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最近ちょっとお疲れ気味

森 博嗣「スカイ・クロラ」 (中公文庫)

2010-07-17 01:36:41 | 読書
「創るセンス 工作の思考」(集英社新書)を読んで森 博嗣という作家に関心を持ち、彼の 「スカイ・クロラ」 (中公文庫)を読んでみました。

 「シャッタ」、「メータ」といった独特の言葉遣い、飛行機や自動車のメカに関する正確な描写は理系の作家ならではですが、情景描写や主人公の感情表現は必要最小限に抑えられており、まるで詩人が書いたような文章です。とりわけ戦闘機同士の空中戦の描写などはまるで散文詩を読むようです。また世界観に関する説明が少なく、本書の内容説明に書かれた「戦争がショーとして成立する世界に生み出された大人にならない子供」が登場人物であることを頭に入れておかなければ、この作品の面白さはわかりにくいと思います。さらに、各章の扉の部分にはサリンジャーの「ナイン・ストーリーズ」の一節が引用されているのですが、サリンジャーは全く未読である私にはこの引用がもたらす効果というものが残念ながらイマイチ伝わってきませんでした。
 「スカイ・クロラ」 はシリーズ化されており、一連の作品を読めば作者が作品にこめた深い意味を理解することができるそうです。結構気に入った作品なので、時間があれば読んでみたいと思いました。

 こちらのアニメ化された映画のトレーラー動画も見てみましたが、この作品を映像化した監督の押井守はつくづくすごい才能の持ち主ですね。