秘書検定 72*『気になる言葉遣い』 (6)「いただく or くださる」

2015-08-18 | 秘書検定
 某テレビ番組で、お作法の手ほどきを受ける新人アナウンサーが、

 「本日ご指導いただくのは ○○先生です」

と、先生を紹介。

かれこれ10年ほど前の番組ですし、この新人さんも今では中堅として活躍しておいでですが、

さすがにこの時は、

 「ご指導いただくのは・・・あなたでしょう?」

と、 に向かってつぶやいてしまいました。


 「いただく」 は 「もらう」 の謙譲語であり、「くださる」 は 「くれる」 の尊敬語です。

アナウンサーの言葉を敬体から常体にしますと、「指導してもらうのは ○○先生だ」 となり、

これでは、先生が指導を受けるという意味になってしまいますので、

ここはやはり、「本日ご指導くださるのは ○○先生です」 と言う方がよいでしょう。


 では、指導を受けた後で先生にお礼を述べるとすれば、どちらがしっくり来るでしょう。

 「ご指導いただきまして、ありがとうございます」

 「ご指導くださいまして、ありがとうございます」

日本語は主語がなくても通じることの多い言語ですが、あえて主語を付け加えて常体にしますと、

 「私が指導してもらって、ありがとう」

 「先生が指導してくれて、ありがとう」

となり、上の方は、まるで自分にお礼を述べているように聞こえます。

とすると、この場合は、

「ご指導くださいまして、ありがとうございます」

の方が適切と思われるのですが・・・。

 
 ところが、言葉は生きていて、時代と共に移り変わってゆくものです。

「~ いただき」 を不適切と感じる人がいる一方で、『敬語の指針』(文化審議会答申) では、

「~ いただき」 と 「~ くださり」 は、どちらも適切な表現である と、示しているのです。

それどころか、NHK 放送文化研究所が行なったアンケート結果によりますと、

「~ いただき」 は使うが 「~ くださり」 は使わないという人が、逆の人を上回っていて、

「~ いただき」 の方が感謝の度合いが高いという回答も、多く寄せられているそうです。

たしかに身近な例で考えてみましても、デパートやスーパーの店内放送でよく耳にする、

 「ご来店いただきまして、まことにありがとうございます」

 「ご来店くださいまして、まことにありがとうございます」

どちらも違和感なく、どちらからも、店側の歓迎や感謝の意が伝わってきますし、

「いただき」 ⇒ 「頂き」  「くださり」 ⇒ 「下さり」 という漢字を当てはめてみますと、

「頂」 と 「下」 では、「頂」 の方が感謝の度合いが高いというイメージも、分かる気がいたします。


 このように、世の中の流れとしては 「~ いただき」 が優勢なようですが、
 
それにしても、近頃 「~ いただきます」 が巷に溢れていると思いませんか?

これについては、また後日。


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