くろたり庵/Kurotari's blog~since 2009

総務系サラリーマンの世に出ない言葉

新耐震基準は安心か?

2012-07-20 23:59:59 | 総務のお仕事(防災)
会社で事業継続計画(BCP)を策定したとき、
社屋ビルの耐震診断を実施したことがあります。

一般的には、新耐震基準に基づいて建築された建物
すなわち、1981年の建築基準法改正以降に建てられた建物であれば、
震度6強から7の地震がきても大丈夫という認識があります。
(建築の世界では、震度ではなくガルという加速度を用います)

しかし、多くの人が勘違いしているのは、
「新耐震基準の建物だから、大地震がきても壊れない」、
すなわち「大地震のあとも住み続ける(使い続ける)ことができる」
と思っていることです。

新耐震基準は、
「大地震がきても建物に影響が出ない」
というレベルでの設計強度を定めたものではありません。

あくまでも「人命を守ること」を最優先に考え、
「建物倒壊による死者を出さない」という基準で定められたものです。
「財産」として建物を守ることは考慮されていないのです。

したがって、建物の柱や壁に大きな亀裂が生じたり、
大きく傾いたりして住めなくなることは充分にありえることなのです。

実際に東日本大震災では、
本震では建物は倒壊せず、住民は全員無事に避難しましたが、
その後の余震で建物の損壊は修繕できないまでに拡大し、
取り壊されることになった建物もあったといいます。

もちろん、現代の建築技術があれば、
震度7の地震がきても、ビクともしない頑丈な建物を建てることは可能です。
しかし、それではあまりに建築費用がかかりすぎて、現実的ではありません。
もし、そのような厳しい基準で法制化してしまえば、
一部の富裕層しかマイホームを買えなくなってしまいます。

そこで、その基準の折り合いをつけたところが、
「建物倒壊から人命を守るレベル」 ということになったわけです。

新耐震基準の建物であったとしても、
大震災後に住み続けることができなくなるほど損壊することはあるし、
住めなくなった状態で、住宅ローンだけが残るということも充分にありえるのです。
(残念ながら、家がなくなったら借金もチャラになるような住宅ローンは、
 世界中のどこを探してもありません)

ですから、そのことを理解している人たちは、
免震構造や制震構造の住宅を購入しますが、やはり価格は割高であり、
購入資金に余裕のある富裕層のものであるという感は否めません。

したがって、私たち一般人には、
災害に強い土地であるか否かなど、建設地の地歴を調べて購入し、
万一に備えて「地震保険」に加入するなどして、
自分の身と財産を守るしかないのです。

ところで冒頭に書いた社屋ビルですが、
診断結果は、震度7程度であっても構造体に影響はなく、
倒壊しないというものでした。

ただし、カーテンウォールの外壁のほとんどは脱落し、
吹きさらしになる可能性が高いとのこと。

「結局、だめじゃん!」 という結果でした。


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