど難しいことではない。なぜなら、アルカティリ首相は、人物としてはお世辞にも謙虚とはいいがたく、国民の信頼もまったく得ていないからだ。

マリ・アルカティリ首相には、権力に酔ったとしか思えない発言が多い。
「フレテリン党は今後五〇年、政権を握る」
「我々は議会の多数派でやろうと思えば何でもできるが、他の人々とともに働こうとしており極めて寛容だ」
「私は空港や港をいつでも閉鎖できる」
こうした発言は、捜せばいくらでも出てくる。

先月19日に行われたフレテリン党の書記長選でも、かなり強引な手を使った。アルカティリ首相は、投票方法を「無記名投票」から「挙手」へ、独断で変更した。よほど自信がなかったのだろう。「挙手」投票のおかげで”圧倒的多数”で再選されたものの、もはや「独裁恐怖政治」と言われても仕方がない。来年の議会選挙でも、権力維持のためにあらゆる手段を講じることは目に見えている。

このように、人気のない独裁者アルカティリ首相に対してなら、かなり強引で杜撰な手法でもまず失敗するということはないだろう。

実際、この間の成り行きを冷静に観察すれば、不自然なことだらけだ。そもそもの発端が、聞いたこともない”東西対立”だ。外国軍を歓迎する”反乱軍”もはじめて聞いた。暴徒が武装した外国兵士を怖れなかったり、あるいは、暴徒に対して”キャッチ・アンド・リリース”を繰り返す外国治安維持軍。そして、判で押したように誰も彼もが、アルカティリ首相の退陣を口にする。まるで三文芝居だ。

オーストラリアは、アルカティリ首相を追い落し、来年の5月の議会選挙において、親豪政権を東ティモールに樹立するだろう。これで、領海を画定することなく、好きなだけティモール海に油田を掘り、石油を汲み出すことができる。

アルカティリ首相は、ミニミニ・フセインだ。
オーストラリアは、ミニミニ・アメリカだ。