クニの部屋 -北武蔵の風土記-

郷土作家の歴史ハックツ部屋。

あの坂をのぼれば ―コトノハ―

2018年07月03日 | コトノハ
辛いとき。
苦しいとき。
暗いトンネルの中を歩いているようなとき。

もうダメだ、と思ったそのときこそ、
出口が目の前にあることを知らせている。
「夜明け前が一番暗い」という。
一番暗いそのときが、夜明けは近いのだ。

「あの坂をのぼれば」からのコトノハ。

  あの坂をのぼれば、海が見える。
  少年は、朝から歩いていた。
  (中略)
  もう、やめよう。
  急に、道ばたに座りこんで、少年はうめくようにそう思った。こんなにつらい思いをして、いったいなんの得があるのか。この先、山をいくつこえたところで、本当に海へ出られるのかどうか、わかったものじゃない。
  (中略)
  声は上から来る。ふりあおぐと、すぐ頭上を、光が走った。翼の長い、真っ白い大きな鳥が一羽、ゆっくりと羽ばたいて、先導するように次の峠をこえてゆく。
  あれは、海鳥だ!
  (杉みき子「あの坂をのぼれば」より)

杉みき子の「あの坂をのぼれば」は、
中学の国語の教科書に掲載された作品。
中学校の国語の授業で初めて読んだ作品として記憶している。

大人になって読み返しても全く色褪せていない。
中学生たちのこれからの未来を示唆している。

「坂」は青春そのものを表しているのかもしれない。
喜びもあれば苦しみもある。
越えなければならない坂はきっと現れる。
その先に広がる「海」は、自分の望む未来の象徴だろう。

ちなみに、青春を長い坂に例えたコトノハがある。
それは岡田奈々が唄う「青春の坂道」。

  青春は長い坂を登るようです
  誰でも息を切らし一人立ち止る
  そんな時君の手のやさしさに包まれて
  気持よく泣けたなら倖せでしょうね
  (松本隆作詞「青春の坂道」より)

辛いこともある。
苦しいこともある。
先が見えないことも多々ある。

でも、大切なのは坂道を歩き続けること。
そこから逃げ出さないこと。
先に進むから「海」がある。
逃げ出さずに歩を進めるから、やがて「海」に辿り着く。

前に進んでいるのか、後退しているのかわからないときもある。
そんなときは自分を信じるしかない。
例え周囲の言葉に心が揺れ動いても、決めるのは自分自身。
ただ、坂の途中に立ちはだかるのは、
自分自身かもしれないけれど。

心が挫けそうなとき、耳を澄ませてはどうだろう。
きっと聞こえてくる。
海が近いことを告げる海鳥の声を。
かすかな潮騒を。

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