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くろたり庵/Kurotari's blog~since 2009

総務系サラリーマンの世に出ない言葉

クレーマー扱いされないために(5)

2011-01-14 23:59:59 | 正しいクレームのつけ方
正しいクレームのつけ方【発言編】

その4.「株主総会で言うぞ」はエセ総会屋行為、逮捕されます。

最近、このような発言をするクレーマーが特に増えています。
あからさまに「発言する」「質問する」と言わないまでも、
開口一番に「実は御社の株をもっている」とか「自分は株主でもあるんだ」とか、
「何を言いたいの?」と聞きたくなるような言葉を耳にすることが多くなりました。

反社追放の講演会などで、講師の企業顧問弁護士も、
「株主総会での一般株主の総会屋的発言が増えている」と言っていましたから、
単なるクレーマーの脅しではなく、実際に行動に移す人も増えているのでしょう。

かつて村上ファンドの村上世彰が、「モノ言う株主」と呼ばれて一世を風靡しました。
その頃から「株主は総会でもっと発言すべき」という意識が一般株主にも広まり、
株主総会での一般株主の発言が増えるようになりました。

しかし、本来の「モノ言う株主」とは、
経営に口を出さない「サイレント株主」に対して、経営に口を出す株主という意味です。

それがいつの間にか「モノ言う株主」という言葉だけがひとり歩きし、
「自分は黙っていない」「株主総会で公開して糾弾する」といった屈折した解釈になり、
結果的にエセ総会屋行為につながっているような気がします。

本人は「マスコミに言う」や「役所に言う」などと同じように、
正当な社会正義を貫いていると思っている人が多いようです。

しかし、このような発言は、一歩間違えば、
刑事罰を課せられる行為だということを知っておくべきでしょう。

改正後の新会社法では、
「株主の権利の行使に関する利益供与の罪(970条)」という条文が新設されました。

ある企業法務の弁護士から聞いた話しでは、
これにより、株主権を行使して、個人や特定団体に利益を誘導するような行為があれば、
恐喝に至らない程度の不当要求行為でも立件することが可能になったそうです。
また「株付け」の有無は無関係で、「株主総会の場で・・・云々」というような言動があれば、
適用することは可能なので、どんどん弁護士に相談しましょうとも話していました。

これには刑事罰がついており、
三年以下の懲役、または300万円以下の罰金が課せられるそうです。

株主総会は、個人の恨みつらみを吐き出したり、
自分への利益誘導を図る発言の場ではないということです。



クレーマー扱いされないために(4)

2011-01-13 23:38:42 | 正しいクレームのつけ方
正しいクレームのつけ方【発言編】

その3.「役所に言う」「マスコミに言う」「議員に言う」と言うべからず。

これもクレーマーの常套句です。
そのほか、同じようなセリフとして、「ネットに書く」「株主総会で言う」などもあります。

ご本人は、社会正義を貫いているつもりなのですが、
客観的に見ると、単なる権威を笠に着た言動に過ぎません。
いわば「虎の衣を借りようとしているキツネ」です。

なぜなら、社会正義は他人のために貫いてこそ高尚なのであって、
そこに微塵でも「自分の要求のため」というものがあれば、
それはたちまち社会正義ではなく、単なる私利私欲になってしまうからです。

さらに悪質なクレーマーになると、暴力団員の名刺を出して、
「自分は、こういう人間も知っている」と言った者さえいました。

しかし、これはクレーマーの狙いとは逆効果になります。

確かにクレーム対応担当者としては、そう言われるのは嫌なものです。
社会問題になるほどのクレームならともかく、一般常識で考えれば、
一個人のクレームで大手マスコミや議員先生たちが動くはずなどありません。
しかし、最近は些細なことを面白おかしく書き立てるマスコミや、
一般庶民とは感覚のかけ離れた議員先生もいるので安心できません。

「だったら、クレーマーの言うことをきくのか」というと、実はそうではないのです。

そういう発言があった場合には、企業はさらに一歩踏み込んで、
「マスコミや議員の名を出したら、言うことをきいた」というような
風聞を流されるリスクを考えます。

そうなると、企業のクレームへの対応はより慎重にならざるをえず、
クレーマーの思惑とは異なり、必要最低限の回答しか出せなくなってしまいます。
ましてや出されたのが暴力団の名刺だったら、交渉はそこで打ち切りです。

このような発言は、交渉を有利にしようと考え、
逆に交渉の間口を自分で狭めてしまっているのです。

多くのクレーマーがそのことに気づいていません。



クレーマー扱いされないために(3)

2011-01-12 23:14:29 | 正しいクレームのつけ方
正しいクレームのつけ方【発言編】

その2.「一筆入れろ」「文書でよこせ」「この場で書け」と言わない。

文書に残すことは大切です。
私たち企業の担当者も、示談が成立したら必ず書面を取り交わします。
そこには必ず「以後、相互に異議申し立てをしない」とか、
「相互に債権債務は存在しないことを確認した」という文言を入れます。

しかし、それは合意が成立した証として残すものであって、
言質をとるための文書ではありません。

クレーマーの多くが「一筆入れろ」という目的は、
「言質をとっている」という心理的圧力を相手に与えることにあります。
「言った証拠があるのだから、前言を翻すことは許さない」と。

そのようなクレーマーは多くの場合、
「『申し訳ございませんでした』と書け」とか、
「『誠意を持って解決いたします』と書け」などと、書面の内容も指示します。

示談成立後の合意書ではないので、
一方的な差し入れ文書を要求するわけです。

このような書面を要求するのは、
文書を楯にとって交渉しようとしたり、
心理的圧力をかけようとしたりする意図が明確ですので、
悪質クレーマーとしてマークします。

もちろん、「言った」「言わない」のトラブルが心配な気持ちもよくわかります。

しかし、そのようなときは、その場で「~と言うことですね」と確認をして、
その場で、自分で手帳にメモをとれば良いだけのことです。

メモをとるだけで、企業の担当者は気を引き締めますし、
後日、「相手の言ったことが違う」と思ったら、手帳を取り出し、
「〇月〇日に〇〇さんは、こう言いましたよ」と指摘すれば充分に通用します。
もちろん、これは法的手段をとることになった場合でも証拠になります。

なまじ中途半端な知識で「文書に残すことが大事」といった言葉を鵜呑みにし、
反社会的勢力に属する人たちの常套句であるセリフを口にしてしまうと、
悪質クレーマーとして扱われてしまうのです。



クレーマー扱いされないために(2)

2011-01-11 23:56:17 | 正しいクレームのつけ方
企業の担当者は、
基本的に「嫌がらせや困らせ行為」があるクレーマーを
悪質クレーマーと判断します。

しかし一方で、クレームを言う側にとっては自分の言動が、
「嫌がらせ」や「困らせ」になっていると気づいていない場合も多いものです。

そこでここからは、具体的にどうすれば悪質クレーマーとみなされないですむか、
逆に言えば、どのような言動が悪質クレーマーとして扱われるかを書いていきます。


正しいクレームのつけ方【発言編】

その1.「社長(役員)を出せ」と言わない。しつこく「上司を出せ」と繰り返さない。

多くの悪質クレーマーがこのセリフを口にします。
タイプによって違いはありますが、それには次のような思惑があるようです。

①社長や上司にバレるのが怖くて、自分の言いなりになるのではないか。
②権限を持った人間が出てくれば、無理めの要求も通るのではないか。
③自分は客なのだから、下っ端ではなくもっと上の人間が頭をさげるべきだ。

金品の獲得が目的の場合は①や②、
愉快犯や独善的な正義感に基づく確信犯タイプは③であるといった具合です。

しかし、会社勤めを経験した人ならば先刻ご承知の通りだと思いますが、
「社長(役員)を出せ」と要求されて、社長(役員)が出てくる会社などありません。

上司もまたしかり。
不当要求にはヘッジ(障壁)を多く設けて対応することが基本ですから、
「上司を出せ」と言われて、すぐに担当者が上司と交代することはありません。

社長や上司が出てこないからと言って、
社内でクレームを止めているわけではありません。
むしろ、悪質クレームと判断した段階で、リスクをヘッジするため、
関係部署は情報を共有し、上まで報告がいっていると考えたほうが良いのです。

しつこく「社長を出せ」「上司を出せ」という言動は、
いつまでもクレーム解決の交渉に入れない「困り者」として扱われるのです。

昔、しつこく「社長を出せ」と言われても出さなかったとき(当然ですが)、
会社に手紙を出したのでは社長まで届かないと考えたらしく、
社長の住所を調べて自宅に押しかけ、
直接、社長の奥さんに手渡すという暴挙に出たクレーマーがいました。

ここまでやると、警察に通報されますのでご注意を!



クレーマー扱いされないために(1)

2011-01-10 23:41:00 | 正しいクレームのつけ方
「正しいことを言っているのだから、クレーマー扱いされる筋合いはない!」

確かにその通りです。
一般的に日本ではクレーマーというと、
「言いがかりをつけて不当な要求をする人」というイメージが広く定着しています。

実際に苦情(クレーム)が生じることとなった原因があるのは事実ですから、
「クレーマー扱いされる筋合いはない」とおっしゃる気持ちはよく理解できます。

したがって総務に携わり、クレーム対応を学んだ人間であれば、
クレーマーを一律に「不当な要求をする人」として括らず、
一般クレーマーと悪質クレーマーの二種類に判別して対応します。

それでは、その判別基準はどこにあるのでしょうか。
それは、次のような二つの視点から判断しています。

(1)要求内容が不当ではないか
   クレームの原因となった事象と相手の要求が、一般的な慣習や社会通念に
   照らして著しく過大な内容であったり、まったく関係のない内容ではないか。

(2)要求方法が不当ではないか
   異常な回数の電話や来訪、文書の送りつけなどの業務妨害行為。
   悪態をついたり怒鳴ったりして担当者に精神的圧迫を与え、あるいは 「マス
   コミにばらす」「ネットで糾弾する」などの恐喝まがいの要求行為はないか。

もちろん、悪質クレーマーであっても、
クレームが生じることになった原因があることは事実ですから、
それについては、一般クレーマーのお客様と同じように真摯に対応します。

きちんと謝罪もするし、必要があれば相応の補償もします。

でもそれは、あくまでも「他のお客様と同じように」ということです。
会社やお店に落ち度があるからといって、どんな要求でも通るわけではありませんし、
お客様だからといって、どのような立ち振る舞いをしても許容されるわけではありません。
「マスコミやネットでばらす」と凄んでみたところで、
特別扱いされるわけでも、お詫びの品のグレードが上がるわけでもありません。

むしろ、悪質クレーマーと判断した場合、
会社側はそのクレーマーが、今後どのようなリスクを会社にもたらすかを考え、
それを想定した慎重な対応をとるようになりますので、
クレーマーにとっても決して賢いやり方だとは言えません。

クレームには正しいクレームのつけ方というものがあります。
悪質クレーマー扱いされず、上手にクレームをつけてこそ、
短時間で、最大限の会社の対応を引き出せるのです。

そしてそれは一方で、会社やお店にとっては、
一般クレーマーか悪質クレーマーかの具体的な見分け方にもなります。

いくつかありますので、次回以降に書いていきたいと思います。