さすがに最近は「自分探しの旅」なんて、
恥ずかしくて口にする人はいないと思いますが、
長く旅を続けていると、
確かに違った自分が見えてくることがあります。
そして、意外とそんな自分が心地よくて、
「ああ、これがきっと本当の自分なんだ」
と勘違いしてしまうのです。
小さなころから自転車少年だった私は、
学生時代に一か月間のソロツーリングしたことがあります。
雨の日も風の日もただひたすらペダルを漕ぎ、
さまざまな人たちと出逢い、初めて目にする景色に胸躍らせ、
日に日に、体だけでなく、心にも筋肉がついていくのがわかる、
そんな旅でした。
けれどもそんな想いは、
旅という非日常がそうさせているに過ぎません。
自分の内面が、旅という非日常に適応しようとしているだけなのです。
それを自覚しなければ、日常に戻った人は失望し、
さらに自分探しの迷宮に陥ってしまうのです。
最悪、社会復帰できず、
「心地よい自分」探しの旅を果てしなく続ける人もいます。