東京国立博物館で開催中の特別展「京都~洛中洛外図と障壁画の美」へ。
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毎週金曜日と11月の三連休は、
20時まで開館(通常は17時まで)しているというので、
夜なら混雑していないだろうと思い、延長時間帯を狙って出かけました。
エントランスは閑散として、「読み通り!」と思ったのですが・・・
東京国立博物館 平成館
展示室は予想に反して思わぬ混雑(展示室は撮影禁止)です。
その理由は、展示物の特性によるものでした。
展示会場は二か所に分かれ、第一部と第二部で展示物が異なります。
第一部 「都の姿―洛中洛外図屏風」
「洛中洛外図屏風」は、室町時代から江戸時代の京の街を描いた屏風です。
御所や寺などの建物のほか、貴族や僧侶、武士、庶民の暮らしが緻密に描かれており、
京の都の移り変わりや、当時の風俗を知るうえで貴重な史料にもなっています。
現在、現存する屏風の7件が国宝・重要文化財に指定されており、
会期中は前期と後期に分けて、そのすべてが展示されます。
ほとんどの来場者のお目当ては、「洛中洛外図屏風」のようです。
屏風に描かれた京の都は、はあまりにも緻密で詳細に描かれているため、
各展示の前では観覧者が立ち止まってなかなか動かず、滞留しまくりです。
(何しろ1種類の屏風に描かれている人の数は、多いもので約3000人!、だそうです)
係員が、「最前列は横に移動しながら観るように」と誘導しますが、もちろん動きません。
行列にならんでいても一向に進まないので、人垣の後ろのほうから眺め、
隙間を見つけては少しずつ前進すれば、最前列から二列目あたりで鑑賞できます。
第二部 「都の空間装飾―障壁画の美」
京都御所、龍安寺、二条城の襖(ふすま)などの障壁画84面を公開しています。
現在、二条城には複製画がはめ込まれ、往時の空間を色鮮やかに再現していますが、
ここに展示されているのは、そのオリジナルです。
400年近い時を経て、さすがに傷みが激しく色あせていますが、
かつての歴代将軍や大名たちが目にしたものと紛れもなく同じものです。
精巧な葵御門が彫金されている、黒く変色した襖の引手(取っ手)でさえ、
何百年も前に生きた人が触れていたあかしだと思うと、
タイムスリップしたような気持ちになり、なんだかわくわくします。
第二部会場の展示は、まったく混雑していませんでした。
洛中洛外図屏風はあまりにも精緻に描かれているため、
どんなに近くで観ても、いくら目に焼き付けても、すべてを観ることができません。
じっくりと400年前の京の街を歩きたい人は図録がおすすめです。
図録は立派な箱に入って2,500円です。
箱の中には展示されている7種類の洛中洛外図屏風の縮小版も入っています。
図録の装丁も立派で、まるで美術専門書のようです。
図録には街の様子や人々の暮らしが大きく拡大されて映し出されています。
通りには黒人を連れた渡来人が歩いたり、女性が子犬とたわむれていたり。
道端で綱引きをして遊ぶ子供たちや、大名家の台所の様子。
400年前の人々の服装や家の造りなどに着目してもなかなか面白いです。
当時の人々にとっても、
華やかな京の都の様子は、大きな興味の対象だったのでしょう。
写真もない時代、こうして屏風に描いて飾ったり贈ったりしたことが、
400年後には貴重な一級史料となったなったわけです。
まさに、「百聞は一見にしかず」。
どんな文章記録を読むよりも、当時の人々の暮らしが、
まるで時代劇のように浮かび上がってきます。
文化の日を挟んだ三連休、上野公園の噴水周辺は、
イベントでライトアップされていました。