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武蔵御嶽神社・大口真神社(おおくちまがみしゃ)を守護する位置にある小さな塚。その塚の中ほどの草むらの中に座す古い石造の狼は、近世に作られた他の立派な狼像よりも美しく、狼そのものの持つ野生や神性を表していると私は思った。おそらく、この像が造られたころは、まだ身近に狼がいて、作者も、狼を信仰する山人や里人もその実相を掴み得たのだろう。
西日を受け、遠くを見つめるかのような狼の足元に、原型も定かではなくなった石塊があった。それが、かつてはこの狼と一対をなし、大口真神社を守護し続けた「吽形」の狼であったのだろう。容赦ない風化にさらされながら、なお生気を放つこの小像こそ、日本の狼信仰の原型を伝えるオブジェである。
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大口真神社に隣接して、「太占(ふとまに)祭場」がある。ここは、今も鹿骨を用いた古式の呪法「太占」を伝える場であった。
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太占(ふとまに)とは、獣骨を用いた卜占である。起源は中国大陸に求められる。殷墟(古代中国殷時代の遺跡)からは5000点に及ぶ甲骨(鹿・牛の肩甲骨、亀の甲羅)が発見され、それが古代の卜占に使われたこと、読解可能であることなどから、甲骨文字すなわち「漢字」の起源であることなどが確認された。
この呪法は古代日本にも伝わり、主に鹿の骨を用いた卜占「鹿占(しかうら)」が行なわれた。現在、その太占を伝えるのは、東京都の武蔵御嶽神社、群馬県の貫前神社の二例のみである。