森の空想ブログ

お気に入りの木陰で弁当を食べた/晩夏の山旅 *茜草について加筆しました[空想の森から<20>]



空が高い。まだ夏の終わりという時期だが、森には秋の風が吹き始めている。
数日前まで「生命に危険が及ぶ暑さ」という警報が出ていたことなどが、嘘のような涼しさだ。



由布院から宮崎へと帰る道筋に、お気に入りの木陰がある。今回は、九重高原・牧ノ戸峠・瀬の本を経由し、産山・波野・高千穂へと通過するルートだ。時間が少しずれてもこの地点まで車を走らせ、弁当を食べる。途中で買ってきた「鶏飯おにぎり」が美味しい。固めの鶏肉と牛蒡、椎茸の煮しめを握り込んだ昔風の弁当だ。



欅の大樹が作る影の向こうへと続く山道がある。その道の先には牧場があるのだろう。道の真ん中に大きな赤牛が寝ていたことがある。






道の脇の叢に水引草が赤い点々を打ち、釣舟草が赤紫色の蕾を付けている。花筏は、熟しきった黒い実を落とした。茜が叢から茎を伸ばしている。開花期が近い。

「茜草」について調べておこう。
「茜色」は万葉の時代から親しまれ、茜染めも古い歴史を持ち、薬効もあるが、それがどの草で、どこに生えており、花がいつ咲き、どの季節に採集してどの部位で染めるか、などということはほとんど知る人がいないのである。


茜草はつる性の多年生植物で、分布は中国、朝鮮半島、台湾、日本。日本では本州、四国、九州に分布し、山地や野原、路傍、林の縁などに自生する。四角く細かい逆刺のある茎は盛んに分岐し、他の草木に絡まりながら長く伸びる。一本の茎を逆方向に辿ると、案外大きな根株に辿り着く。それが赤い根=アカネである。この根を掘り、乾燥すると赤黄色から橙色となることから赤根=アカネと呼ばれるようになった。
夏から秋にかけて、茎の先端か上部葉腋から花序を出し、多数の淡い黄緑色の目立たない小さな花が咲く。この時期が採集の季節。根も太く成長している。
日本では上代から赤色の染料として重宝された。和歌でも多くが「紫」「日」「月」「照る」「昼」にかかる枕詞として用いられた。天智天皇の妃であった額田王が、大海人皇子(天武天皇)を慕って詠んだ
「あかねさす紫野行き標野行き野守は見ずや君が袖振る」
が良く知られる。

今月末(8月25日・26日/諸塚村にて)と、来月末(9月24日/友愛の森・里山再生プロジェクトにて)には茜草の根を掘り、移植し、染めるワークショップが企画されている。
季節がが巡り、由布院と宮崎を行き来する私の小さな旅は続いてゆく。

ランキングに参加中。クリックして応援お願いします!

名前:
コメント:

※文字化け等の原因になりますので顔文字の投稿はお控えください。

コメント利用規約に同意の上コメント投稿を行ってください。

 

  • Xでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

最新の画像もっと見る

最近の「Weblog」カテゴリーもっと見る

最近の記事
バックナンバー
人気記事