歩きながら考える

最近ちょっとお疲れ気味

三共合金鋳造所の「凍結鋳造システム」

2010-07-25 23:50:58 | ものづくり・素形材
 暑いですね。工場見学が好きな私でも、さすがにこの時期は暑さが厳しい鋳物工場の見学は遠慮したくなります。せっかく採用できた新人も、夏の工場の環境に耐えかねて退職してしまうことが多い、と鋳物メーカーの経営者の方から聞いたことがありますが、さもありなんと思います。
 そんな厳しい鋳物工場の環境を一変させる革命的技術が、鋳物用の砂を氷で固めて造型する「凍結鋳造システム」です。かつて本ブログでこの技術について紹介したことがありましたが(こちら)、昨年末、実際にこの凍結鋳造システムを導入して生産を行っている三共合金鋳造所(大阪市)を訪問させていただく機会に恵まれました。猛暑の中、ふと鋳物工場の操業環境が気になったので、同社の模様を紹介したいと思います。


 三共合金鋳造所は、鋳物メーカーとしては珍しく鋳鉄と銅合金鋳物の両方の鋳造を手がけているのですが、得意先である大手鉄鋼メーカーからの特殊な鋳物に対するニーズに対応するため、かなり早くから京都大学などとの産学協同研究に力を入れてきた研究開発型企業です。同社が凍結鋳造システムという鋳物づくりの常識を超えた鋳造法にチャレンジしたのも、長年にわたる研究開発の素地があったからだといえるでしょう。


 こちらが砂型を凍結させるための冷凍庫です。温度の表示を見るとマイナス46.8度とあります。


 この冷凍庫の中に砂と水を混錬させて作った砂型を入れて凍結させます。


 冷凍庫から出てきた砂型はカチンカチンに凍っています。それでも1,500度近い溶湯が注がれて本当に大丈夫なの?と思ってしまいますが、全く問題なく製品が作られているので驚きです。ちなみに注湯の作業を行う方々の中には若い女性社員が1名混じっていたことにも驚きました。


 こちらは凍結システムで作った鋳物のサンプルです。さすがに大きな製品の鋳造には使うことはできませんが、かなり細かい造形のものが作れるようです。冷凍設備のコストダウンが前提になりますが、作業環境の大幅な改善につながる「凍結鋳造システム」は、日本国内において鋳物生産を続けていく上で重要な役割を果たすのではないかと思います。