kyon's日誌

つれづれに・・・

「伊賀の残光」に

2015年12月13日 | 日記
本当は、好きな作家の解説付きだと思って求めた。
「伊賀の残光」青山文平・著

伊賀もの・・・というイメージが当然のように忍者もの・・・なれど、
伊賀の流れを汲む者でありながら、その伊賀者である影はほぼ無い地味な生活を繰り返す・・・それで良いと思っていながら、どこかでその影は付き纏う。
還暦も越えた主人公が仲間の死を不審に思うことから始まる物語は一人だけの死に留まらない。生涯人を切ることも無く過ごす筈だった伊賀者に刀を抜かせる・・・知り得なかった娘婿、死んだ仲間の事情も様々に明らかになる・・・
江戸の泰平の世に暮らしながら、このような裏世界もあるというのは、思いもよらなかった。
何だかワタシにはある意味、新鮮に感じた。

自らの刀で人を切るという重みを腹に抱えながら、再び地味な世界に戻ろうとする心の動きの描き方が素晴らしい。

文庫のカバーに「おのれとは何者なのか」というフレーズがある・・・
その「おのれ」とは・・・に、惹かれたのもあったが、自分の心の中を探りながら折り合いをつけていく動きを共に感じる面白さがあった。

布石のように置かれた細かな日常の普通が自分を取り戻す過程で集約されて腑に落ちる。
読み終えるとズシンと胸に残る作品は中々無いものだが、普通であり続けるさも無い生活の中にこれだけドラマがある・・あらためてそんなことを感じ、
自分のさも無い地味な生活を照らし合わせた・・・

普通であろうとすることを蔑ろにしてはいけないなぁ~・・・
何故か、そんな風にも思えた。
もしかしたら、ワタシは普通であることを地味であることをこんなに真面目に思うことも無かったような気がして、ちょっとだけ反省もしてしまった(苦笑)

コメント (6)
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