前回に引き続き上野公園の重要文化財です。
上野公園には、上野東照宮のほかにもうひとつ、
戊辰戦争でも関東大震災でも、第二次世界大戦でも焼失しなかった、
江戸時代の貴重な遺構があります。
その姿は、歌川広重の「名所江戸百景」にも描かれています。
上の絵は歌川広重(1797-1858)が名所江戸百景に描いた上野清水堂不忍池。
上野清水観音堂は、上野の山に東叡山寛永寺を開いた天海僧正が、
1631年(寛永8年)に建立した堂舎です(重要文化財)。
広重の名所江戸百景からわかるように、京都の清水寺がモデルになっています。
これが現在の上野清水堂です。
広重の「名所江戸百景」ほどのスケール観はありませんが、
古色蒼然とした味わい深い建物です。
本堂の前は京都の清水寺と同じように舞台造りになっています。
残念ながら、現在では木が高く生い茂り、不忍池を俯瞰することはできません。
広重の浮世絵にも描かれている、円形に一回転した枝ぶりの松は、
「月の松」と呼ばれ、江戸の庶民に親しまれていたそうです。
元祖「月の松」は明治の初めに台風で失われ、
現在のものは昨年、150年ぶりに復活させた二代目です。
これを作ることのできる造園職人は、もうごくわずかしかいないそうです。