「母さん?俺だけど。
サラ金でお金借りると、どのくらいかかるのかな?」
母親が驚いて問い返すと彼は、
酒を飲んでタクシーに乗り、小切手の入った鞄を置き忘れてしまった。
そのタクシーが遠くまで出てしまっており、今日中には戻ってこられないため、
自分がサラ金で立て替えるしかないと言います。
「バカなこと言わないで!
そのくらい母さんが立て替えてあげるから」
母親は思わずそう言って銀行に向かったそうです。
これは最近聞いた、振り込め詐欺の手口です。
「鞄を置き忘れた」という手口の電話は珍しくありません。
しかし、この手口の巧妙なのは、単に「置き忘れた」というだけでなく、
「サラ金で借りようと思っている」というところにあります。
多くの人は「サラ金=怖い」という印象がありますから、
母親はとっさに「借りさせてはいけない」という意識が働き、
思わず「母さんが立て替えてあげる」と言ってしまいます。
「どうすれば・・・」という考える余地を与えません。
現金の受け渡し方法、あるいは振込先を聞いて、
どのくらいの母親がはたと我に返るかどうかはわかりません。
しかし、世の多くの母親が、まずは同じことを言うのではないでしょうか。
私はこの話を聞き、「会社の金を使い込んだ」とか、
「不倫相手を妊娠させた」などといった手口には騙されないだろう自分の母親も、
この手口なら、たぶんこの母親と同じことを言うと思いました。
ところでこの母親は、銀行まで来たところで我に返り事なきを得ましたが、
周囲からは散々に注意され、激しい自信喪失に陥って落ち込んだそうです。
わが子を想う親の気持ちが強ければ強いほど、
精神的なダメージも大きくなるのが振り込め詐欺です。
金銭欲にほだされて騙される出資金詐欺とはわけが違います。
わが子を想う親の気持ちにつけ込み、
人として最も自然で崇高な愛情を破壊する最低の犯罪です。
詐欺罪と組織犯罪処罰法でしか処罰できない現状をもどかしく思います。
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